連載コラム 自然エネルギー・アップデート

シリーズ「電力システム改革の真の貫徹」を考える
第3回 容量メカニズムは、今、日本に必要か
容量メカニズムをめぐる議論の整理と問題点 英語版

2016年12月02日 木村啓二 自然エネルギー財団 上級研究員

 現在、市場整備ワーキンググループ(以下、WGと略記)で、容量メカニズムの導入の議論が行われており、WGの議論ではすでに制度設計の話にまで進んでいる。
 しかし、そもそも容量メカニズムとは何か、なぜ必要とされているのか、について一般にわかりやすく周知されていない。そこで、本稿では、容量メカニズムが日本の現状からいって導入すべき段階にあるのかについて論じるとともに、現在議論されている集中型容量市場について主な導入課題や導入時の論点について述べたい。

 容量メカニズム導入の必要性について、資源エネルギー庁は、こう説明している。電力システム改革によって、総括原価方式での確実な費用回収の仕組みから、卸電力市場(以下、市場と略記)を通じて決まる価格によって費用を回収する仕組みに変わる。市場価格は変動するし、将来どうなるかもわからない。こうした予見性がない状態では、発電事業者は新しい発電所を建てても、投資を回収できない可能性があるので、建てたがらないのではないか。そうすると、既存の発電所の閉鎖も含めて、発電所の供給力が減少し、需給が逼迫する可能性があり、市場価格は上がってしまう。こうした懸念に対処するために、事前に必要な容量(供給力)を確保するための仕組み、容量メカニズムが必要である。


出所:経済産業省資源エネルギー庁 (2016), p.8.

 しかし、予見性の低下については、緩和できる仕組みが他にもある。長期契約や、先渡市場・先物市場など、将来の不確実性に対処するための仕組みである。そもそも、本来は市場の機能をしっかりと整備・構築した上で、それでも容量不足の懸念がある場合に検討されるべきではないか。今回のWGにおける議論では、一部こうした市場の活性化について検討中であり、むしろそちらに注力すべきであろう。

 さらに、仮に供給力が低下してきた場合には、必然的に市場価格は高くなる。それにより固定費回収の可能性が高まり、電源投資が進むことが見込まれる。そもそも容量メカニズムを導入している国・地域は、市場価格の上限設定を根拠の一つとしている。つまり、市場価格の上限設定があるために、供給力が低下しても市場価格の高まりが抑制されるので、固定費回収のインセンティブの高まりが制限される。そのため、容量メカニズムの導入が正当化されうるのである。その点、日本の場合は、市場価格に上限設定をしているわけではないので、容量メカニズムの導入の根拠は弱いと言える。

 とはいえ、現時点で既に日本の供給力が不十分ならば、供給力増強に対するインセンティブを正当化されるかもしれない。しかし、電力広域的運営推進機関がまとめた「平成28年度電力供給計画」では、予備率8%を下回るのは平成33〜34年度の東京電力管内のみである。ここでは北海道本州間連系線(増強分)及び東京中部間連系設備は全量マージン扱いとされていて、 特に北海道の予備率は約40%(平成33〜34年)にも達しており、相当の供給力余剰の状態にある。むしろ、これは、北海道電力と本州間の連系線容量が明らかに不足している状況を示唆しており、送電線の運用改善・増強の必要性を示している。


出所:電力広域的運営推進機関 (2016), p.12.

 すでにWGでは、容量メカニズムを導入するという議論の流れになっており、特に集中型容量市場の導入を中心に討議されているようである。集中型容量市場の基本的枠組みは、制度運用者が、将来確保すべき容量(キャパシティ)を設定し、そこに発電事業者等が供給可能な容量を入札するというものだ。安いものから並べていき、必要な容量を満たす最後の容量の入札価格が、容量価格として決まる。この容量を購入するのは、小売電気事業者である。小売電気事業者は自らの顧客の需要を満たすために十分な容量を確保せねばならないので、必要とする容量に対して支払いを行うことになる。

 集中型容量市場には制度設計上のさまざまな論点が存在するが、ここではそれらを一つ一つ議論していく紙面的余地がないため、5つの重要な課題や論点について述べる。

 第一の課題は、制度運用者が市場全体の適切な容量を設定できるのか、という点である。もし不十分な容量を設定すれば、結局供給力不足におちいるし、過剰な容量を設定すれば、過剰な支払いを発電事業者等にしてしまうことになり、電気料金は不当に上昇する(東、2015)。服部(2015)によれば、集中型はkWhあたりの容量コストがもっとも高くなる傾向があることが示されている。

 第二の課題は、制度設計が難しい点である。「オークションを実施するためには、さまざまなパラメーターを事前に外生的に与えなければならない。結果的に複雑な制度設計になることはよく知られているが、それはさまざまな不具合を生み出す原因ともなり、運用経験の長い米国でも制度設計の変更が繰り返されている。(服部、2015)」

 第三の課題は、容量メカニズムは、卸電力市場のような市場リスクは低いが、制度リスクがある点が見過ごされている。この点についても服部(2015)によって指摘されているが、制度設計が難しい中で、制度変更が繰り返される可能性があり、また容量設定において電力業界の意図や政治的な意図の影響を受ければ、さらに容量価格は見通しにくいものになるだろう。

 第四に、太陽光や風力発電といった変動型の自然エネルギーが増えていく中で、需給調整のための柔軟性が重要になるが、集中型容量市場ではこうしたニーズに必ずしも応えられないという点だ。集中型容量市場では、柔軟性ではなく、単純に容量が評価され、柔軟性の高い低い関係なく、安い順から容量が決定されるからである。

 第五に、制度設計によっては減価償却の終わった古い発電設備にも新規の発電設備と同じ容量価格が支払われる。本来減価償却が終わっている設備は、固定費はほとんどかからないはずであり、市場のみで維持費を賄える可能性がある。そのような状態で追加的に容量価格を支払うことは電気料金を不当に引き上げることにつながりかねない。したがって、制度設計にあたっては償却済み設備と未償却設備・新規設備等の容量市場をわけるべきである。例えば、償却済み設備に対しては最低限のkW支払い額を設定し、それで供給を続ける容量を募集する。それでも足りない容量については、集中型容量市場を設けて、未償却設備や新規設備からの応札を求めるといった二段構えの市場設計もありうる。

 以上のように集中型容量市場の設計は、多くの難しい課題をかかえており、拙速な導入は望ましくない。

 最後に、容量メカニズムとFITとの関係についても付け加えておく。
 FITでは認定設備の電気が固定価格で買い取られており、すでに買取価格のなかにその設備の固定費分も含まれている。したがって、FITの認定設備に対して容量支払いを追加的にする必要はない。問題は、FITの認定設備には容量価値がないのか、ということである。水力発電やバイオエネルギー発電、地熱発電は安定的供給が可能な電源であり、太陽光発電や風力発電もピークにおいてある程度の供給力がみこめる。この点から、自然エネルギーの容量価値について適切に評価し、当該価値分については回避可能費用としてみとめ、賦課金の計算の際に買取費用から控除すべきである。

参考文献
東愛子 (2015) 「ドイツにおけるキャパシティ・メカニズムの制度設計」『電力システム改革と再生可能エネルギー』日本評論社
経済産業省資源エネルギー庁 (2016) 「容量メカニズムについて」総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革貫徹のための政策小委員会 第2回市場整備ワーキンググループ資料3.
服部徹 (2015) 「容量メカニズムの選択と導入に関する考察—不確実性を伴う制度設計への対応策-」『電力経済研究』, No.61. pp.1-16.
電力広域的運営推進機関 (2016) 「平成28年度供給計画の取りまとめ」

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