連載コラム 自然エネルギー・アップデート

コミュニティー・パワーの島:デンマーク・サムソ島 英語オリジナル

2014年4月11日 ソーレン・ハーマンセン サムソ・エネルギー・アカデミー代表

サムソ島は、農業に従事する人たちと、共同生活を営むのに必要な機能をひと通り備えた、どこにでもある小さなコミュニティで構成されている。他と異なるのは、自然エネルギーが人々の活動を支えている点だ。サムソ島では風力発電量が島内の消費電力を上回り、バイオマスとソーラーが暖房需要を賄っている。また、高コストな化石燃料の輸入を削減したので多額の余剰資金が生まれている。その資金は、より優れたインフラ設備とスマートエネルギーシステムに投資されており、また住宅の断熱や省エネ効果の高い窓の導入など一般的な改修費用に充てられている。

このようなことを可能にしたのは、エネルギーインフラへ自ら投資することを決断した島の住民だ。島民は自立し、高価な化石エネルギーの輸入削減によって得られる経済的なメリットを享受している。人々はこの新たな「自由」を得て、今や運輸部門までをも化石燃料ゼロにする未来を夢みている。例えば、サムソ島とデンマーク本島をつなぐ交通手段はフェリーだ。今年の10月には、新たなフェリーが就航する。このフェリーは液化天然ガスを燃料とするが、いずれ地元のバイオガスプラントで製造するメタンも燃料とする予定だ。島内の家庭や農場から発生するバイオマス廃棄物が、フェリーの燃料供給源となるだろう。

また、電気自動車の普及も促す。現在、サムソ島は、一人あたりの電気自動車の保有台数がデンマークのどの市町村よりも多いが、今後さらに増える見込みだ。充電スタンドの増設を進め、島民の電気自動車の購買意欲をインフラ主導で後押しする。サムソ島では「コミュニティパワー」は現実のものだ。自然エネルギーの島となって以来、サムソ島では意思決定の流れが格段によくなっている。

日本でもコミュニティパワーの事例が増えており、その背景には、人々がこうした取り組みの必要性を痛感しているという事実がある。福島の原発事故後に、制御不能に陥った原子力に対する不安や恐怖を政府や企業が払拭し得なかったことに対して、人々が行動を起こさなければならないことに疑いの余地はない。安価なエネルギーを求め続ける実業界・産業界と、その需要を満たすエネルギーの供給確保に奔走する政府。福島の原発事故の被災地や事故で明るみにされた事実を憂慮する人々のあいだでは原発反対の機運が高まっているが、その想いは置き去りにされている。

住民のこうした不安や懸念に耳を傾け、住民がより積極的に参加する分散型の組織構造を将来像として受け入れるべき時を迎えている。住民の準備はできている。自然エネルギーの島サムソを始めとする幾多のプロジェクトが示しているのはシンプルで明解な事例であり、それに対して政府は耳を傾け、応えなければならない。コミュニティパワーは、持続可能な責任ある転換を起こすための、人々にとっての原動力だ。

前に進むための扉は開かれている。さあ踏み出そう!

サムソ:欧州における自然エネルギーの島

ファクト・ボックス:サムソ島の自然エネルギー・データ集

  • 1997年、サムソ島は「2008年までにエネルギー自給率100%達成」という高い目標を掲げ、「デンマーク初の自然エネルギー島」と名づけられた。
  • 早くも2006年に、電力需要の100%を風力で、熱需要の70%を再生可能燃料で、それぞれ供給することに成功。
  • 島には「エネルギー・アカデミー」と「エネルギー・オフィス」があり、島民や訪問者に自然エネルギー技術や省エネに関する情報を提供している。
  • 島は自然エネルギーへの転換をめぐる業績で、様々な賞を受賞している。
  • 島では、ナタネやチカラシバを熱供給に利用する実用化調査を、試験プロジェクトとして行っている。
  • サムソ島の「エネルギー・アカデミー」は、太陽光パネルによる電力・熱供給設備と、雨水利用システムを備えており、持続可能なエネルギー・ソリューションを実証している。
  • サムソ島の地域暖房は、麦わら、太陽熱、木質チップなどの自然エネルギーで完全に賄われている。
  • サムソ島の「エネルギー・アカデミー」のすぐ外には、風力発電機や麦わら燃焼式地域暖房施設があり、研究者や学生の理想的なミーティング・ポイントとなっている。
  • 島の洋上風力発電機は、毎年1基につきデンマークの家庭2000世帯分の電力を賄っている。
  • それに加え、サムソ島南岸にある10基の洋上風力発電機は、島の交通のために消費している化石燃料をすべて相殺する量のクリーン・エネルギーを作り出している。これは、島の3隻のフェリーが消費するディーゼルも含む。
  • サムソ島の多くの家庭が小規模風力発電機やソーラーパネルの利用によって、エネルギーを自給している。
  • サムソ島の陸上風力発電だけで、島の電力需要をすべて賄えるだけの発電を行っている。
  • サムソ島の多くの家庭が、石油ストーブの代わりに、ペレット・ストーブ、太陽熱ヒーター、地熱ヒートポンプなどの自然エネルギー暖房を使っている。
  • サムソ島の暖房の70%が、自然エネルギーによって賄われている。

連載コラム
アーカイブ