連載コラム 自然エネルギー・アップデート

地方からエネルギー政策を問う

2014年1月17日 大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事

政府は、1月中に予定していた「エネルギー基本計画」の閣議決定を先送りすることにしたと報じられている。原案が、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置付けたことに批判が広がっているためだ。政権与党の中からも異論が表明され、原子力委員会からも策定プロセスに対する批判的な意見が表明された。内容は明らかにされていないが、原案へのパブリックコメントには、年末年始という意見の出しにくい時期に行われたものにも関わらず、1万9千件の意見が提出されたという。

もともと今回の基本計画見直しプロセスは、全く強引なものだった。昨年末の12月6日の分科会にそれまで影も形もなかった「意見案」なるものを資源エネルギー庁の事務局が報告し、分科会の議論も終わっていないのに、その日からパブコメを開始した。13日の分科会で修正があったために、開始されていたパブコメの対象文書を差し替えた。こんなやり方は前代未聞だ。

「エネルギー基本計画」見直しプロセスのこうしたドタバタから見えてくるのは、現在の政権と霞が関官僚が、3・11を経験した日本で起きている深部の変化を理解していない、ということだ。国民の意見をまともに聞こうとしない、こんなやり方がまだ通用すると思っていたのだろう。福島原発事故を経験した日本国民は、もはやエネルギー政策の決定を、旧態依然の既得権益の一握りの代表者にまかせることを許さない。

3・11後、かつてない規模で省エネと自然エネルギー導入が進んでいるが、重要なのは、そうした取組がこれまでエネルギー政策に関わりが薄かった人々の中でも、大きく進んでいることだ。36の道府県、18の政令指定都市がそれぞれ自然エネルギーの普及をめざす協議会を創設した。各地域の地元企業や住民が、資金を出し合って太陽光発電や風力発電プロジェクトを開始。2月初めには、福島でこうした全国各地の「コミュニテイー・パワー」が結集する会議が開催される。異業種からのエネルギービジネスへの参入も相次いでいる。

2月に行われることになった東京都知事選挙で、脱原発が争点になる状況であることに対し、政権与党の中からは、「エネルギー政策をどうするかということは、これは法律、予算を含めて、一義的に国政の課題だ」という発言が出ている。こうした認識は時代錯誤としかいいようがない。エネルギー政策は、人々の暮らし、企業の活動にかかわる重要問題であるからこそ、国政だけでなく地方でも問われるべきものなのだ。エネルギ―供給のあり方は、今後ますます、大規模集中型から分散型に転換してくる。そうなれば、エネルギー政策決定における地方自治体や地域コミュニテイの役割は一層重要になる。2014年は、こうした変化を明確にする年になるだろうし、しなくてはならない。

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