連載コラム 自然エネルギー・アップデート

リスクの高いパーム油発電:持続可能性基準づくりを急げ 英語版

2017年9月4日 相川高信 自然エネルギー財団 上級研究員

パーム油を使ったFiT発電の動き

 バイオマス発電の固定買取価格制度(FiT)による認定量が急増している。2017年3月末の認定量は1,200万kWを上回り、特に輸入材を用いる「一般木質・農業残渣」が1,100万kW以上を占めている。2016年11月時点で、自然エネルギー財団は提言を発表し、このままでは燃料不足が懸念されること、依然として熱電併給が進まないことなどの問題点を指摘した 1 。しかし、提言発表時から1年以内に一般木質の認定量はさらに800万kWも増加し、今後の対策を早急に講じる必要がある 2 。そんな中、パーム油を使う発電所がFiT認定を受けて稼働を始めるという、新たな問題が発生している。

 そもそも輸入燃料は、エネルギー自給・安全保障の観点や、林業等の関連産業への経済波及効果も限定的であるが、その中でもパーム油は特に問題が多い。まず、パーム油は日本の植物性油脂消費量の約1/4を占め、主に加工食品に用いられている他、石鹸や洗剤の原料にも使用されているため、燃料以外の用途と競合の恐れがある。発電事業者のホームページによれば、燃料に用いられているパーム油は「食用ではない」とされ、今のところ精製過程で生じる非食用部分が用いられているようである 3 。しかし、パーム油の生産自体については、これまでも先住民の権利侵害や強制労働 4 、森林と生物多様性の喪失 5 の問題などが繰り返し指摘されてきたことは無視できない。

 そしてさらに、パーム油生産は多量の二酸化炭素(CO2)排出というエネルギー政策上は致命的な問題を抱えている。したがって、パーム油生産に伴う包括的な環境リスクの分析を行った上で、その結果に基づき、パーム油発電をFiT対象から外す、もしくは基準を満たすもののみ限定的に使用を認めるなどの措置を講じる必要がある。

パーム油生産に伴うCO2排出

 パーム油生産に伴うCO2排出は、主に生産地の開発に起因している。主要生産国であるインドネシアやマレーシアでは、低湿地林にプランテーションが作られ、泥炭など土壌からのCO2放出の原因になるからである。また、既存の農地がパーム油生産に振り向けられることにより、新たな農地開発のために、森林面積を減少させてしまうといった間接的な土地利用変化を考慮すると、そのCO2排出の量は更に膨大になる。

 パーム油生産に伴う多量のCO2排出量については、すでに様々な研究で指摘されてきた 6 。欧州委員会の委託により行われた最新の調査でも、パーム油のバイオ燃料としての消費が引き起こす土地利用変化によるCO2排出量は231g CO2-eq/MJと、その他のどの原材料よりも多く、さらに石炭の排出量(90.6g CO2-eq/MJ 7 )を大きく上回っている 8 。また、持続可能なパーム油の認証を行っている「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil、RSPO) 9 」自身も、パーム油のCO2排出係数は化石燃料より高いと結論づける報告書を発表している 10 

欧米では、パーム油燃料利用の禁止へ

 前述のようなパーム油の問題に関する知見の蓄積により、欧米ではパーム油のバイオ燃料としての利用は制限されている。まず、そもそもアメリカでは、パーム油はCO2削減効果が基準値を下回るため、バイオ燃料としての使用が認められていない 11 

 一方EUでは、輸入している660万t程度のパーム油の内、5割程度が主に自動車燃料として利用されてきたが、今後は制限される方向にある。具体的には、EUでは2015年に「再生可能エネルギー指令」を改正し、土地利用変化の影響を考慮するよう制度を変更するととともに、温室効果ガス削減水準の引き上げも合わせて行われた。さらに、2017年5月欧州議会は、2020年までに森林破壊を引き起こす危険性のある植物油を自動車燃料などとして燃料利用することを段階的に廃止すべきとの決議を行った 12 

燃料の環境負荷の定量化が急務

 以上概観したように、パーム油の利用は社会的・環境的な問題が多く、エネルギー政策としては、化石燃料より多いと計算されるCO2排出量の多さが致命的である。そのため欧米では、パーム油の燃料としての利用を禁止・制限する動きがある。他方日本では、食料との競合のリスク認識はあるが、人権問題や森林破壊、そしてCO2排出の問題については十分に理解されているとは言い難い。

 そのため、現行のFIT制度は、パーム油を利用する発電所を認定している。例えば1万kWの出力の発電所のパーム油使用量は2万t程度と言われているが、現在の日本のパーム油輸入量が60万t、大手洗剤メーカーの使用量が2万t程度であることを考えれば、発電用燃料のインパクトの大きさが想像できる。

 また、本来はパーム油以外の全てのバイオエネルギー資源についても、統一的な手法でリスクやCO2排出量など環境負荷の定量化を行う必要がある。その際には、すでに欧州等において蓄積された研究データを参考にすることができる。その上で、我が国においても、CO2排出量などに関する持続可能性の基準を定め、適合しないものはFiTの適応外とするのが妥当であろう。


 1 「木質系バイオマス発電に関するFiT制度見直しの提言」自然エネルギー財団(2016年11月25日)
http://www.renewable-ei.org/activities/reports_20161125.php
 2 ただし、2017年3月時点の一般木質・農業残渣の導入量はおよそ33万kWに留まっている。
 3 FiT制度における事業計画策定ガイドラインにより「農作物の収穫に伴って生じるバイオマスの場合には、流通経路が確認できること(トレーサビリティがあること)、持続可能な燃料使用に努めること、食料との競合への配慮を求める」とされている。
 4 代表的なものとして、Amnesty International (2016) The great palm oil scandal—Labour abuses behind big brand names
 5 代表的なものとして、UNEP(2009) Assessing Biofuels—Towards sustainable production and use of resources
 6 Laborade(2011) Assessing the Land Use Change Consequences of European Biofuel Policies、UNEP(2009) 前掲書
 7 環境省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」の一般炭の値
 8 ECOFYS(2015) The land use change impact of biofuels consumed in the EU
 9 日本の洗剤メーカーなどの中にはこのプログラムに加盟するなどして、持続可能なパーム油の調達に努めている会社もある。https://www.wwf.or.jp/activities/resource/cat1305/rsportrs/
 10 RSPO(2009) Greenhouse Gas Emissions from Palm Oil Production—Literature review and proposals from the RSPO Working Group on Greenhouse Gases
 11 https://id.usembassy.gov/our-relationship/policy-history/embassy-fact-sheets/the-u-s-renewable-fuels-standards-program-and-palm-oil/
 12 http://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20170329IPR69057/meps-call-for-clampdown-on-imports-of-unsustainable-palm-oil-and-use-in-biofuel

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