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連載コラム シリーズ 自然エネルギー活用レポート

2017年6月20日

連載コラム シリーズ 自然エネルギー活用レポート

シリーズ「自然エネルギー活用レポート」No.2〈概要版〉
バイオマス発電を支える地域の木材と運転ノウハウ
―岡山県・真庭市で2万2000世帯分の電力を作る―

石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー

中国山地のほぼ真ん中に位置する岡山県の真庭市は県内最大の面積があり、そのうち8割を森林が占めている。ヒノキの産地として有名で、市内には約30社の木材加工会社が操業中だ。製材後に出る端材のほか、森林で大量に発生する間伐材の有効利用を目指して、「真庭バイオマス発電所」が2年前の2015年4月に運転を開始した。地域ぐるみで整備した木材の調達能力に加えて、木材加工会社が積み上げたバイオマス発電所の運転ノウハウを生かす。

総事業費は41億円、年間の売電収入は23億円に

「真庭バイオマス発電所」は市内東部の産業団地の中に立地している(写真1)。高さが25メートルある巨大なボイラーを中核に、発電能力が1万kW(キロワット)に達する国内有数の木質バイオマス発電所である。1日24時間の連続運転を実施して、年間に330日も稼働する。総勢15人の体制で、燃料になる木質チップの受け入れから貯蔵、ボイラーへの燃料投入、発電状況の監視までをこなす。全員が地元の人材である。

写真1 「真庭バイオマス発電所」の全景。左奥に見えるのがボイラー

この発電所では1年間に7920万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般的な家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると2万2000世帯分にのぼる。真庭市の総世帯数(約1万8000世帯)を上回り、バイオマス発電だけで電力の自給率が100%を超える状態を実現した。

燃料に利用する木質チップは地元で調達できる(写真2)。真庭バイオマス発電所では間伐材などの未利用木材を年間に9万トン、製材工場から出る端材などの一般木材を5万4000トン使う計画だ。バイオマス発電所の建設に先立って、地元の森林組合や木材加工会社などが共同で「木質資源安定供給協議会」を設立。発電用の木材を山林や製材所から安定して供給できる体制を整備した。

写真2 地域の木材を集めて燃料のチップを製造する「真庭バイオマス集積基地」

発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電している。固定価格買取制度ではバイオマスの種類によって買取価格に違いがある。未利用木材は1kWhあたり33.6円(税込み)で、一般木材は25.2円に設定されている。真庭バイオマス発電所で使う木材の比率で計算すると、買取価格は平均で30円になり、年間の売電収入は約23億円を見込める。

一方で発電所の建設にかけた事業費は41億円(税抜き)である。バイオマスボイラーや蒸気タービン・発電機などの設備のほかに、最寄りの送電設備まで2キロメートルの送電線を敷設する工事費などに費やした。土地の取得や土木工事も事業費に含む。

さらに運転中は燃料の購入費が年間に13億円かかり、発電所の人件費も必要になる。これだけの費用をかけても、発電所が安定して稼働を続けることによって、固定価格買取制度の適用を受けられる20年以内に初期投資を回収できる見通しだ。しかも燃料費や人件費は地元に還元して地域経済の発展に貢献するものである。

実際のところバイオマス発電所は他の自然エネルギーの発電設備と比べて、きめ細かな運転ノウハウが必要になる。燃料に多くの種類の木材を使う場合には、それぞれの木材に含まれる成分や水分量に応じて燃料の配分を調整しなくてはならない。真庭バイオマス発電所では、トラックで運ばれてくる燃料のチップの水分量を測定して、ボイラーの運転状況に合わせて種類の違うチップを混ぜ合わせてからボイラーに投入する。

このように燃料の調達から発電所の運転まで、人間の知恵とシステムを組み合わせた効率的な仕組みが作られている。製材業が盛んな真庭市で発電事業が始まった経緯、さらに発電設備の詳細や今後の計画を含めて、現地のヒアリングをもとにレポートにまとめた。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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