連載コラム ドイツエネルギー便り

24年目の快挙と、これから先

2014年9月16日 梶村良太郎 ドイツ再生可能エネルギー・エージェンシー

2014年上半期、ドイツの自然エネルギーは消費電力の28.5 パーセントという記録的な数字をマークした。15.4パーセントの原子力、25.1パーセントの褐炭火力を上回り、遂に最重要電源の地位に昇り詰めたのだ。1991年施行の「電力供給法」(Stromeinspeisegesetz)で初めて自然エネルギーの固定価格買取制度(FiT)を導入してから、足掛け24年目の快挙だ。

成長しているのは発電量だけではない。現在の自然エネルギーの主役とも言える陸上風力と太陽光発電は技術基盤および産業基盤が著しい成長を遂げ、発電にかかるコストがどんどん下がっている。最新の設備であれば1キロワット時あたりの発電コストが同世代の火力発電と同程度、もしくはそれを下回るまでになっている。この、「グリッドパリティ」と呼ばれる状態は、自然エネルギーの価格競争力を測る上で重要な指標となっている。

さて、そんな中の8月1日、電力供給法の後進である再生可能エネルギー法(Erneuerbare-Energien-Gesetz、略称EEG)の改定が施行された。改定の内容は多岐・細部にわたるが、設備容量500キロワット以上の新設自然エネルギー設備に対して、FiTを廃止するという点が一番の目玉といえる。正確には、これまでは全量固定価格買取だった電力を、事業者自ら市場で売電し、その売上に一定の助成金を上乗せするフィード・イン・プレミアム(FiP)という制度に移行となった。それはつまり、自然エネルギーを徐々に電力市場の価格競争で独り立ちさせるための第一歩である。

前回のコラムでも書いたとおり、この改定は決してFiTの敗北宣言ではなく、成功の証と捉える必要がある。30%に迫る自然エネルギーの電力シェアも、グリッドパリティを達成するだけのコストダウンも、FiTによる助成の賜物であり、20年以上にわたって継続してきた成果でもある。スタートダッシュに成功した後、助成を減らして行くことには、何の矛盾もない。

しかし、ドイツの自然エネルギー導入の最前線からは、不安の声が少なからず上がっている。これも前回のコラムで触れたが、エネルギーヴェンデは市民や自治体、中小企業などの小さい組織が中心となって推し進めてきた背景がある。設備容量で言えば、全体の半分近くを個人や農家が、残りの大半を中小企業が所有している。そのように地域に密着して発展してきたからこそ、今日の成功、そして市民による高い支持があることを忘れてはならない。

そんな市民エネルギー協同組合の統括団体であるライフアイゼン協会発表のアンケート調査によると、EEG改定を受けて、多くの協同組合が新しい自然エネルギープロジェクトの開発を差し控えていることが判明した。FiT廃止を含む数々の改定措置によって、エネルギー協同組合の十八番である地産地消型のビジネスモデルが成り立たなくなる可能性が、その一因だ。現在導入が検討されている入札制度に至っては、資本力で劣る協同組合など小規模事業が入札に加わることすら困難な状態が心配される。同じように、私自身が務める再生可能エネルギー機構が、自然エネルギー導入に積極的な自治体を相手に行ったアンケートによると、自治体の大多数が今回のEEG改正を否定的に捉えている。

自然エネルギーの独り立ちを促し、技術としての競争力を煽るあまり、これまでの成功を担ってきた組織をくじいては、元も子もない。むしろ今後の発展がスピードダウンしてしまう可能性すらある。

ドイツには「試合の後は試合の前」という、サッカー由来の格言がある。ゲームが終わったその瞬間から、次の試合に備えなければならないという意味だ。EEGについては、「改定の後は改定の前」という言葉を最近良く耳にする。次の改定に向けて、先の改定の影響をよく見極める必要がある。


執筆者プロフィール
梶村良太郎
(かじむら・
 りょうたろう)
1982年、ドイツ・ ベルリン生まれ。ビーレフェルト大学大学院メディア学科卒。現在、再生可能エネルギーの情報発信を専門とするNPO、Agentur für Erneuerbare Energien(ドイツ再生可能エネルギー・エージェンシー)に勤務。