連載コラム 自然エネルギー・アップデート

日本の太陽光発電事情を一新した固定価格買取制度
『Recharge』誌 2014年2月3日掲載(掲載原文は英語。数値は掲載時最新のまま)

2014年3月20日 大林ミカ 自然エネルギー財団事業局長

「固定価格制度」の導入以降、日本でも、自然エネルギーの導入が急速に伸びている。2012年7月から2013年10月末までの16ヶ月で、5.86GWの自然エネルギー設備が運転を開始している。

特に顕著なのが太陽光発電で、新しく運転開始した自然エネルギー設備のうち、5.67GWで97%を占めている。FiT前の太陽光発電の設備容量を一気に倍増し、中でも、非住宅用の太陽光発電は、FiT導入以前の900MWが4.72GWに増加した。

これまで日本の太陽光発電の市場は、住宅用が8割から9割を占めてきた。これらは、3~5kW程度の個人住宅用太陽光発電の合計で、国際的に特殊な市場構成だった。他国では住宅用の太陽光発電の市場に占める割合は低く、事業用太陽光発電が大勢である。今や日本でも、太陽光発電は、「環境に関心のある一部の篤志家」が設置するものという位置づけから、さまざまな事業者が参入するエネルギービジネスへと変化した。

2012年に発表された買取価格は、諸外国の買取価格水準からは高いものだった。10kW以上の太陽光発電はkWhあたり40円、陸上風力(20kW以上)は23円で、20年間の買取である(すべて税抜き)。2013年度は、太陽光発電の買取価格は40円から36円へと1割低下し、2014年4月からは、さらに一割低下して32円とも噂されている。ただ、近年の太陽電池の価格低下や、経験による設置費用の低下を考えれば、今後も参入は続いていくと思われる。

好調な太陽光発電だが、実は、設備認定段階のものが2013年10月末までで24GW以上ある。そして、諸々の事情が重なり、現実には設備認定分の三分の一か四分の一くらいしか運転開始しないのではないか、という見方もある。

これには複数の原因が考えられるが、一つには、太陽光事業者側の準備不足がある。農地法などの関連法案をよく調べずに事業計画し、のちに断念せざるを得ないケースもあるという。また、前年度の高い買取価格を「キープ」するために、年度中にとりあえず設備認定を受けておこうという動きもあるようだ。政府も、大きな事業変更がある場合は運転開始年の買取価格を適用すると表明しており、運用のあり方には今後も修正が入っていくだろう。

しかし何と言っても大きいのは、電力会社との系統連系協議に起因する問題である。連系ができないと断られたケース、事業を進めていくうちに高額な工事費を要求されて、縮小や撤退含め事業計画の見直しを行わざるを得なくなったケースが多数報告されている。今まで,風力発電産業が直面していた系統問題が、太陽光発電ビジネスが本格化するにつれ、太陽光発電にまでおよんできている。

日本の電力会社は垂直統合地域独占で運営されており、送電容量や必要な工事費など、送電接続についての情報は、電力会社が一手に握る。また、長期固定電源として位置付けられている原子力は,常に優先して電力が供給され、現在のように、すべての発電所が止まっている状況でも、送電容量にカウントされている。

自然エネルギーのみならず、透明で効率的な送電網運用のために、徹底した情報公開とコストや容量について、中立的な検証ができる体制を至急整えるべきだろう。

そして、太陽光以外の自然エネルギー電源は、現在のところ出だしが低調だ。

FiTの効果が最も上がるのは、コストが安く技術が安定している風力発電のはずだが、系統連系の難しさを考慮したとしても、風力発電の伸びは遅い。日本の風力発電は、2012年末で世界で13位の導入率で、トップの中国に比べて25分の一だ。FiTが導入されてから、2013年10月末までの運転開始は70MWで、太陽光と比べて80分の1にとどまる。

ここ数年の導入量(2011年と2012年で8.5万kWと9.2万kW)が下がっている理由としては、FiT導入を見越して2010年に政府の補助金が廃止され、政策ギャップを生んだことが大きい。事業計画には2−3年かかるので、FiT買取を反映した活性化にはもう少しかかる。

そして、FiT導入後の2012年の秋に、環境影響調査対象となり、事業開始まで調査に約4年以上、費用は1億円程度かかるようになった。風力発電は大型化に伴うコスト削減が著しいが、現状では環境アセスの負担が重いので、対象外である7500kW未満の風力発電事業の計画が増加中である。

以上、早足で現在のFiTの状況をみてきた。その他にもバイオエネルギー、地熱、水力と、それぞれの自然エネルギーが普及するための課題がある。

総じて言えるのは、固定価格制度の買取価格の高さだけで自然エネルギーを普及できるのではなく、確実に事業性を担保するための周辺状況を整備していくことが重要だということだ。まずは確実な系統連系を前提とした情報公開から始まり、関連法の改正、送電網整備などが同時進行で続くべきだ。

同時に、電力システム改革を確実に進めることも非常に重要だ。小売りの全面自由化は、諸外国で行われているような、自然エネルギーを選択できる制度を消費者にもたらし、送電網の公開は新しい事業者の参入を促す。3.11以降、市民主導の自然エネルギー開発が活発化し、各地で「地域電力」の動きが起こっているが、システム改革の流れとともに、さまざまな形がさらに拡がっていくことだろう。

日本の自然エネルギーの拡大はまだ始まったばかりだ。硬直化したシステムが歩み始めたばかりの産業を行き詰まらせるべきではない。

また、諸外国に比べて高止まりしている自然エネルギーのコストも、検証していく必要がある。タリフが高いのには理由があり,日本の自然エネルギーコストそのものが高いことも事実である。

まだ緒に就いたばかりの日本の自然エネルギーの展開である。流れを止めぬよう、的確な制度設計を続けていくことが必要だ。