連載コラム 自然エネルギー・アップデート

なぜドイツでトップレベルの高効率ガスタービンが閉鎖されるのか 英語オリジナル

2015年6月25日 クレイグ・モリス Renewables International 編集者 および
EnergyTransition.de 筆頭執筆者

ドイツ電力会社最大手のエーオンが、シーメンス製コンバインドサイクル・ガスタービンの閉鎖を計画していることが、ここ最近メディアで取り沙汰されている。ドイツのエネルギー大転換(エナギーヴェンデ)の失敗例の一つとして吹聴されているようだ。しかし、そもそもシーメンスの選択が、エナギーヴェンデや地球のためになる選択だったとは限らない。

イルシングにあるこのガスタービンは、61%を越える効率を誇る。そして天然ガス火力発電の二酸化炭素排出量は、石炭火力に比べて微量である。にもかかわらず、この発電所は、2014年を通じてまったく売電できず、送電網の安定化のための予備力市場で稀に使われただけであった。一体どうしてだろう?

第一に、欧州では天然ガスより石炭の方が安価である。ドイツの豊富な褐炭は、欧州はもちろん、多分世界でも最大の埋蔵量がある。褐炭は、残念ながら二酸化炭素排出量が最も多いが、安価なのだ。さらに、米国のシェールガス・ブームの影響で、無煙炭の輸出量が記録的に増加し、欧州諸国(ドイツも)が主要な輸入国となっている。

第二に、欧州の排出量取引制度は、発電部門の石炭から天然ガスへの転換を促すほど、炭素税を高くできていない。無煙炭から天然ガスへ移行するには1トンあたり約30ユーロ、褐炭から天然ガスなら約50-60ユーロという炭素税が必要だと見積もられていたが、今年の炭素税価格は約7ユーロである。

第三に、2010年以来、自然エネルギーが予想を上回る速さで急増している。そして、このグリーンエネルギーは、メリットオーダー順に従来電源を代替しつつある。つまり、天然ガスは石炭より高いので、発電部門で自然エネルギーが真っ先に代替してしまうのが、天然ガスなのだ。

昨年12月、ドイツのシンクタンク所長が、「石炭火力から自然エネルギーへの代替が進むと予想し、新型ガス火力の淘汰を想定していなかったことは、専門家による集団的計算違いであった」と発言してヘッドラインを飾った。(関連記事〈ドイツ語〉)。しかし実際に計算違いをしたのは、欧州の排出量取引プラットフォームの炭素税が高くなると期待した人々だけだった(正直なところ、ハイレベルのアナリストたちほぼ全員がそう予測した)。一方で、排出量取引制度の導入よりも炭素税の導入を主張した人々は、さもなければ炭素税は低止まりするのではないかと予測していた。自然エネルギーが石炭ではなく天然ガスを代替してしまうと心配していたアナリストはいたのである。

さらに、ドイツ国会で一人の国会議員が発言した通り、ベースロード電源に未来がないことは、2010年には明らかになっていた(関連記事〈ドイツ語〉)。風力や太陽光の変動型自然エネルギー電源のために、柔軟なバックアップ電源が必要になるからだ。天然ガスタービンは一般的に柔軟性があると考えられているが、コンバインドサイクルの場合、出力の急激な上下に伴って効率が下がる。シーメンス社によると、イルシングのタービンは30-40分で出力の急上昇ができるが、60%の高効率を実現できるのは、ハイレベルでフル稼働している間だという。換言すれば、コンバインドサイクルは、フレキシビリティー(=柔軟性)を犠牲にしてガスタービンの効率化を図っている−つまり、高効率か柔軟か、片方を実現できても、両方は同時に実現できない。

ドイツでは将来的に、風力と太陽光のバックアップとして、主に柔軟性の高いオープンサイクル・ガスタービンが必要となるだろう。これらは、排ガスの熱回収ができれば、コジェネに利用できる。排熱回収ができないと効率は低いが、排熱回収ができれば、効率95%まで引き上げることができる(シーメンスによれば)。

シーメンスの技術者が、イルシングにコンバインドサイクル・ガスタービン(CCGT)を建設したのは、優れた技術力を証明するためで、エナギーヴェンデに必要だったからではない。太陽光と風力だけで消費電力の33%を越えることがたびたび起こっている現状では、CCCTの急激な出力上昇もたびたび必要となるし、そのたびに効率が下がるだろう。しかし、日本のように、太陽光と風力が拡大しはじめたばかりの国では、事情が異なることは留意が必要だ。例えばCCGTは、日本の市場では、二酸化炭素排出量が比較的少ない電力を供給しながら、原子力や石炭を代替する優れた手段となる。日本では、風力と太陽光の普及レベルが上がるまでに時間がかかるため、ガスタービンがバックアップ電源として役立つだろう。

しかし、ドイツのこの件は、世界的なドイツの技術プレイヤーが、自らの計算違いを政策の失敗に見せかけようとしているに過ぎない。シーメンスは以前から、自社の利益とエナギーヴェンデの利益を混同し、ドイツのエネルギー政策の悪口を言い続けている。2011年には、ある役員が、原子力の段階的廃止のせいでドイツの電力料金が5倍に跳ね上がるだろうと発言したが、実際の小売り料金はすでに安定している。また、2013年には、エネルギー転換にむけた一連の提案を発表したが、結局自社プロジェクトのリストアップにすぎなかった。ちなみに、その頃CEOは、「ドイツは自然エネルギーを抑制すべきだ」と発言していた。

シーメンス社は長きにわたってエネルギー部門にいるが、風力発電に参入したのは2004年だ。2020年までには太陽光の需要が倍増すると予想されているにもかかわらず、PVを販売していない。その代わりに、今年、あるCEOは、エナギーヴェンデのせいで自社が海外流出を余儀なくされており、ドイツの太陽光発電は「アラスカでのパイナップル栽培」くらいの意味しか持たないと発言した。かつて高効率家電の製造メーカーだったシーメンスは、合弁会社の株をパートナー会社に売却し、そこで得た現金を米国石油部門に投資した(関連記事〈ドイツ語〉)。シーメンスが手放したその家電部門は、2014年に記録的な売上を上げた(関連記事〈ドイツ語〉)。

このように、市場アセスメントのまずさは、たびたび繰り返されてきた。今回も、シーメンスによる米国石油部門への関与が、「アラスカでパイナップル栽培」ができてしまうほどの二酸化炭素排出を後押しするかもしれない。この5月、アラスカはテキサスより暑かったという

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