連載コラム 自然エネルギー・アップデート

検証再エネFIT見直し案-進展はあるも価格設定は議論不足-

2015年12月21日 山家公雄 エネルギ-戦略研究所長、京都大学特任教授

 今回は、前回に続いて日本の再エネ制度を取り上げる。

【ゼロエミ義務、インフラコスト負担は進展】
 システム改革に向けた具体策が漸く進んできた。3次に及ぶ法改正も実現し、政府も落ち着いてきたようだ。ゼロエミ電源44%を供給高度化法に明記する。小さすぎるとの批判はあるが、再エネ電力比率22~24%達成を確実に実現していこうとの意気込みは感じる。原子力が未達の場合は再エネが増えるし、その逆も然りである。これは、CO2削減目標実現の担保にもなっており、実効性が期待できる。
 系統増強のコスト負担の問題も具体的な進展があった。現状は原因者(開発事業者)負担が原則になっているが、電圧レベルで上位2階層は一般(送電会社)負担、それより低位は一般負担と特定(原因者)とで負担を分担する。100%系統側が負担するドイツに比べて見劣りするが、最初の一歩として評価できる。一方、優先給電、利用率の低い流通設備の活用等が課題である「系統運用」は不十分であり、早急な進展を期待したい。

【FITの改善:認定基準と送電引受け】
 FIT見直しの議論は、委員会レベルで整理が進み、12月15日に報告書案が提示された。
9月以降の再エネ審議は、省新部から官房・省新部・電ガ部の共同審議体制に移行し、システム全体に目配りした議論をし易くなっている。大きく3つの論点がある。
 一つ目は、制度認定の関連である。認定時期は、従来の接続申込み前から接続契約締結後とする。事業実現の確度を高め、権利だけ確保しコスト低下を待つという行為を防ぐ。FIT価格は認定時の水準とする。太陽光以外の再エネについては、開発に長期を要することから、認定前の接続申込みを認め、公平な接続容量確保に配慮する。認定者についても、発電事業を長期にわたり遂行出来るかをチェックする。単に投機として見て、地元とコンフリクトを起こしている事業者も少なくない。ポストFIT問題等再エネ事業の継続性に係る懸念も浮上している。
 二つ目は、買取り義務関連であり、現行の小売り会社から送電会社に移行する。再エネ開発量を増やすという点では有効であるが、利用を含むトータルの再エネ推進としては、疑念があった。地産地消やグリーン取引を目的とする新電力は、直接調達の道を閉ざされ、存在意義喪失の危機に陥る。多方面からの異議・提案に配慮したのだろうが「発電と小売りで事前に合意がある場合は小売り事業者に引き渡す」こととなった。これは評価できる。

【FIT本質存続の危機:強引な価格設定論議】
 三つ目は、FIT価格の設定である。これは、これまでのような性急な進め方を踏襲しており、問題がある。まず、太陽光に関する入札制度の導入である。入札制は、一般には競争により低コストになるとされるが、制度設計による。落札事業の実施率を重視するあまり応札者要件を厳しくする場合、性急なコスト低下を狙うあまり価格要件を厳しくする場合は、特に大規模事業者が有利になり、寡占化していく。入札手続き、落札しても開発しない場合のペナルティ等でシステムコストが嵩み、価格が下がらない可能性がある。事業者要件は、前述の様に、FIT認定方式の変更でかなり改善されるはずだ。政府も小規模事業者に不利に働くことは認識しており、今後対策を検討するとしている。
 ドイツは、EU委員会の要請を受けて試験的に入札を実施している。落札平均価格はFIT価格と大差ないが、準備期間である2年経過後のタリフよりは高い。個人、組合等の地元住民は落札できていない。世界的に入札方式を採用する国は増えている。しかし、欧州のように再エネ普及が進んできた地域、米州・中東のように日照時間やスペースに恵まれている地域が主導している。ある程度再エネの競争力が見込める地域である。
 何よりも、情報不足で是非の判断のしようがない。委員会事務局が提示している案は、対象は事業用、価格上限はトップランナー方式だけである。誰が入札を行うのか、入札量をどう決めるのか不明である。認定取消しを含む「接続留保枠」が増えない限り、入札の機会は生じない。増加分はどう割り振られるのか。事業用とは10kW以上全てを指すのか例えば2000kW以上なのか、最低入札規模はあるのか、その場合より小さい規模はFITが残るのか、価格決定方式は「入札価額」か「最後の落札者の価額」か、ドイツのように試験期間を設けるのかいきなり本番か、等々。事業用太陽光に関してはFITでなくなるという大きな変革にしては、非常に進め方が雑である。
 加えて、日本では苦い経験がある。FIT以前の「再エネ普及制度」であるRPS制度は、電力会社が実施する入札制度であった。小さい募集枠と不透明な運用で、開発事業者は窮地に陥り、投資は伸びず、コストは下がらず、代替制度してFITを生む土壌となった。大きな制度変更には、改悪の懸念が付きまとう。

【根拠なく引き下げられる風力】
 次に風力であるが、この価格設定は非常に不透明である。「中長期的な引き下げスケジュールを決定する方式を採用すべき」との文言だが、リードタイムに合わせて将来価格の予見性を高めようとの趣旨は理解できる。しかし、一方的な引下げになる可能性が排除できない。FIT価格は、コストを精査して決めるのが大原則であり、そのために国会承認の委員からなる「調達価格等算定委員会」に諮ることになっている。これも同委員会に募るのが筋だが、その言及がない。太陽光の入札については言及がある。誰がどのような根拠で決めるのだろうか。
 日本は、太陽光のFIT認定量こそ増えているものの、本格稼働はこれからで、認定取消し量も不明である。太陽光以外は殆ど稼働しておらず「正にこれから」である。日本はまだ「成人化」しておらず、現行制度を安定的に運用すべきである。Babyには予見可能な制度の下で十分な成長期間が必要である。少なくとも事前の十分な検討が不可欠である。
 系統整備やFIT見直しにおいて前向きな動きがみられるのは評価できるが、FITの根幹ともいえる「価格」に関しては、具体的な議論のないままに大枠を決めようとしている。極めて不透明で、とてもパブリックコメントを募る次元ではない。「国民負担」を錦の御旗にFITの本質を議論なしで変えようとしているように見える。ミックス達成の視界不良とも相まって極めて問題である。政府委員会の在り方自体が問われるといっても過言ではない。


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