連載コラム ドイツエネルギー便り

再エネが最大の電力源になったドイツ CO2排出量減少へ

2015年2月5日 一柳絵美 ベルリン自由大学環境政策研究センター 修士課程

2014年はドイツのエネルギー政策にとって大きな転換の年だったといえる。夏には、ドイツの再生可能エネルギー推進の大きな原動力となってきた再生可能エネルギー優先法(EEG)が改正された。そして、冬にはドイツ最大の電力企業エーオン(E.ON)が、原子力・火力発電事業を本社から切り離し、再生可能エネルギーを中心とした事業に特化することを発表した。2022年末までの脱原発を決め、再生可能エネルギーへと移行する「エネルギー転換」を進めるドイツが次のステップを踏み出した今、昨年の成果を振り返ってみる。

ベルリンのシンクタンク「アゴラ・エネルギーヴェンデ」によれば、昨年ついに初めて再生可能エネルギーが、ドイツ最大の電力源となった。以前のコラムで、昨年上半期の時点ですでに、再生可能エネルギーが最大の電力源となったことをお伝えしたが、年間を通してみても、その事実は変わらなかった。2014年の国内電力消費に占める再生可能エネルギーの割合は、27.3パーセントに達した。そして、長年最大の電力源であった大量の二酸化炭素(CO2)排出を促す褐炭の割合を上回ることとなった。2014年のドイツの再生可能エネルギーによる発電量は、1990年当時の発電量と比較すると約8倍に増加した。

再生可能エネルギーの躍進によって、CO2排出量が問題となる石炭火力発電の利用も減った。これに加えて、電気使用量が増える冬の気候が温暖だったことも相まって、昨年の発電部門でのCO2排出量は下がり、1990年以降2番目に低い水準に達した。このような成果をうけて、シンクタンク「アゴラ・エネルギーヴェンデ」の所長パトリック・グライヒェン氏は、「2013年には、再生可能エネルギーの拡大と同時に、望ましからぬCO2排出量の増加が確認できた。我々は当時、この現象をエネルギー転換のパラドックスと呼んでいた。しかし、今日この傾向は打破されたといえる。再生可能エネルギーはますます拡大し、温室効果ガス排出量は再び減少するのだ」と分析している ⅰ 

また、昨年ドイツの電力消費量は3.8パーセント減少したにもかかわらず、国内総生産(GDP)は前年比1.5パーセント上昇した ⅱ 。電力消費量が減少しても必ずしも経済成長が阻まれるわけではないことを証明した形となった。

さらに、「アゴラ・エネルギーヴェンデ」が、ドイツと近隣諸国との電力のやり取りを分析した結果、ドイツの電力輸出超過分が昨年、最高値の34.1TWhに達したという。これは、ドイツにおける発電量の5.6%分にあたる。

時折、原発推進派からは、脱原発を決定したドイツが、フランスから原発電力を大量輸入することで原発停止による電力不足分を補っているという論調が聞こえてくる。しかし、実際に昨年の独仏間の電力輸出入の状況をみてみると、ドイツからフランスへの電力輸出分が10TWhだったのに対し、ドイツのフランスからの電力輸入分は4.1TWhで、ドイツの大幅な輸出超過となっている。フランスは昨年、オーストリア、オランダに次いで3番目のドイツ電力輸入大国だった  ⅲ 


 ⅰ Agora Energiewende 2015: „Trendwende bei der Energiewende“
http://www.agora-energiewende.de/themen/die-energiewende/detailansicht/article/trendwende-in-der-energiewende/
 ⅱ Statistisches Bundesamt 2015: „Bruttoinlandsprodukt 2014 für Deutschland“, s.12
https://www.destatis.de/DE/PresseService/Presse/Pressekonferenzen/2015/BIP2014/Pressebroschuere_BIP2014.pdf?__blob=publicationFile
 ⅲ Agora Energiewende 2015: „Die Energiewende im Stromsektor: Stand der Dinge 2014“, s.19
http://www.agora-energiewende.de/fileadmin/downloads/publikationen/Analysen/Jahresauswertung_2014/
Agora_Energiewende_Jahresauswertung_2014_web.pdf


執筆者プロフィール
一柳絵美
(いちやなぎ・えみ)
ドイツ在住歴計6年。2015年3月までドイツの大学院で環境マネジメントを学んだ。留学中、ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所やドイツ連邦環境省などでインターンシップを経験。現在、自然エネルギー財団研究員。

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