連載コラム 自然エネルギー・アップデート

2015年、自然エネルギーから始めよう

2015年1月5日 大野輝之 自然エネルギー財団 常務理事

2015年は、いわゆる「エネルギーミックス」、電源構成を決める年になる。自然エネルギー財団でも、できるだけ早く提案を発表するつもりだが、ここで一つ考えたいのは議論の順番についてだ。原子力発電の位置づけ、石炭火力増強の是非など、多くの重要な論点があるが、自然エネルギーをいかに早く日本の基幹電源にするのか、という点から議論を始めたらどうだろうか。

脱原発を決めたドイツは2025年までに40~45%、2035年には55~60%という高い自然エネルギー導入目標を掲げている。しかし、同時に見てほしいのは、原発を維持する英国やフランスも積極的な導入目標を決めていることだ。

英国は、2020年までに電力の30%を自然エネルギーで供給することを目指しており、風力発電の急速な導入が進んでいる。「原子力大国」のフランスも昨年10月に、熱や燃料を含むエネルギー全体における自然エネルギーの割合を、2030年に32%とするという目標を決定した。この目標を決める国会の議論の中では、電力については40%という数値が示されたそうだ。そもそも、原発について様々なスタンスに立つ国で構成されるEUが、全体として2030年までには、自然エネルギーで45%程度の電力を供給することになる目標を決定したことは、以前にこのコラムでも紹介した

米国も原発をやめる方針は決めていないし、国全体としての自然エネルギー目標を掲げてはいないが、人口3700万、全米最大の州であるカリフォルニアは2020年までに33%の電力を自然エネルギーで供給する目標を決めている。ここには大規模水力が含まれていないので、それを合計すると40%以上が自然エネルギー電力になる。カリフォルニア以外でも、ニューヨーク州が2015年までに30%という目標を定めているし、少なからぬ州が目標を引き上げだしている。

このように見てくると、原子力政策の如何に関わらず、2030年までには、電力供給の4割程度を自然エネルギーで供給するという目標は、欧州ではスタンダードになっているし、米国でもそうした方向が強くなってきていると言える。

このような欧米各国、地域と比べても、日本には自然エネルギーを早く基幹電源にすべき大きな理由がある。それは、自然エネルギーが日本の持つ唯一の純国産エネルギーだという点である。日本の豊かな自然をいかせば、海外からの高価な輸入エネルギーに頼る必要を小さくすることができる。国内に化石燃料のない日本だからこそ、自然エネルギー開発が重要なのだ。

原子力発電に関する意見が違っても、自然エネルギーの推進自体を否定する人は殆どいない。もちろん、「太陽光発電や風力発電は天候次第で不安定だ」という理屈で大量導入に否定的な見方が日本にあるのは、昨年秋以降の接続申込みへの「回答保留」問題で示されたとおりだ。年末の財団の提言で書いたので、ここでは繰り返さないが、大量導入が難しいとされた理由は、どれも自然エネルギーを早く基幹電源とすることを決め、そのための準備を進めれば解決可能なものばかりである。

震災後、様々な機会に行われたエネルギー政策の議論の中で最大の焦点になってきたのは、原子力発電の扱いだった。福島原発事故のもたらした惨禍の深刻さと、事故にいたる経過の解明で見えてきた日本の電力事業と行政の歪みの大きさを考えれば、再稼働の是非や条件も含め原発政策が議論の中心になるのは当然であったし、これからも議論を続けなければならない。

しかし、意見の違いが大きい原子力発電の扱いから始めて、ここに議論を集中するよりは、多くの人々が賛同する自然エネルギーの拡大から議論を開始し、3割、4割以上の電力供給が遠くない将来に実現可能だということを大方の共通理解にしていく、その作業を最初にやるべきではないか。自然エネルギーが基幹電源として日本の社会をしっかり支える姿を共有できれば、原子力発電を含むその他のエネルギーの扱いについても合意が容易になるだろう。

昨年末には、自然エネルギーを拡大するという一点で目的を同じくする多くの団体、企業が参加する「自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション」という取り組みが始まった。2月以降に全国各地域でシンポジウムの開催など多様なとりくみを進めて行く予定だ。

純国産の自然エネルギーは巨大な災害を引き起こす恐れのない安全安心のエネルギーであり、また燃料資源をめぐる争いとも無縁な平和のエネルギーでもある。この自然エネルギーをいかに早く日本の基幹電源にするのか、そこから議論と行動を始めていくことが、震災前とは違う新しいエネルギーシステムを日本に実現する、一番の早道なのではないだろうか。

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