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バイオマス混焼:石炭火力の削減に繋がる制度に 英語版

2017年9月27日 相川高信 自然エネルギー財団 上級研究員

 バイオエネルギー利用のあるべき姿は、地域のバイオエネルギー資源を廃棄物や副産物から優先的に燃料として利用し、熱利用もしくは熱電併給を基本とするものだ。燃料の集荷距離や熱利用範囲を考慮すれば、必然的に中小規模で分散型の配置となる。しかし、現状の日本のFiT制度は、このような利用のインセンティブとなっておらず、むしろ多くの問題を抱えている。

 まず第一に、資源の有限性が考慮されていないため、買取対象規模の上限がなく、また認定容量の管理も行われていない。そのため、主に輸入材を用いる一般木質の認定量が急増し、燃料不足の懸念がある。また、大量の燃料を消費するにも関わらず、持続性を確保するための基準がない。その問題が端的に現れているのは、パーム油の問題であり、森林破壊や二酸化炭素(CO2)排出量増加が懸念されている 1 

FiTによるバイオマス混焼支援の問題点

 そしてもう一つの大きな課題として、新設の石炭火力発電へのバイオマス混焼をFiTの支援対象としていることがある。

 世界的には石炭ビジネスからの撤退が本格化しつつある中、日本では42件(合計1,860万kW)の新設計画がある 2 。これらの計画はCO2排出量の大幅増加に繋がることから、気候変動対策の観点から厳しい批判を受けている。そして、その批判の緩和を狙うかのように、バイオマスの混焼を計画しているものが多くあり、制度上はFiTの支援対象となっている。

 上記の新設計画の中では、17件がバイオマス混焼を検討している 3 。特に、国の環境アセスメント第2種事業の対象外となる11.25万kW未満の小型案件で、省エネ法の発電効率基準への対応のため、30%程度の比率でのバイオマス混焼が多数計画されている。さらに、環境アセスメント第1種事業の対象となるより大型の案件では、環境大臣意見によりバイオマス混焼が求められているものがある 4 

 日本のFiT制度では、バイオマス混焼のうち既存設備の混焼への改造は支援対象外としているが、新設の場合、バイオマス燃料による発電量はFiTの買取対象となる。問題なのは、現状では混焼率の基準が全く設定されていないため、十分なCO2削減にならないことだ。バイオマスを混焼すれば、その発電所のCO2排出係数が減少することは確かだが、新規計画でよく見られる30%程度の比率では、従来型のガス火力発電所の排出係数と比べても相当高い水準となる 5 

 また現状のFiT制度の助成水準が、混焼に必要なコストに比べて高いことも問題である。新設計画は全て「一般木質」区分での認定を受けており、24円/kWhの買取価格が適用される 6 。混焼による発電コストは、およそ10数円/kWhと言われており、現在のFiT制度は明らかに過剰な支援になっている。

世界はより高い混焼率の実現、100%転換へ

 石炭火力へのバイオマスの混焼は、2000年代から欧州を中心に、北米やオーストラリア、アジアなどでも広く行われてきた。日本でも3%程度の混焼率で、FiT制度導入前から旧電力会社が全国12ヶ所で実施していたものがあったが、世界的には混焼率は上昇し、20%を超えるものも増えてきた 7 

 さらに近年では、世界的に気候変動対策の強化が必要になり、石炭火力発電の抑制が進む中で、混焼率が高まり、最終的には100%バイオマスに転換することも行われている。たとえば、イギリスにおける最大の石炭火力発電所だったDraxは、2003年から混焼の取組を開始し、最終的には100%のバイオマス転換に成功している。カナダでは、2014年にオンタリオ州のAkitokan発電所も、100%バイオマスに転換した。また、2017年2月、デンマークのDONG Energy社は2023年までに、保有する火力発電所(全て熱電併給型)での石炭使用をゼロにし、バイオマスへの転換を表明している。

欧州諸国におけるバイオマス混焼政策のあり方

 このようにバイオマス混焼は、石炭を代替し、その使用量を直接的に削減できるという特徴を持っている。しかし、燃料の持続的な調達可能性などを考慮して、政策的支援は慎重に設計する必要がある。特に、近年は、自然エネルギーの導入拡大により、火力発電所の稼働率が低下し、経営の維持は困難になることが予想されている 8 。そのため欧州諸国においても、混焼に対して、政策的な支援に積極的ではない国もあり、具体的には、ドイツでは2万kW以上のバイオマス発電及び混焼はFiT対象外としている 9 

 他方、石炭からのバイオマスへの転換に対して、一定の条件下で政策的支援を行ってきた国としてイギリス、オランダなどがある。これらの国では、支援の前提として、第一に、石炭火力からの撤退の政策的な方針を明らかにしている(表1)。第二に、使用する多量の燃料の影響を鑑み、生態系の持続性とCO2削減効果を担保するための持続可能性基準が策定され、その遵守が義務付けられている 10 。第三に、国として支援する総量が管理されている。具体的には、入札制度が採用され、支援量の管理とコスト低減の両立を目指している。なお、両国において、バイオマスによる熱電併給は、混焼とは別枠で支援されている。

表1:イギリスとオランダにおける現在の混焼支援施策の概要

  イギリス オランダ
石炭の方針 2025年までに全ての石炭火力の閉鎖を決定 ・老朽化した5基の石炭火力発電を閉鎖(政府や電力業界との合意)
・議会による石炭火力撤退を求める決議
スキーム名 FiT-CfD SDE+
持続可能性基準 必要 必要
支援対象 バイオマス転換(90%以上) バイオマス混焼(比率要求なし*1)
支援量*2 250万kW 48.6万kW
助成水準 10.5pence/kWh
(政府が示す基準価格)
7.0〜11.5€ct/kWh
(4回の入札の基準価格)
支援期間 15年間 8年間
注1)オランダでは、実際の混焼率は10〜80%。設備容量を考慮した、加重平均では、混焼率は31%に相当する
注2)支援量は、バイオマス燃料による発電容量。日本のバイオマス比率考慮後の容量に相当する。
出所)John Bingham (2015) The outlook for industrial wood pellets in Europe and Asia, Michael Carbo et al. (2017) Biomass and co-firing: Experience and future perspectives from the Netherlandsより作成


日本のFiT制度改善の方向性

 ひるがえって日本の状況を見ると、新設の石炭火力発電所のバイオマス混焼について、低率であってもFiT制度の対象にしているため、FiT制度によるバイオマスの混焼がむしろ石炭火力の増加を助長しており、早急に対策が必要である。

 そこでまず、石炭火力の増加に繋がる新設の石炭火力発電所は、FiT対象外とすべきである。仮にFiT対象とするのであれば、意味あるCO2削減が確保されるよう、例えば最新の天然ガス火力発電所と比しても遜色のないよう、最低のバイオマスの混焼率を設定することなどが求められる。また、認定後、混焼率を一定以上下げた場合にはFiT対象外とするなどのルールづくりも必要である。さらに、燃料不足を深刻化させないための総量管理、また持続性基準の早期設定が不可欠である。

 最後に、既設設備のバイオマス混焼はFiTの支援対象外であるが、石炭からの100%転換など前提条件を満たすものに対して、別途政策的な支援を検討することも一案である。


 1 相川高信(2017)「リスクの高いパーム油発電:持続可能性基準づくりを急げ」
http://renewable-ei.org/column/column_20170904.php
 2 自然エネルギー財団(2017)「日本における石炭火力新増設のビジネスリスク−設備利用率低下による事業性への影響−」を参照。
 3 気候ネットワーク石炭発電所ウォッチより
 4 武豊火力発電所リプレース計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(2017年8月1日)
http://www.env.go.jp/press/104378.html
 5 従来型の石炭火力発電(排出係数0.867kg-CO2/kWh)設備で混焼を行った場合の排出係数は、混焼率30%で0.607kg-CO2/kWh、混焼率50%で0.434kg-CO2/kWhとなる。従来型天然ガス発電所の排出係数は0.415kg-CO2/kWhであるから、混焼率50%でようやく同程度になる。しかし近年新設される天然ガス発電所の多くはコンバインド型であり、その排出係数は0.32~0.36kg-CO2/kWhである。この水準に達するためには、60%以上の混焼率が必要になる。
 6 資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公表用ウェブサイト」より。バイオマス比率考慮後の認定量が、比率考慮前の容量の50%を下回るものを、石炭メインのバイオマス混焼とすると、認定を受けているものが、11市町村に23件ある。なお、資源エネルギー庁によれば、既設設備の混焼は対象外としているが、上記認定案件の中には、既設でも認定を出してしまったものがあるとのことである。
 7 IEA Bioenergy Task32の調査によれば、バイオマス混焼を行うプラントは全世界で228ある。
 8 日本でも同様の予想がなされている。詳しくは、自然エネルギー財団(2017)「日本における石炭火力新増設のビジネスリスク−設備利用率低下による事業性への影響−」を参照。
 9 ドイツでもバイオマス混焼の事例は多くあるが、それらは廃棄物系のバイオマス燃料を用いている。
 10 両国の持続可能性基準については、自然エネルギー財団(2016)「木質系バイオマス発電に関するFiT制度見直しの提言」を参照のこと

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