連載コラム 自然エネルギー・アップデート

震災5年後の電力自由化 — 電力を選択し、社会を選択しよう

2016年3月29日 大林ミカ 自然エネルギー財団事業局長

 2016年4月1日から、いよいよ、日本でも電力小売市場の全面自由化が始まり、一般家庭も電気の購入先を選ぶ事ができるようになる。90年代後半から少しずつ進められてきた電力制度改革の流れの中で、2000年以降は2000kW以上(契約口数9千件)、2004年からは500kW以上(同4万件)、そして2005年からは50kW以上(同70万件)の需要家は、電力メニューや、地域独占の大手電力会社以外を選ぶことができるようになっていた。日本の電力市場全体の約6割にあたる。今回は、一般家庭など、残されていた4割弱の50kW未満の市場が自由化されることになる。

 小売り自由化の効果は大きい。これまでの需要家の契約口数が、合計で80万に満たなかったのにくらべ、約8,500万件の需要家市場が一気に解放される。顧客獲得競争が活発になり、すでに自由市場下にあった大口需要家も、もっと積極的に行動するだろう。なにより、2020年からの発送電分離を睨み(東京電力のみ2016年4月から先行)、地域の大手電力会社同士の参入が本格化しつつある。制度はあったのに活性化しなかったこの10年を考えると、大きな変化が起きている。

 硬直した業界に市場競争がもたらされることで、今までわからなかった電気料金の内訳や、電源の種類が公開されるなどの情報公開が期待できる。まだ日本の制度は整ってないが、そういった方向は必然である。

 消費者にとって選択肢が増えることはいいことだが、ただ、加熱する宣伝の行方をみると、価格低下のみが強調されて、自然エネルギーの選択や省エネルギーの推進が見えてこない。消費量が少ないと今よりも電気代が高くなったり、一年、二年と縛られて切替時に違約金を取られたりする契約もあるようだ。まだ規制料金下にある地域独占の大手電力会社が、ガス、コンビニ、携帯などのさまざまなパートナーと組んで、「割安プラン」を展開し、あたかも電気料金本体が安くなっている印象を与えている例もある。自然エネルギーを選べないどころか、各国が義務づける電源表示も義務づけられていないし、発電側では世界に逆行する石炭火力の増設が続々計画されているのもおかしい。

 過去20年にわたって諸外国が先進的な電力システムを構築し、新しい市場を導入するのを後目に、日本の制度改革は遅々として進んでこなかった。海外では、途上国も含めて、発送電の分離、自然エネルギーの拡大導入、炭素排出に価格をつけるカーボンプライシングの導入などを実現している。今は、変動型自然エネルギー電源を、いかに最大限系統へ統合するか、「柔軟性」をキーワードにした系統運用と市場設計を行っている。日本は、福島原発事故に直面し、急激に新しいエネルギーシステムへの転換を迫られているが、短期間で原発の停止とFiT導入による太陽光発電の飛躍的な増加などが起き、政策が統一されておらず、新しい制度が追いついていないのが現状だ。

 5年前の福島原発事故を契機に加速した日本のシステム改革である。この4月をきっかけに、消費者が自ら意思表示を行うことは大変重要だ。しかし、それだけでは新しいエネルギー社会の姿は見えてこない。欧米の消費者は、もう1990年代から、自然エネルギー100%の電力や、省エネルギーをすれば報奨金がもらえるメニューを選ぶことができた。 日本でこういったメニューが登場する日はいつだろうか。


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