連載コラム 自然エネルギー・アップデート

自然エネルギーを市場にアクセスさせる制度が必要だ

2014年3月7日 大林ミカ 自然エネルギー財団 事業局長

日本の「固定価格制度」は、4月から新しい価格設定の下、3年目を迎えることになる。制度導入以降、日本では太陽光発電が大きく伸びている。今公表されている2013年11月までの数値では、日本の大規模水力以外の自然エネルギー発電が2,700万kW以上になった。太陽光は、制度前の560万kWを上回る626万kWが16ヶ月で導入されている。

固定価格制度の導入で、多種多様なビジネスが自然エネルギーに参入し、業界の裾野が広がり、地域の市民共同発電所(コミュニティパワー)の動きが活発化している。今まで個人住宅中心だった日本の太陽光発電は、ようやく、売電を目的とした発電ビジネスとなった。先日のマイケル・ロゴル氏のコラムにもあるように、国内市場の活性化は、国内太陽光産業に多くの利益をもたらした。

しかし、太陽光発電以外の自然エネルギーの伸びは止まったままだ。風力発電に至っては、2013年度はここ10年で最低の伸びという信じられない状況だ。

固定価格制度は、電気事業者・送電事業者に、自然エネルギーからの電力の買取を、一定の価格で一定期間買うことを義務づける制度だ。固定価格制度で自然エネルギーの導入に成功した国や地域は、先駆的原型でもある米国連邦パーパ法+カリフォルニア州の買取制度の組み合わせに始まって、将来の事業性が見渡せる“安定した買取”(つまりは買取の義務づけ)が必須条件となっている。

昔の話だが、90年代半ばに、日本で「風力発電事業者」が登場し始めたころ、電力会社はそれまでの“余剰電力購入メニュー” i から一転して、事業用風力からの余剰電力買取価格を15円とし契約を一年毎に契約を見直す制度を入れた(当時は設置に対する補助があったため、現在の固定価格よりも買取価格は低いものだった)。実際の契約拒否がなくても、一年毎では事業安定性がないとみられ、融資が受けにくい。当時、ドイツが、現在の「自然エネルギー法」の原型である「電力買取法」で風力発電を伸ばしていたため、わたしたちは、カリフォルニアやドイツに倣った固定価格制度の導入を要求する運動を始めた。長期にわたる系統の接続は重要な条件だった。

地球温暖化防止京都会議(COP3)の影響など、自然エネルギーを支援する機運が出て来た頃で、議論に推される形で、電力会社は“長期購入メニュー”を導入した。15年か17年間にわたって事業用風力発電からの電力を全量買取るものだったが、一方で購入価格は11円台に急激に下げられた。しかし、結果として何が起こったか。この価格帯でも、多くの風力発電事業者が、北海道や東北の長期購入メニューに殺到したのだ。反響に驚いた電力会社は、早々に条件なしの長期購入メニューをとり止め、系統制限を課すことで、風力発電増加の抑制を行った。受け入れ枠を発表し、その枠に応じて、くじ引きや入札をするやり方だ。そして国は、固定価格制度による買取の義務づけではなく、導入枠だけを定めて自然エネルギー同志を競争させる、買い手本意の「RPS制度」を並行して導入した。

現在も同じような状況が繰り返されつつある。財団のアンケートでも、事業用太陽光発電で、電力会社との系統連系協議に起因する問題が顕著になっている。連系ができないと断られた、工事費が高額で縮小や撤退含め事業計画の見直しを行わざるを得なくなった、反応や工事の進捗が遅すぎて事業が始められない、などのケースだ。次第に、太陽光の導入にも制限が出始めている。

わずか二年間だった自由な長期購入メニューの結果を振り返って言えるのは、買取価格の高さだけで自然エネルギーを普及できるのではなく、まずは確実な系統連系を前提としてこそ事業が始められるということだ。

海外では、固定価格制度は「買取の義務づけ」である。日本の固定価格制度を、価格のみの改定におとしめてはならない。情報公開、送電網整備も重要だが、まずは、系統連系の条件整備を一番に行う必要がある。


 i 主に太陽光を想定した、自家消費分以外を電気料金と同じ20円台の価格で買い取る電力会社の自主的取り組み。51%以上は自家消費しなくてはならないため、風車の横に温室を作ったりして「電力を消費する工夫」がなされた。

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