連載コラム ドイツエネルギー便り

ドイツの市民の93%が重要視するエネルギー転換

2014年7月11日 一柳絵美 ベルリン自由大学環境政策研究センター 修士課程

8月に、『再生可能エネルギー優先法』(略称:再生可能エネルギー法、EEG)改正の施行が予定されているドイツ。一般家庭の電気料金の負担が増えるなか、ドイツの人々はどのようにエネルギー転換(Energiewende)を受け止めているのだろうか。各種世論調査の結果をもとに、エネルギー転換に対するドイツ人の民意をまとめた。

ドイツの世論調査会社TNSエムニド(TNS Emnid)が、2013年9月に1,003人を対象に行った世論調査によれば、合計93%の人々が再生可能エネルギー(以下:再エネ)の更なる拡大を「非常に重要(66%)」もしくは「重要(27%)」であると回答した ⅰ 。再エネの促進に伴う電気料金の値上がりが議論されてはいるものの、ドイツでの再エネに対する市民の期待は依然として高い結果となった。

そればかりか、「固定価格買い取り制度による再エネ促進のための賦課金の上昇についてどう思うか」という質問に対しては、半数の50%が賦課金額は「妥当」、そして5%が「低すぎる」と回答した。つまり、賦課金の上昇に対して過半数が理解を示し、「高すぎる」と回答した42%を上回った。ドイツにおける再エネの賦課金額は、10年前の2004年には1kwhあたり0.51ユーロセント(約0.7円)だったが、今年2014年には6.24ユーロセント(約8.7円)まで上昇していて ⅱ 、現時点での平均的な一般家庭の負担は月額約18ユーロ(約2,500円)となっている。

また、同調査では、「一般家庭の電気料金を抑えるために、再エネの促進をストップするとしたらどうか」という質問に対しては、43%が「全く無意味だ」、30%が「あまり意味がない」と回答し、合計で73%の人々が再エネの促進をやめることには否定的な姿勢を示した。以上の調査結果から、ドイツでは、再エネへの補助をやめて電気料金を安くするよりも、いくらか負担が増えても再エネの促進を継続することのほうが重要だと考える傾向があるといえよう。

この考え方は、私の周りのドイツの人々の行動にも表れている。例えば、私の大家さんのドイツ人女性は、再エネ由来の電力のみを扱う電力会社と契約を結んでいる。彼女に言わせれば、「確かに他にも安い電気を提供する電力会社はあるが、将来のための投資と考えればこの選択は当然のことなのだ」という。このように、ドイツで再エネ由来の電力を選んで消費している家庭は、2013年の時点で22%にのぼる。2010年には、6%だったことを考慮すると爆発的な伸びである ⅲ 。ドイツの人々はエネルギー転換を前向きに捉え、家庭でそれを実践しているのだ。

事実、ドイツではエネルギー転換が成功すると考えている人が多い。ドイツ全国消費者センター連盟(vzbv)が昨年の8月に発表した世論調査では、調査対象者の1,227人のうち16%の人がエネルギー転換は「成功する」、72%が「大半は成功する」と回答した。これは、88%がドイツのエネルギー転換は成功すると楽観視している計算になる ⅳ 

また、この調査のおよそ半年後にドイツ・エネルギー水道事業連盟(BDEW)が発表したところによれば、42%の市民がエネルギー転換は「とても順調に」もしくは「順調に」進んでいると肯定的にみている。一方、56%が「あまり順調に」もしくは「全く順調に」進んでいないと考えている ⅴ 。最近は、エネルギー転換への大きな期待に反して、実際の進捗状況に不満を持っている市民も増えているようだ。

このような民意を反映するかのように、最近特に、エネルギー転換の迅速な促進を求める大規模なデモが定期的に行われている。昨年11月に首都ベルリンで行われたデモには16,000人、今年3月に全国各地で行われたデモには30,000人、5月にはベルリンで12,000人がデモに参加し、エネルギー転換の加速化や化石燃料・原子力からの早急な脱却を訴えた ⅵ 。ドイツ市民のエネルギー転換への熱意は冷めそうにない。


 ⅰ Die Ergebnisse der Akzeptanzumfrage Erneuerbare Energien 2013, TNS Emnid im Auftrag der Erneuerbare Initiative Energiewende Jetzt!, September 2013
Umfrage 2013: Bürger befürworten Energiewende und sind bereit, die Kosten dafür zu tragen, Agentur für Erneuerbare Energien
 ⅱ BDEW-Strompreisanalyse November 2013, Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft e.V. (BDEW), November 2013
 ⅲ Anteil der Haushalte mit Ökostrombezug, Agentur für Erneuerbare Energien
 ⅳ Studie: Verbraucherinteressen in der Energiewende, forsa im Auftrag des Verbraucherzentrale Bundesverbands e.V. (vzbv), August 2013, s.39
この調査の詳細はみどりの1kwhが報じている(日本語)
 ⅴ BDEW-Umfrage: Große Mehrheit unterstützt die Energiewende - Umsetzung wird kritisch beurteilt, Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft e.V. (BDEW), Februar 2014
 ⅵ Energiewende nicht kentern lassen!


執筆者プロフィール
一柳絵美
(いちやなぎ・えみ)
ドイツ在住歴計6年。2015年3月までドイツの大学院で環境マネジメントを学んだ。留学中、ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所やドイツ連邦環境省などでインターンシップを経験。現在、自然エネルギー財団研究員。