連載コラム 自然エネルギー・アップデート

2014年最新データで見る欧州自然エネルギー事情
初出:『環境ビジネスオンライン』 2014年9月29日掲載

2014年11月6日 大野輝之 自然エネルギー財団常務理事
ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団研究員

前回は、2014年前半の最新データで米国の自然エネルギー事情を見た。今回は同様に、ドイツやデンマークなど、欧州の自然エネルギー先進国の直近の状況を紹介しよう。

自然エネルギーの割合が3割を超えたドイツ

2014年前半のデータでまず注目されるのは、ドイツにおいて、発電量全体に占める自然エネルギーの割合が31%に達し、ついに3割を超えたことである。2013年の前半分の割合は、27%だったので、実に4%も一気に増加している。

図1は2014年前半の発電量の電源別割合を、図2は2011年の割合を示したものであるが、比べてみると、太陽光、風力、バイオマスという新たな自然エネルギーが成長の推進力となっていることが良くわかる。バイオマス発電と風力発電は、それぞれ10%を超え、太陽光発電も2011年の4%から7%へまで増加している。対象的に伝統的な自然エネルギーである水力発電の割合は減少している。

原子力発電も化石燃料発電も減少

図3は、2011年前半から2014年前半への、電源別の発電量の変化を絶対量ベースで見たものである。ドイツ政府の脱原発方針に従って原子力の発電量が減少しているだけでなく、二酸化炭素の排出源となる化石燃料を用いた火力の発電量も大幅に減少している。全体を総括すれば、図の右側に示したように、原子力と化石燃料発電の減少分21.7TWhを風力、太陽光、バイオマスの増加分でそっくりカバーしたことになる。

ちなみに、2011年との比較では若干の増加となる石炭火力も、2013年と2014年の比較では130TWhから119TWhへと8%以上も減少している。日本では、「ドイツでは原発停止で石炭火力が増加している」という主張を目にすることがある。しかし、図3が示すように、ドイツで起きている変化の本質は、原発と化石燃料発電から自然エネルギーへの転換であり、石炭火力の増加はその狭間で起きた一時的な現象にすぎない(そして、その背景には、欧州排出量取引制度の排出上限量―いわゆる「キャップ」―が十分に厳しくないために、炭素価格が低くなっており、本来、天然ガス火力よりも先に撤退されるべき石炭火力が、一時的に経済的に有利になっているという事情がある)。

電力の輸出量も増加

2014年前半のドイツのデータで、もう一点、注目しておきたいのは、ドイツから外国への電力輸出量が増加傾向にあることである。この期間のドイツの純電力輸出量(輸出量-輸入量)は17.9TWhであり、これは2013年の同じ期間より3.4TWh多い。仮にこの傾向が続けば、ドイツは3年連続して純電力輸出量が前年より増加する可能性がある。

この電力輸出についても、しばしば日本では「ドイツが原発を減らしてもやっていけるのは、フランスから原発の電力を輸入しているからだ」などという話を聞くことがある。しかし、実際にはドイツは2003年から一貫して電気の純輸出国であり、ここに書いたように輸出量も増加傾向にある。

ドイツの卸売電力価格は、自然エネルギーの拡大とともに低下傾向にあり、他の欧州諸国よりも安価になってきている(この点については、9月17日に開催した自然エネルギー財団のシンポジウム「『自然エネルギー先進国』へ大転換するドイツ」の講演資料の中に詳しいので、ご参照いただきたい)。

ドイツからの電力輸出が増えている背景には、こうした経済的事情もあるものと考えられる。フランスの系統運用機関RTEが発行している月報("Apercu mensuel sur l'energie electrique")の2014年4月号には、フランスがドイツ(及びスペイン)から電力を輸入する理由として、「ドイツ及びスペインとの取引では、フランス側が輸入するバランスとなっている。これは、欧州市場における両国の電力販売価格が、特に風力発電のために、安価となっているからである」と書かれている。

デンマークは風力発電だけで41%を供給

風力発電のシェアの大きさという点で最も注目されるのは、やはりデンマークである。2014年前半には、なんと41%の電力を風力で供給してしまった。2011年から2013年にかけては、どの年をとっても前半6か月の風力割合は30%程度だったので、2014年に4割を超えた背景には、通常の年よりも風況が良かったという事情もあるだろう。

しかし、より本質的なことは、2020年までに電力の50%を風力発電で供給するという政府の方針のもとで、着実な導入が進んでいることである。デンマークの風力発電導入量は、2013年の1年間だけで、416万Kwから477万Kwへと61万kW、15%増加している(ちなみに、2013年の日本の風力発電導入は6.8万kwだった。人口が20倍以上もある日本の年間導入量が、デンマークの10分の1というのは、いささか問題のある状況だと言わざるをえない)。

デンマークエネルギー協会(Danish Energy Association)の最近の分析によれば、デンマークでは、風力が他のどの電源よりも安価な電源になっているという。2016年には、風力の発電コストは、石炭火力や天然ガス火力の約半分になると推計されているのである。

デンマークには、ヴェスタスとシーメンスという二つの主要な風力発電企業も立地している。風力発電は、デンマークの電力供給をしっかりと支えるだけでなく、デンマークの経済を担う重要な産業としても発展しているのだ。

スペイン、イタリア、フランス

他の欧州諸国の2014年前半の状況にも簡単に触れておこう。

スペインでは、50%以上の電力が自然エネルギーによって供給された。30%以上は、水力発電以外の自然エネルギーである。その中心を担うのはやはり風力発電であり、23%を供給している。2011年前半の全自然エネルギーの割合は、38%だったので、この3年間で、10ポイント以上増加したことになる。

イタリアでは、2014年前半に40%の電力が自然エネルギーで供給された。2011年前半には24%だったので、ここでも3年間で16ポイントもの拡大があったことがわかる。このうち、水力発電以外の自然エネルギーは、同じ期間に、7%から17%へと10ポイント拡大している(なお、ここでの数値にはバイオマス発電は入っていない)。

フランスは周知のように原子力に電力供給の多くを依存しているが、そのフランスでも自然エネルギーは拡大している。2014年前半では、風力や太陽光など水力発電以外の自然エネルギーで6%の電力を供給した。この数字は、ここまで見てきた他の欧州の国々と比べると遥かに小さい。しかし、日本と比べると2倍程度の水準にあることは指摘しておく価値があるだろう。