連載コラム 自然エネルギー・アップデート

本格的ファンド登場で高まる再エネ普及への期待

2016年6月27日 山家公雄 エネルギ-戦略研究所長、京都大学特任教授

1. 政投銀が本格的な風力ファンドを組成
 2016年1月13日付け日経新聞に画期的な再エネ資金調達に係る記事が載った。日本政策投資銀行㈱と日本風力開発㈱とにより、500億円の「風力ファンド」を創設する。
 出力規模で業界第3位の日風開は、保有する全発電設備をファンドに売却し、売却資金を新規開発資金に充てる。同社は、今後数年で約50万kWの開発を見込んでおり、短期間に巨額の資金が必要となる。同社に限らず、歴史の浅い再エネ事業は資金調達が大きな課題である。特に再エネ普及が出遅れた日本では、時代の要請に追いつくために短期間で大規模な開発が必要であり、ファイナンスは普及のカギを握る。
 風力発電を例に、少し敷衍する。長期期見通しでは、風力は2030年までに累計で1000万kWとされた。一般の(世界の)常識に比べてあまりに低い数値であるが、それでも達成を危ぶむ向きがある。金融がつくのかという懸念である。稼働済み事業は300万kWであり、残りは700万kWである。日本風力発電協会は、700万kWの殆どが環境アセス手続きに入っており、ファイナンスがつけば、2020年前後にも達成可能な数値としている。
 投資額は、建設単価がkW当り30万円とすると2兆1千億円、20万円では1兆4千万円となる。まだ市場規模の小さい日本では、風力を大規模に開発できる事業者は限られており、また必ずしも所謂大企業ばかりではない。この少数の有力事業者が短期間でこれだけの調達ができるかという疑問である。従来は、自ら所有していたが、これでは投資回収に十数年かかり、多くの事業を手掛けるのは難しい。
 なお、再エネは、太陽光のように、採算が見えれば短期間で多くの事業者により開発が進む可能性を秘める。ドイツは1/2は地元の事業者が所有している。

2. スキームの要は資本リサイクル
 政投銀は、旧日本開発銀行時代よりエネルギー融資が業務の柱であり、最近は革新的な金融手法にも取り組んでいる。今回のキーワードは「資本リサイクル」であり、米国等で先行している金融技術だ。開発段階のリスクを資本(エクイティ)提供でテイクし、運転開始後リスクが小さくなった段階で機関投資家等に幅広く資金を募る。不動産REITと仕組みが似ている。政府も再エネを含む「インフラファンド」を導入しており、課題と言われる税制上の取扱いが見直されれば、風力ファンド上場が現実味を帯びる。
 風力等の再エネは、燃料が不要であり基本的に安定的なキャッシュフローが見込まれる。事業コストの殆どは資本費で今後設備投資は急増する。「資本リサイクル」は、新たな視点を提供し、巨額資金調達に係る見通しを与えてくれる。再エネは2030年までに22~24%を占めることになるが、パリ協定実現に向けて上方修正される可能性が高い。金融が後押しすれば、再エネ開発の予見性が大きく高まがることになる。
 しかし、この方式は、機関投資家等の運用を視野に入れており、相当程度の規模と継続的な事業開発が前提となる。大規模開発が可能なデベロッパーが想定されており、スケールメリットによるコスト低下が期待できる。今後、FITタリフが、継続的に下がっていくことが予想されるが、その環境に適したシステムともいえる。

3. 地方を支援する自然電力グループ
 一方、小規模事業者の環境は厳しくなる。風力資源は一般に人口の少ない地方に賦存し、地方事業者は、地域産業創造の期待を担って登場してくる。しかし、資金力等から自社で開発できる規模は限られ、コスト低下の動きについていきにくい。この分野に、光をあてるのが、自然電力㈱とケネディクス㈱が組んで組成される再エネファンドである。3月31日に両者間で協定が締結された。
 上記風力ファンドと比較すると、対象を再エネ全体に、また既存事業のみならず新規開発事業まで広げている。その上で、自然電力グループの「地域に根差した再エネを増やす」という理念を組み込んでいる。このファンドの運用により、同社が直接開発に携わること以外でも、地域に根差した再エネ事業を資金面で支援していくことが可能になる。
 同グループは、地域とともに開発することを社是とする。開発から建設、調達、運転、メンテナンスと全てを行う。地域の実情に合わせて、地域の足りないところを補完するかたちで、太陽光発電事業で急成長してきた。今後は、創業者にとり本業ともいえる風力のほか、水力、バイオマスにも展開していくが、ファンドは大きな力になる。地域事業者のノウハウやスケールデメリットを補完する役割が期待される。

連載コラム
アーカイブ