連載コラム 自然エネルギー・アップデート

固定価格買取制度のめざましい成果と日本の自然エネルギー政策の課題 英語版

2014年8月21日 大林ミカ 自然エネルギー財団事業局長

固定価格買取制度導入から2年がたった。政府は、7月に立ち上げた「新エネルギー小委員会」で、固定価格買取制度の今後についての議論を開始している。しかし、自然エネルギー政策に詳しい専門家が含まれていないなどの委員構成の問題だけでなく、小委員会では一言も触れられていない内容のわからない「総量規制」について、何度も報道されたり、委員長自らが言及したり、あたかも固定価格買取制度を根本的に見直すことが決まっているかのような雰囲気が醸成されているのは、大きな問題である。今、必要なのは、ようやく始まった自然エネルギーの更なる導入拡大を速やかに進めるために、ここ2年の成果をさらに発展させる立場から、「日本版固定価格買取制度」の改善を行うことである。

自然エネルギー財団では、固定価格買取制度の成果を検証し、問題点についても指摘するディスカッションペーパーを発表した。その内容について、簡単にご紹介したい。

まず、現時点では2014年4月末までの導入量しか発表されていないが、2年たたないうちにすでに977万kW、約1,000万kWの自然エネルギーが運転開始されている。過去10年をはるかに上回る速度で自然エネルギーの導入が進んでおり、市場の活性化を促す、固定価格買取制度の力が実証された。

2003年に導入されたRPS制度の下では、10年で約780万kW程度、うち太陽光が500万近くの設備容量が導入されたと推計されるが(注1)、固定価格買取制度は、2013年度単年で700万kW(注2)と、わずか一年間でそれに匹敵する量の拡大を可能にした。エネルギーとしても、電力量に占める自然エネルギー等の割合は、2001年度からの10年間で、0.7%から1.1%へわずか0.4%しか増えていないが、買取制度開始後の2013年度には2.5%となり、2014年4−5月では4.4%に伸び、急速に拡大していることがわかる。

エネルギー量として自然エネルギーが増加することにより、火力発電の増加抑制にもつながっている。2013年度の燃料費削減効果は、石油換算で最大3,257億円、二酸化炭素削減効果は、石油換算で最大1,234万トンにのぼる。また、雇用創出効果は約28万人と推定される。

コスト低下も著しい。一般的に高いといわれている太陽光発電の導入コストが3~4割低下している。10kW未満の住宅用太陽光発電では、2010年第1四半期に59.8万円/kWだったものが、2014年の同期に39.4万円/kWへと33%も低下した。10kW以上の太陽光発電では、10−50kWの場合で、2009年度と2010年度に60〜70万円/kWだったものが、2012年には42.1万円/kW、2013年には38.3万円/kWと大幅に低下している。この下落傾向が続けば、2016年には、家庭用電気料金より安くなる可能性も見えてきた。

また、固定価格買取制度の特徴として各国でも先行例があるように、従来のエネルギー産業界ではない事業者や、自治体や市民など、多様な主体の参入が活発化している。買取制度によって、地域に根ざした自然エネルギーが、市民の手の届く事業となったと言える。

しかし、一方で「日本版固定価格買取制度」の限界といったものも見え始めている。

一番大きな問題は、太陽光発電以外の自然エネルギーがほとんど増えていないことだ。特に、海外ではすでに最も競争力ある電力源として、化石燃料とも比べられる陸上風力発電が、日本では導入が止まったままで、むしろ、固定価格買取制度の開始後に導入が減少しているというおかしな状況にある。

この風力発電の拡大とも密接に関わるのが、系統連系である。発電設備を持つ電力会社が系統運用を行っていては、公平な系統接続の確保に問題があることは明らかである。自然エネルギー財団は、送電網等の設備容量による制約もあるが、むしろ、現状の日本では、系統の運用ルールによる制約が連系量の制限の原因になっていると考えている。

また、すでに7,000万kWにおよぶ認定設備をもたらしている設備認定プロセスの問題がある。現状では、稼働までの時期が定められていないために、過去の買取価格案件が、長期間、大量に残留することで費用削減のインセンティブが低下する恐れがある。

そして、前述したような急速なコスト低下に追いつくために、導入量やコストの現状、賦課金の会計情報などについて、情報公開の内容を改善し、柔軟な制度運用をはかる必要がある。

そして、固定価格買取制度の改善を考える上で非常に重要なのが、包括的かつ統一的な自然エネルギー政策を作るための「高い導入目標の設定」である。導入目標の設定は、市場形成の目安ともなり、固定価格での買取りに加え、事業者たちが参入しやすい市場環境を整備することにつながる。

さらに、自然エネルギーの導入が、過大な費用負担とならないように、回避可能費用の適正化、減免制度の見直しとともに、コスト低下の速やかな買取価格への反映を行うべきである。設備認定についても、未稼働設備の実態把握を進めていく必要がある。

以上、今回のディスカッションペーパーは、固定価格買取制度の成果を確認するとともに、日本で自然エネルギーの拡大を進める上での課題を指摘したものである。

自然エネルギー財団では、このディスカッション・ペーパーをもとに、今後、さまざまなステークホルダーの方々との意見交換を行い、より具体的な改善案を提案していく予定である。

注1)正確な統一した数値が公表されていないため、複数のデータから読み取った推計。太陽光については、日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット「エネルギー・経済統計要覧」(2013年)ならびに太陽光発電協会「太陽電池モジュール出荷統計」、風力発電については、新エネルギー・産業技術総合開発機構「日本における風力発電導入量の推移」(2014年)、中小水力発電については資源エネルギー庁資料(2014年)、バイオマス等については日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット「エネルギー・経済統計要覧」(2013年)ならびに資源エネルギー庁資料(2014年)より。

注2)資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表します (平成26年3月末時点)」(2014.06.17、http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140617003/20140617003.html)より。