連載コラム 自然エネルギー・アップデート

米アップル社:100%自然エネルギーを実現するー「REvision2017」より

2017年4月21日 大林ミカ 自然エネルギー財団 事業局長

 2017年3月8日に開催された自然エネルギー財団の年次国際会議「REvision2017:自然エネルギーが切り拓く未来」は、世界各地で起こりつつある自然エネルギー基幹電源時代の到来を告げるものだった。

 今回は、100%自然エネルギー利用に邁進する大企業や、大規模な自然エネルギー事業投資に移行する既存のエネルギー企業など、自然エネルギーを取り巻く新しいビジネスのあり方に焦点をあてた。世界ではすでにビジネスモデルの中に自然エネルギーを組み込み、供給側だけでなく需要側の自然エネルギー利用が拡大している。

 中でも印象的だったのが、米国に本拠をおくアップル社の取組だ。以下では、当日登壇したアップル社環境イニシアティブ・サプライヤー・クリーンエネルギー・プログラム ヘッドのケイティ・ヒル氏が報告した取組に、その後の新しい報道の内容も追加してレポートする ⅰ 

アップル社が世界で取り組む100%自然エネルギー


「REvision2017」(2017年3月8日、東京・イイノホール)にて、
24ヶ国で100%自然エネルギーを目指す、アップル社の取組を
紹介する同社のケイティ・ヒル氏。この目標は、すでに日本を
除く23ヶ国で達成済みだ。
 現在アップルが取り組んでいるのは、使用する電力すべてを自然エネルギーに転換していく、100%自然エネルギーである。

 「自分が変わるだけでは世界は変わらない。可能であることを示して皆が続くようにしたい」との考えから、1.従来型エネルギーを自然エネルギーで置き換えていく、2.既存の自然エネルギーをサポートするのではなく、新しい自然エネルギーを増やしていく、3.自然エネルギー利用のダブルカウントはしない、ということを定めて活動を展開している。

 一例が、今建設中のカリフォルニア州サンノゼのアップル新本社(アップル・パーク)である。17MWもの太陽電池、4MWのバイオエネルギーをつかった燃料電池、マイクログリッドシステム、蓄電池、最先端のエネルギー効率化を導入、使用するエネルギーを100%自然エネルギーでまかなう。今年4月から半年かけて従業員が移住する予定だ。

 こういった取組を今までも行い、実は、米国ではすでに2015年に100%を達成、現在は、ビジネスを展開する24ヶ国の世界中で、データセンター、オフィスビル、販売店などの100%自然エネルギー化を目指している。例えば、中国四川省では、40MWのソーラーシェアリング・ファームを建設、中国中の34の販売店と19のオフィスに充分な量の自然エネルギーを発電している。施設の下では牧草を育て、今もヤクが草を食んでいる。土地の狭いシンガポールでは、地面ではなくビルの屋上に800のルーフトップソーラーを設置、オフィスと将来店舗もまかなえる量を発電をしている。その結果、すでに23ヶ国で100%を達成し、世界全体で2015年には93%までに達した ⅱ 

100%自然エネルギーに向けた課題

 しかし、真の意味での100%を達成するためには、いくつかの課題がある。

 1つは、アップルの主要顧客国である日本で、100%が達成されておらず、24ヶ国中最後の一国となっていることだ。アップルは、日本で初めての技術開発拠点ビルを綱島にオープンした(横浜技術センター、YTC)。従来型ビルの消費を40%減らすエネルギー効率化や地域冷熱供給、水のリサイクルシステムを導入、1,200本の植林をビルの周りに施している。しかし、ビルの消費エネルギーを100%自然エネルギーで賄うには至っていない。日本では自然エネルギーのコストが高いことがそもそもの原因だが、特に制度としても、大口需要家が自然エネルギーを利用する選択肢が整っていないことが大きな課題となっている。

 2つには、アップル製品に関わる製造分野などの他企業分、サプライチェーン全体のカーボンフットプリントを世界規模でカウントした場合、前述したような自社努力でのエネルギー効率化や自然エネルギー導入活動をすべて合わせても、全体のわずか1%に過ぎなくなってしまう、ということだ。そこで、アップルは、現在、サプライチェーンのグリーン化を行うべく、米国だけでなく、日本を含めた各国の30以上の主要製造工場にエネルギー診断によって年間50万kWh以上のエネルギー効率化を実施すると共に、各工場のエネルギー消費を自然エネルギーへと転換していく取組を始めている。世界全体で4GW(4百万キロワット)、中国だけで2GW(2百万キロワット)の自然エネルギー設備の導入を計画し、自社と製造協力企業の合計で、2018年末までに年間2.5BkWh(25億キロワット時)の自然エネルギー電力を生み出す目標を掲げている。

 そして、今回のREvision2017で初めて公表されたのだが、日本での100%自然エネルギーに向けた取組も加速されている。アップルに基盤やフリップチップパッケージを提供しているイビデン株式会社が、アップル向け製造活動のすべてを自然エネルギーで賄う取組を開始したのである。イビデンは、日本の20ヶ所以上の自然エネルギー設備に投資し、アップル製品製造にかかる12MW以上の電力を太陽光で発電することを目指す。

 最後に、アップルは、REvision2017の発表で、日本で100%自然エネルギーを達成するための具体的な提案を行った。1つには、カーボンプライシングの導入などによって、自然エネルギーが市場で公正な競争ができるようにすること、日本政府がパリ協定を遵守することである。2つには、企業が自然エネルギーに投資しやすくする仕組や、安定的に電力価格を抑えられる自然エネルギーの長期購入契約など、他国ですでに行われているコスト効果のある自然エネルギーの選択肢を創設することである。そして、3つめには、市場開放と公正な競争によって、企業が、自由に、ボランタリーに自然エネルギーを購入できるようにすることである。

 アップルも、そのサプライヤーも、他の企業も、大量の自然エネルギーの購入がしたいと考えている。実際に米国では、2015年に新規に導入された風力の50%以上は、大手電力会社ではなく、大口需要家の長期契約によるものだった。そのためには、米国のみならず世界の多くの国で行われているように、日本でも、大口需要家が直接自然エネルギーに投資をし、その環境価値を保有できる仕組みが必要だと語った。

 「アップルは世界で最も優れた製品を作りたいと思っている。同時にそれが、世界にとっても、最もよい製品でありたい」

 日本が今後も世界的大企業にとって魅力的であるためには、企業の100%自然エネルギー利用を実現できる場所となることが、必須条件となりそうだ。


 ⅰ このコラム執筆にあたっては、自然エネルギー財団主催「REvision2017」(2017年3月8日、於東京)でのApple社講演ならびにその報道記事、Business Insider UKでのApple社リサ・ジャクソン氏講演( <http://uk.businessinsider.com/apple-solar-farms-china-singapore-stores-2016-3>, アクセス 14:57, 13 April 2017)などを参照した。
 ⅱ その後、2017年4月14日に報じられたところによると、米国のアップル製品関連製造業者が自然エネルギーに転じたことにより、その割合は93%から96%に達している。

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