連載コラム 自然エネルギー・アップデート

未来の世代のために:放射性廃棄物の処分費用を考える 英語オリジナル

2014年5月15日 トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

原子力発電所の「競争力」を考える上で、放射性廃棄物処分にいくらかかるかということは、最も重要な側面の一つだといえる。これまでの経験で明らかなのは、放射性廃棄物処分の費用は原発が運転開始されてからずっと後に発生するため、過小評価されやすいことである。数十年前なら、こうした費用の過小評価は、単に無能だったからわからなかった、とされていたのかもしれないが、世界中で経験が蓄積されるにともなって、実際の費用について知らないふりをすることは、次第に難しくなってきた。原発を長い間利用してきた国では、廃棄物処分が実際に始まっていて、これにかかる費用は、明白で否定できないものになりつつある。

英国は、1956年に、世界で初めて商業用の原子炉が設置され運転を開始した国だ。今や、半世紀が経ち、放射性廃棄物処分について明らかな問題を抱えている。科学的な課題や将来世代の市民の健康におよぼす影響だけではなく、2014年4月5日の『エコノミスト』誌にはっきり書かれたように、費用の問題、つまり、社会的費用の問題でもある。そして、その費用は原発を所有する電力会社ではなく、国民の税金から支払われているのだ。

原子力発電会社が費用を負担しないのは不当だが、費用の規模を知れば、その不当さはさらに深刻なものとなる。英国のセラフィールドには、再処理前の使用済核燃料を取り扱う施設に加え、最新の核燃料サイクル施設がある。ここの除染は、国営の英国原子力廃止措置機関(NDA)が管理している。現在の見積もりでは、セラフィールド核燃料サイクル施設を除染するだけで、700億ポンド(約12兆円)を超える費用が必要だと推定されている。

これだけの資金が風力発電所に投資されたとしたら、その年間発電量は125~150 TWh(1,250億kWh – 1,500億kWh)程度にも上るだろう。これは英国の原子力発電による過去の年間発電量の最大の数値を上回るものだ。

エネルギーのバックエンドコストは単独で扱われることが多く、発電所の建設費や燃料費・操業費とは切り離される。しかし、大気汚染に伴う費用を無視して化石燃料の費用を評価すれば誤った判断を招くのと同じように、放射性廃棄物処分に必要な実際の費用を考慮せずに原発を評価することは、大いに間違った判断を招く。これを考慮に入れなければ、将来世代に重い負担を課すことになる。この点において、親なら誰でも失敗したくはないだろう。

そして政府が故意に未来の世代にこのような害をもたらす国で、親になりたいと思う人がいるだろうか?

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