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他国では風力が早く安価に設置できるのに、なぜ日本の電力会社は高価な輸入燃料を選ぶのか? 英語オリジナル

2014年1月31日 トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

風力は、今では世界の大多数の国で最も安価な電力資源だ。新しい石炭火力発電所ですら風力発電にはかなわない。石炭の国際市場価格が、中国や米国の需要が予想を下回ったために低減しているにもかかわらず、である。

このため、風力は多くの国で主要なエネルギー源となっている。1970年代、他の先進国に先駆けて風力発電を導入したのはデンマークである。同国は、風力を原子力の代替と位置づけ、原子力発電所はいっさい建設しなかった。2013年、風力発電はデンマークの国内消費電力の33%を担っており、デンマーク議会は2020年までにその割合を50%にするという目標を掲げている。

2013年12月、暗くて寒いこの月にデンマークは電力の半分を風力発電でまかなった。一年で最も昼が短い日、風力は太陽光発電の不足を補って102パーセントのエネルギーを供給したのだ。

近年では、原子力発電所に投資した国々も風力発電に取り組み始めている。2012年、中国では風力による発電量が原子力による発電量を上回った。翌年、スペインでも風力が原子力を追い越した。現在、風力発電はスペイン国内の電力供給量の20%を占め、最大の電力源となっている。

今、ほとんどの国では競争のあるオープンな電力市場が存在し、競争の公平性を保つため送電網と発電施設の所有者が分離している。そのため、電力価格が日本よりも低い。安価な風力発電が電力価格を更に抑制している。

米国エネルギー省の報告によると、2012年、新規の風力発電プラントにおける発電コストは、1kWhあたり平均約4円であった。同様の低コストはブラジルやオーストラリアの新しい風力発電所でも報告されている。ヨーロッパにおける新しい風力発電コストは若干高く、1kWh当たりおよそ7円となっている。

いずれにせよ、これらの国々のコストは日本の電気料金や、日本の原子力発電所や化石燃料を用いる発電所の電力コストと比較すると遥かに低い。

スウェーデンでは、ここ数年の投資の結果、発電量を国民一人当たり年間80W増加することができた。日本でも同じ割合で投資を行えば、年間10GWの供給量増加が見込め、総発電量が20~30 TWh も増えるのである。そうなれば、10年~15年以内に福島原発事故以前に建設された全ての原子力発電所で作られる電力量を風力発電のみでまかなえることになる。だがそうなったとしても、日本における風力発電のシェアはまだデンマークよりも低いままなのである。

つまり、これは十分に実現可能な目標なのだ。しかしそのためには、政府が電力市場制度を改革し、既存の電力会社の特権をなくす必要がある。

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