連載コラム 自然エネルギー・アップデート

「小売FIT」から「送電FIT」への移行問題を考える
‐本筋諒なるも例外措置が必要‐

2015年10月8日 山家公雄 エネルギ-戦略研究所長、京都大学特任教授

固定価格買取制度の認定を受けた電力(FIT電力)の買取り義務が、小売り会社から送配電会社に移すことが検討課題となっている。発送電分離を決めた法案の成立を契機としている。完全中立となる送配電会社がFIT電力を買い取る義務は、特に再生可能エネルギーの普及期間においては合理的である。

【再生可能エネルギー普及にかかわる送配電会社の役割は大きい】

送配電事業者(送電会社)が引取る場合は、発電の計画値と実際の量の乖離を埋める(バランシング)義務は、送電会社が負うことになるが、これは最も合理的である。送電会社は需給調整義務を負っているので、その一環として、エリア全体で調整することができる。揚水発電所の活用や広域融通等のさまざまな調整手段を、状況に応じて駆使できる。本来、広域連系を含めてエリア全体でのバランスを考える立場にあり、再エネを最大限流通させることができる。系統の状況を最も知りうる立場にあり、再エネ開発計画の情報を合わせて、増強ポイントがどこでどの程度必要かを理解できる。従って、調整等に要するコストは最も低くなる。

また、自由競争下にある(はずの)小売会社に、特定の電気買取りを義務つけることは、適正な競争という視点からは、本来望ましくない。政府事務局は「特定の小売電気事業者への買取の集中が回避され、競争中立的となる。」と表現している。

以上のメリットは、送電会社が完全に中立的になるとの前提に基づく。移行する時期については、現状制度の継続性の観点から、法定分離が実現する2020年度以降と理解している。

【小売り新規参入者には逆風】

一方で、不都合な状況も生じる。理由が何であれ、小売会社に買取義務がある制度を作ってしまった。それを前提とした事業が進み、政策支援の在り方が規定されてきている。小売会社が買取る場合、FIT電力に関しては、仕組みが制度で決まっており、調達量やコストの予想を行いやすく、新規参入者は利用しやすい。700を超える活発な新電力創設の動きは、これが一因と考えられる。

まず、環境を重視する需要家に焦点を当てた小売ビジネスを行いやすい。地産地消、地域創造を狙い地域エネルギー会社が各地で登場してきている。こうした動きは、望ましいものであり、促進策があって然るべきである。そしてその役割を「小売FIT」が肩替わってきた面がある。小売りが「競争中立的」であるべきというのは分かり易い。しかし、競争は強いものが益々強くなる側面があり、少なくとも競争初期の段階では、新規の多様な芽を伸ばす環境も必要である。

送電会社に一律の買取義務が導入されれば、こうした現行FIT制度が担ってきた効果が薄くなる、なくなる可能性が高くなる。制度変更に伴い苦境に陥る事業者が出てくるのは明らかである。

【地産地消モデルは困難に】

典型的なのが地産地消モデルである。以下、これに焦点を当てて考察してみる。

送電会社しかFIT電力を買えないとなると、地産地消を目的に創設される地域エネルギー会社は、地産の再エネ電力を直接買えないことになる。地域で送電会社を作ることは、簡単ではないし、制度上可能かも不明である。再エネ電力を買う場合は、非FIT電力が対象ということになる。即ち、既設の小売買取り義務対象、既設のFI対象外、新設でも敢えてFIT認定を受けない設備ということになる。耐用年数やFIT期間が次第に短縮していくなかでは、量的に尻すぼみになる。再エネコストが下がり、FITを利用しなくとも流通する様になればいいのだが、これも時間がかかる。

【政策効果を評価する措置が不可欠】

地産地消、地域資源を活用した地域創生は、人口減少社会の中では、地域振興の柱である。その視点で支援すべき価値が十分あると考える。地域主導の前向きな動き、やる気を削いではならない。「地域振興は中央からのお仕着せではなく、地域自らが知恵を出すべきである」というのが、安倍政権の地方創造である。

工場誘致の望みが小さくなった現在では、地域資源である1次産業の6次産業化が主役になってきている。自然エネルギー資源も同様かそれ以上の可能性がある。エネルギーの視点でも、地域の再エネ発電を地域で消費することは、系統への逆潮流を少なくし、インフラコストを低くする効果がある。この効果が具体的に評価されていない。

また、再エネ立地を円滑に進める効果がある。再エネといえども電源であり、必ずしも適地の住民がウェルカムだとは限らない。既存電源と比べて再エネは立地交付金制度がない。FITの原価にも地元調整に要するコストはカウントされていない。現行制度、特に回避可能費用が市場連動になる前の制度では、プレミアム付きで購入し低料金で販売するモデルの可能性があり、地域が納得する効果がある。立地自治体への配慮として支援措置を導入すべきであるが、FIT制度が変われば、いよいよ検討待ったなしになる。

「送電FIT」へ移行する場合、いくつかの特例措置を設けることが考えられる。地域エネルギー会社には、再エネ発電事業者からあるいは送電会社を通して直接FIT電源を購入できるようにすべきである。FITコストの地域調整費用算定、立地交付金等FITプレミアムに代わるインセンティブも真剣に検討すべきである。

グリーン価値に焦点を当てるモデルにも配慮すべきだ。再エネ開発関連会社からの直接購入を認める、卸売市場におけるFIT電源の割合を明示する等が考えられる。

いずれにしても、再エネあるいはFITについては、頻繁に制度が変更している。根っこに基本制度設計の問題がある。自由化や再エネ促進を決めてはいるが、送配電線の中立化、電力取引市場の整備を後回しにしてきた。そのツケが回ってきていると言える。