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グリッドパリティ−日本でも電気料金レベルに達した太陽光発電の経済性 英語版

2015年7月30日 木村啓二 自然エネルギー財団上級研究員

「太陽光発電はコスト高」と言われる。例えば、2015年5月に政府の委員会(総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループ)で試算された住宅用太陽光発電の発電単価は、29.4円/kWhだった。そして、日本の主力電源であるLNG火力の13.7円/kWhに比べて、太陽光発電は2倍以上の発電単価であると評価されている。

しかし、住宅用太陽光発電やコージェネレーションなど、電力を消費する場所に設置される電源と、需要地から離れた場所に設置される電源との経済性を、単純に発電単価のみで評価することは妥当性に欠ける。なぜなら、後者の場合、つくられた電気をその場で消費するわけではないからである。

私たちがつかう電気は、一般電気事業者(以下、電力会社と呼ぶ)の保有する送配電網を通じて、発電所から送られている。このコストは送配電コストとして別途生じるコストである。電力会社の決算資料をもとに、2014年度の送配電コストを計算すると、3.3円/kWhであった。これに加え、その他の電力会社のもろもろの経費や税が2.8円/kWhほどかかっているため、合計6.1円/kWhが発電とは別途かかっていることになる。最終的にこれらさまざまなコストや電力会社の利潤を含めて、消費者に電気料金が請求されている。

他方で、太陽光発電を個人で家庭につけた場合、直接消費する場合は、送配電コストも必要なく、電力会社を通して買っているわけではないので、彼らへの支払いもない。そのため、太陽光発電の電気を使うのにかかるコストは、太陽光発電を設置して、維持管理をするためのコストのみということになる。

つまり、設置する人の視点から太陽光発電の経済性を評価すると、他の電源との発電単価の比較は意味がなく、電気料金と比較するほうが実際的である、ということである。太陽光発電を家庭に設置する人にとっては、電力会社から電気を買うときの電気料金よりも太陽光発電を設置するコストのほうが安ければ、設置するほうが得だということになる。

そこで、近年の太陽光発電の発電単価を推計し、電気料金と比較した(図を参照)。なお、以前の記事でも比較は行っているが、今回は金利(割引率)を現実に合わせて見直している。今回の推計によれば、たしかに2010年ごろの発電単価は40円/kWh程度で、電気料金と比較しても2倍あるが、その後継続的に下落し続けていることがわかる。そして2014年7月~9月には、太陽光発電の発電単価は26.0円/kWhとなり、その年の電気料金の平均値26.3円/kWhよりも安くなっている。さらにその後も発電単価は下落し続け、14年10月~12月には、24.9円/kWhに達した。このことから、2014年下半期には、太陽光発電でつくる電気は電気料金よりも安価になった可能性が高いと言える。

上記は電気料金が今後20年間一定価格であると仮定した場合の見方である。しかし、近年、エネルギーのコストについては、原子力の事故リスク評価が厳しくなり、また化石燃料の燃料費変動リスクなどの不確定要素が多い。太陽光発電を設置することは、設置者にとって経済的にも魅力的なだけでなく、こうした不確実性を減らすことにもつながる。

海外のいくつかの地域では、すでに太陽光発電の発電単価が電気料金よりも低い。Grid Parity Monitoring (2015)によれば、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、イスラエル、メキシコではすでに2011年から12年にかけて同様の状況に達しているが、日本もようやく世界に追い付いてきたといえよう。


図 太陽光発電の発電単価と平均電灯料金の推移


注:太陽光発電の発電単価は、システムを20年間使うとして、その設備費、維持管理費、金利(割引率)等を含めて、1kWhの発電にかかるコストを算出したものである。設備費は、一般社団法人太陽光発電協会 太陽光発電普及拡大センター 「住宅用太陽光発電補助金交付決定件数」を参照した。割引率は、以前の記事(「2015年、家庭用太陽光の発電コストが電気料金より安くなる可能性あり」、2014年12月4日http://www.renewable-ei.org/column/column_20141204_02.php)では、3.2%を用いたが、今回はより現実に合わせるため、加重平均資本コストを算出して、その値(1.7%)を用いた。このとき、自己資本比率は、国土交通省(2014)「住宅市場動向調査報告書」を参照し、注文住宅の自己資本比率38%を用いた。貸出金利は、日本銀行「金融経済統計月報」の住宅ローンの値(2.475%)を参照。自己資本利益率は、同資料の10年もの新発国債利回りの値(0.32%)を採用した。電気料金は、10電力会社の電灯料金収入を電灯販売電力量で割ったものである。

参考文献
・Briano, J. L., Baez, M. J., and R. M. Morales, (2015) PV Grid Parity Monitor: Residential Sector, 3rd issue, CREARA.


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