連載コラム 自然エネルギー・アップデート

シリーズ「電力システム改革の真の貫徹」を考える
第5回 消費者の立場からみた廃炉費用と託送料問題 英語版

2016年12月12日 二村睦子 日本生活協同組合連合会組合員活動部長

 消費者団体は、長らく「公共料金」として電気料金の問題に取り組んできた。公共料金としての電気料金は値上げの際には国への認可申請が必要で、消費者委員会 ⅰ への諮問や公聴会の開催が義務付けられていた。消費者委員会には消費者代表が複数名参加し、また公聴会では当該地域の消費者団体の代表が意見を述べるなど、(十分かどうかは別にして)消費者の関与が保障されていた。<図1>

<図1> 消費者庁HP「公共料金の窓」より


 電力システム改革によって電気料金が原則自由化され、公共的な料金として「託送料金」が残ることになるが、託送料金は事業者間の取引ということで消費者委員会への諮問や消費者が参加できる公聴会等は位置づけられていない。一方で、託送料金は消費者が支払う電気料金の一部を構成するものであり、託送料金への上乗せはすなわち消費者による負担とほぼ同義である。<図2>

<図2> 経済産業省資源エネルギー庁HP「電気事業制度について」より


 このような中で、今回の託送料金への上乗せの議論が出てきている。消費者運動の立場から見た時に、この議論について3つの視点から問題を指摘したい。

 第一に、託送料金は文字通り送配電に関わる費用を支払うものであり、それ以外の費用を混ぜ込むべきではない。廃炉費用等を最終的に電気料金として支払うことになったとしても、それは託送料金ではなく、発電費用として明確に区別されるべきである ⅱ 。自分の支払う電気料金の費用の内訳を知ることは、消費者の権利である。また、託送は独占が認められた上での料金であり、その透明性・納得性は十分に保障されなければならない。結果的には消費者が支払うことになるにもかかわらず、消費者が直接意見を述べる機会がないことも踏まえると、この点はさらに徹底されなければならないはずである。

 第二に、電力小売自由化で消費者は電力会社を選べるようになったのであり、特定の電源・発電のコストも含めて消費者の選択を保障すべきである。廃炉費用 ⅲ は原子力発電を行う事業者が責任を持って引き当て、売電価格に反映させればよいのであって、消費者はその費用負担の違いも含めて電力を選択するのが電力システム改革の本筋であるはずだ。廃炉費用を託送料金に上乗せすることは、電力を利用する全ての国民に負担を求めることであり、原発以外の電力を利用する消費者の理解は得られない。

 第三に、託送料金への上乗せは電力小売への新規参入の阻害要因となる。消費者が電気を選べるためには、相応の新規参入と競争が必須である。一方で、託送料金は電力小売会社にとっては固定的な費用なので、ここが大きくなることは新規参入や電力会社間の競争にとってはマイナスである。結果として、消費者の選択肢が増えないことが懸念される。本来的には、託送料金を徹底的に合理化し、新規参入と競争の活発化を図るのが「電力システム改革の貫徹」なのではないか。

 この議論の中では、事故を起こした福島第一原子力発電所の廃炉費用や事故処理の費用の問題と、他の原子力発電所の廃炉費用の問題が一緒に語られており、混乱があると思う。福島第一原子力発電所関係の費用については、事故の責任を明らかにすること、賠償・除染・廃炉それぞれにかかる費用算定とその妥当性の検証がまずあるべきではないのか。そのうえではじめて、それを誰がどのように負担するのか、という議論が可能になるはずである。一方、その他の原子力発電所の廃炉費用については、単純に、発電費用の一部としてその原子力発電所の電気を使う需要家が支払う形(売電費用への上乗せ)が筋の通ったしくみだろう。

 いずれにしても、現在提案されている託送料金を通じた費用の回収という制度設計は、電力システム改革の趣旨からも消費者・国民の納得性という点からも全く同意できないものであるといわざるを得ない。


 ⅰ 消費者委員会は、独立した第三者機関として、内閣府に設置されている国の機関である。
各種の消費者問題について、自ら調査・審議を行い、消費者庁を含む関係省庁の消費者行政全般に対して意見表明(建議等)を行ったり、内閣総理大臣、関係各大臣又は消費者庁長官の諮問に応じて調査・審議を実施したりする。
 ⅱ 福島事故の処理費用を目的税のような形で電気料金から徴収する方式が検討されるかもしれないが、その場合も、託送料金ではなく税金として区分し表示すべきである。その観点からは、電源開発促進税が託送料金の内数になっており、消費者から見えなくなっている点は問題である。
 ⅲ ここでいう「廃炉費用」は、事故を起こした福島第一原子力発電所以外の原子力発電所の廃炉費用を指している。