連載コラム 自然エネルギー・アップデート

日本の自然エネルギーの未来 英語オリジナル

2014年2月14日 エリック・マーティノー 自然エネルギー財団上級政策アドバイザー

わたしの自然エネルギー分野とのかかわりは25年におよび、日本の生活もこれで5年になる。これまでの経験から言えることがひとつある。自然エネルギー分野で日本が世界のリーダーになることは容易である、ということだ。ただ、リーダーになるには、自然エネルギーに対する発想とメンタリティーの転換がどうしても必要である。機能面、信頼性、日本経済サポート力のいずれの観点からみても、自然エネルギーは原子力に全く劣らない―――このことを日本人は理解しなければならない。

自然エネルギーは1995年当時、あるいは2000年当時と変わっていない、と多くの国でいまだに考えられているが、日本もその例外ではない。しかし自然エネルギーについて、技術開発、コスト、市場、投資、経済的利益の現状に鑑みれば、これは古い考えと言わざるを得ない。中国、デンマーク、ドイツ、インド、米国など、世界規模で自然エネルギーへの移行を先導している国を見れば、現状はとうに明らかだ。また自然エネルギーの未来予測についても、保守的な組織の見方は時代遅れである。

今、自然エネルギーのトップ集団に加わらずになお手をこまねいていると、日本はさらに後塵を拝することになる。投資額は尺度のひとつだ。世界各国での自然エネルギーへの投資額は、2013年には約[2,500]億ドルに達した。一方日本の投資額は約[300]億ドルで、米国・中国と比べてひどく見劣りする。

日本ではこれまで20年間、多岐にわたる太陽光発電支援策が、国・地方レベルでうまくいった。政府による昨今の固定価格買い取り制度で、太陽光に加え、風力、バイオマスへの投資が加速している。自然エネルギーの収益性は、諸外国同様日本でも明らかになりつつあり、これは言うまでもない。(その好例は、今では年金基金が「保証利回り」狙いで自然エネルギー投資を行っていることや、「インフレに強い」という性質から、自然エネルギーは有価証券のような伝統的資産タイプより安全であるという見方が増えていることである。)

日本が自然エネルギーでリーダーシップを発揮しようとする場合、依然として重大な障害になっているのが、過去半世紀ほとんど変わらぬ、時代錯誤的な体質の電力セクターだ。同セクターに本来の市場というものは存在しないか、さもなければ競争原理が働いておらず、監督体制も独立性の点で脆弱である。日本の電力会社は独占体制に守られており、これが今求められているイノベーションを阻んでいる。先進国(OECD加盟国)で、過去30年間電力セクターの構造改革を実施していないのは、実にメキシコと日本だけだ。

太陽光と風力のエネルギーシェアが高い国では、電力市場が抜本的に変わらねばならないことが明らかになってきた。市場価値を伴った市場特性として、「柔軟性」にいっそう大きな焦点があたるという現象が、市場で現れつつある。市場は、集中型発電と分散型発電の間でバランスを保ち、特にシェアが増え続ける分散型太陽光発電と競争原理を維持しながら公正かつ統合された方法で共存していかなければならない。また、新しいビジネスモデル・政策モデルとは、P2Pかつ地域規模のエネルギー・サービス・ビジネスが、既に実績を生んでいるビジネス機会から収益をあげることができるようなものでなければならない。

日本では、風力と太陽光の変動性は、高価なエネルギー貯蔵システムがないと管理できないと根強く信じられているが、これは事実ではない。自然エネルギーシェアが高ければ、節電目的で照明を消す必要はないし、送電網の中で変動が大きい自然エネルギーの高シェアをバランスさせる方法は、他にも多数ある。こうした方法はエネルギー貯蔵システムをもたず、はるかに安価なことに加え、世界中で今日既に使用されている。

その好例にはデマンドレスポンスがある。これは、スマート・コントロールやアグリゲーター・ビジネスモデルを通じて、エネルギー需要が供給変動に合うよう、分・時間単位で調整する、という考え方である。米国では、デマンドレスポンスのキャパシティーが既に送電網全体の10%超に達している。登録を済ませた工業部門、商業部門の顧客は、毎月送られてくる支払い明細書に喜んでいる。洗練されたエンジニアリングとエネルギーの効率的活用実績を有する日本であれば、デマンドレスポンスと自然エネルギーを結びつけることは容易であろう。

日本でのビジネス機会は豊富であり、太陽光・風力業界にとどまるものでは全くない。例えば建材や情報テクノロジーといった、基盤がしっかりした企業がビジネス機会を享受することが実際には多い。ただし、ビジネス機会実現には、日本が自然エネルギーの未来に対する発想を転換し、それを取り込むことが大前提となる。

エリック・マーティノー博士は、自然エネルギー財団のシニア政策アドバイザーである。同博士の先導で完成した『世界自然エネルギー未来白書』の2013年版は、以下のURLで閲覧できる。

英語版:www.martinot.info/gfr
日本語版:www.isep.or.jp/gfr