連載コラム 自然エネルギー・アップデート

世界の取組から学ぶバイオエネルギーの基本原則
―バイオエネルギー国際シンポジウム報告―

2017年6月8日 相川高信 自然エネルギー財団 上級研究員

 自然エネルギー財団では、世界バイオエネルギー協会(WBA: World Bioenergy Association)の理事等中心メンバーの来日に合わせ、2017年5月、東京と長野で2つの国際シンポジウムを開催した。当財団の大林ミカ事業局長が、WBAの理事に就任し、理事会を日本で開催することになったことがきっかけとなり、実現したものである。
脱炭素化に向かう世界におけるバイオエネルギーの役割を再確認するとともに、政策やビジネスの最新動向を俯瞰できたという点で、大変有意義なものになった。全ての講演資料は、当財団のホームページで閲覧可能になっており 1 、それぞれに示唆的な内容が豊富に含まれているが、本稿では、2日間のシンポジウムを通じて再確認されたバイオエネルギーの基本戦略を、3点に絞って紹介したい。

■基本戦略①:化石燃料の代替



東京:(上)開会挨拶をするラピンスカスWBA代表
(下)バイオエネルギー産業とビジネスについて議論をする
シンポジウム登壇者



長野:(上)シンポジウム登壇者およびWBAメンバーら
(下)欧州のバイオマス熱市場の発展に関する基調講演
 今回のシンポジウムでは、バイオエネルギー分野で早くから世界を牽引してきたスウェーデンやオーストリアだけではなく、イギリスや中国など、近年、導入量を拡大している国の最新動向が紹介された。取組に着手した時期に違いはあれ、全ての国の共通している戦略は、バイオエネルギーを化石燃料の代替として積極的に使っていくというものである。つまり、熱生産や発電に使われている石炭や重油などの化石燃料を、ボイラーやバーナーなどを交換するだけで自然エネルギーに転換していくという、バイオエネルギー特有のシンプルな戦略である。

 具体的には、スウェーデンでは地域熱供給の化石燃料を転換してきたし 2 、イギリスでは火力発電所の石炭を 3 、中国では産業用ボイラーの石炭を 4 、バイオマス燃料で代替する動きが紹介された。また、燃料代替に有効な技術として、粉体にした木質バイオマスを燃焼させるバーナーの紹介もあった 5 。さらには、デンマークでは、バイオマスだけではなく、太陽熱温水などを熱源の一つとして取り込んでいく、第4世代と呼ばれる地域熱供給システムが実現化しつつあることの報告があった 6 。また、これらの燃料転換を誘導する政策として、スウェーデンでの炭素税の成功経験が世界的に共有されており、WBAとしても炭素税の導入を世界的に訴え始めている 7 

 このシンプルなバイオエネルギーの基本戦略は、日本では十分に理解されて来なかったように見えるが、2017年4月には化石燃料を用いた火力発電所のバイオマスへの転換が相次いで発表された 8 。発電用以外にも、日本では化石燃料を用いる業務・産業用のボイラーが多数稼働しており、これらのバイオマスへの転換を図っていくことが有効であろう。

■基本戦略②:熱利用を中心に熱電併給も

 第2の基本戦略は、熱利用を中心にバイオエネルギーの利用を進め、発電を行う場合は、熱電併給を推奨していくことである 9 。スウェーデンでは、地域熱供給網の燃料転換の後、グリーン電力証書による自然エネルギー電力の支援が行われたことで、熱電併給を行うプラントを増加させた 10 

 また、FIT制度を用いるなどして、新規の建設を支援している国においても、熱電併給が奨励されている。例えば、オーストリアのFIT制度では、総合効率を6割以上とすることで、熱電併給が事実上義務化されていると言える。さらにドイツでは、太陽光・風力の変動型電源の大量導入を見越して、より柔軟性を高めた小型の熱電併給プラントにより、需給調整の役割を積極的に果たしていくという「Smart Bioenergy」というコンセプトの研究・開発が行われているという 11 

 他方、日本のフォレスト・エナジー社のプレゼンでは、スウェーデンのCortus社の2MWクラスのガス化プラントの導入プロジェクトの紹介があったが、現状の日本のFIT制度が熱電併給を促す仕組みになっていないため、売電を基本として収支計画を立てなければならないという厳しい現実も示された 12 

■基本戦略③:Co-production

 基本戦略の第3は、「Co-production」により、燃料生産コストを下げ、また収入の機会を増加させるというものである 13 。日本でも「カスケード利用」という原則は幅広く共有されており、廃棄物や副産物、残材の利用が行われてきたが、一方で、必ずしも徹底されていないという指摘もある 14 。林業や農業などにおいて、副産物や残材のエネルギー利用により収入機会を増やし、主産物である建築材や農作物などの安定した生産に寄与するというベネフィットを再確認する必要がある 15 

 また、エネルギー転換段階において、熱電併給だけではなく、バイオガスや、液体バイオ燃料の生産、有用化学物質の抽出などもCo-productionの事例として紹介された。化石燃料資源ではなくバイオ資源に基づく化学産業の将来ビジョンのヒントになると思われる。  


 1 資料の公開先は以下のとおり(東京では動画も視聴可能)。
東京(https://www.renewable-ei.org/activities/events_20170522.php
長野(https://www.renewable-ei.org/activities/events_20170524.php
 2 マッツ・エングストローム氏、カリン・ハラ氏など
 3 ベン・モクサム
 4 ケルヴィン・ホン
 5 ビョルン・フォスベリ
 6 田中いずみ氏、松原弘直
 7 ハインツ・コペッツ
 8 相川高信
 9 ジャン=マルク・ジョサール
 10 カリン・ハラ
 11 フォルカー・レンツ
 12 沼真吾
 13 トーマス・コーベリエル
 14 梶山恵司
 15 マーティン・ネーバウアー氏、熊崎実氏、梶山恵司

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