連載コラム 自然エネルギー・アップデート

SAIREC2015:『南アフリカ自然エネルギー国際会議2015』

2015年10月29日 大林ミカ 自然エネルギー財団 事業局長

2015年10月4日から7日にかけて、南アフリカのケープタウンで「南アフリカ自然エネルギー国際会議2015 - South Africa International Renewable Energy Conference 2015 (SAIREC2015)」が開催され、各国政府、ビジネス、NGOなど、85ヶ国から3,600人以上が参加した。主催は南アフリカ共和国のエネルギー省と国立エネルギー開発研究所で、開催にあたってはREN21やドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)が協力している。

「自然エネルギー国際会議(IREC)」は、今回で6回目、アフリカ大陸では初めての開催となる。ただし、そもそものルーツは、2002年に南アフリカのヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(地球環境サミット、WSSD)」にさかのぼる。当時のドイツ・シュレーダー首相が、2004年に自然エネルギー政策についての閣僚級会議をドイツで開催すると宣言したことから、IRECへの取り組みが始められた。WSSDに向けては、EUやEUの気候変動についての姿勢を支持する市民団体は、WSSDでの京都議定書の発効を働きかけていた。しかし、米国の離脱などがあり発効は不可能となったために、気候変動の国際枠組へのモーメンタムが失われるのを怖れて、WSSDの成果として世界全体で自然エネルギーの目標値を定めようという動きへとシフトしていった。しかし、結局、サミットの場では、米国や日本の反対に遭ってそれも叶わなかったため、EUやドイツやイギリスの各国政府は、それぞれ、自然エネルギーを進める各国連合体の結成やIREC開催などを宣言したのである。

2004年6月にボンで開催されたIRECは、156ヶ国から100名以上の大臣が参加するという大きな政治的意味を持ったものだった。開催に向けてアジアやアフリカなど地域準備会議なども行われ、市民のネットワークやユースのグループが結成されるなど、自然エネルギーの拡大を盛り上げようとする機運に溢れていた(筆者も日本から唯一のマルチステークホルダーの一員として、プレナリーでの議論に参加した)。自然エネルギー拡大のために、野心的目標値の設定や、FiTなどの政策的措置を講ずる重要性が確認された。その後、IRECは、2005年北京、2008年ワシントン、2010年ニューデリー、2013年アブダビと、開催地の政府が招聘し主催する形で継続され、それぞれの目標値の宣言が行われるなど、その国ごとの自然エネルギー政策を加速する起爆剤となってきた。

今回、誕生宣言の地、南アフリカで開催されたIRECは、ボン2004の時とは違った会議となっていた。準備不足もあってか、閣僚級の参加はアフリカ諸国だけで、政策的議論が充分に行われたとは言いがたかった。展示も40程度で他の展示会に比べて少数だった。しかし、NGOが国家に対して自然エネルギーの野心的な目標値を掲げよう!と働きかけ、国際会議で決議する牧歌的な時代はとうに過ぎ去り、産業として自然エネルギーの成長を議論する時になったのだとも言える。政策も技術も毎日自然エネルギーについての国際会議が世界各地で開催されている。

活発に開催されたサイドイベントでは、主にアフリカ、新興国、途上国での自然エネルギーの開発ポテンシャルが討議された。特に南アフリカの自然エネルギー入札スキームは、成功例として取り上げられていた。落札後の事業化を確実にするために、審査に銀行を組み込んで事業化保証を行うことで成功している事例である。低い価格で落札して事業化できない事例を避けるために、その危険性があるときには銀行が補填を行うスキームである。

本会議では、風力、太陽、バイオエネルギー、水力、地熱など各エネルギーそれぞれの他に、政策フレームワークの行方、ビジネスモデルなどが議論された。すでに多くの国が、当初見込んでいた以上の3割や4割の導入量を達成している。2000年に6%だった自然エネルギー電源をドイツは13年間で26%に拡大し、スペインは17%を39%にし、米国も7%から12%に増やしてきた。先進工業国にとっては、拡大し続ける自然エネルギーを、いかにより効率的に系統に導入していけるのかが目の前の課題としてある。太陽光はここ5年で8割ものモジュールコストの低下を実現し、いくつかの新興国では、新規の化石燃料の発電所コストに比べて、太陽光のコストの方が安くなっている。風力発電は、ドイツやイギリスやデンマーク、米国で、すべての発電の中で最も安くなった。一方で、一部の国々や、新興国や途上国では、劇的に下がっている自然エネルギーのコストの恩恵が及んでいない。先行する国々のラーニングプロセスが成功した政策を作り、企業のラーニングプロセスがコストの低下を招いた。今後はそれぞれの国や地域で、自然エネルギーの普及を阻むバリアを見つけ出し、排除していくべき時である。

ボンは先進工業国の自然エネルギー拡大の幕開けであり、北京はいまだに世界の自然エネルギー拡大の中心である中国の爆発的な伸びを予告するものだった。この10数年間で、国際的な政治状況も大きく変化した。2002年や2004年当時は到底難しいと思われていた自然エネルギーだけを専門とする国際機関IRENAが140以上の国々の参加を得る組織として成立し、活発に報告書等を発表し、各国の政策をサポートし始めている。それに刺激される形で、IEAなども自然エネルギーへの取り組みを強化している。ボンの時には存在しなかったREN21も、もう10年を経て、毎年「世界自然エネルギー白書」発行し、IRECの開催に欠かせない国際ネットワークに成長した。

日本国内で開催される国際会議はともかく、国際的な議論の場では、残念ながら日本の存在が見えないままだ(今回のSAIRECにも政府からの参加は一人もなかった)。国内政策もまだ混乱の中にあるが、当財団が繰り返し伝えているように、日本でも自然エネルギーが着実に拡大し、その役割を着実に果たしている。明らかな固定価格買取制度の成果である。

いつか、日本もIRECを主催し、日本の自然エネルギーの拡大と政策を、世界に誇れる日がくるといいと望んでいる。

展示会場ネットワーキングブース:REN21ブース
4日のウェルカムレセプション

南アエネルギー大臣Tina Joemat-Pettersson氏と
談笑するトーマス・コーベリエル理事長


5日のオープニングプレナリー

連載コラム
アーカイブ