連載コラム 自然エネルギー・アップデート

東京都知事選挙と「原発問題」について

2014年1月31日 大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事

「原発は都知事選の争点にふさわしくない」という意見がある。東京は、老朽化するインフラ対策、防災、待機児童、一人暮らし高齢者への対応など多くの課題に直面しており、選挙がシングルイシューではいけないのは、そのとおりだ。

しかし、3・11後、環境局長として東京の行政の一翼を担った者として、「原発は国の問題で、地方政治の問題ではない」などという主張には、とても与せない。

東京もまた、東京電力福島第1原発事故によって深刻な問題に直面した。当時の気象条件の偶然によって、東京全体が高濃度に汚染されるという最悪の事態は避けられたものの、多くの都民が見えない汚染への不安にさいなまれ、廃棄物処理、上下水道など行政の現場では、職員が初めて遭遇した放射能汚染に向き合うことを強いられた。

そして都民と都内企業は、2011年3月の計画停電と7、8月の電力使用制限令の発動によって、原発という大規模集中型電源に依存してきた電力システムの脆弱さを、身をもって体験した。電力は、人々の暮らしと企業の活動に関わる重要問題であるからこそ、国政だけでなく、地方でも問われるべきものなのだ。

他方、3・11以降の東京の経験は、原発に依存しなくても都市の成長を維持できる可能性も示している。東京では、以前から地球温暖化対策として、省エネに積極的に取り組んできたが、その蓄積もいかして、震災後、既に10%以上の電力使用量を削減している。首都圏全体の夏の最大電力では、原発10基分が削減された。
自然エネルギーの供給拡大、コージェネレーションなど分散型電源の導入も加速してきた。

東京の取組は、全国の原発が停止し節電が日本全体の課題となる中で、関西など他の地域でも参考にされたし、東京本社で先行した節電の経験を、全国の事業所に水平展開している企業も多い。なぜ東京が原発なしでも暑い夏を乗り切れたのか、フランスの大手電力会社など調査に訪れた海外企業も少なくない。

都には原発に関する許認可権限は無いし、立地県のように再稼働に拘わる協定を電力会社と結んでいるわけではない。しかし、既存の制度的枠組みで権限が定められていなくても、地方自治体にできることはいくらでもある。

これまでも東京都は、環境、福祉、都市づくりなど多くの分野で、既存制度の限界を打破し、先駆的な施策を生み出してきた。原発に依存しない社会をめざす都行政のリーダーが誕生すれば、東京を原発分の電力なしに活力ある世界一の都市にすることができるし、脱原発をめざす全国の地方自治体の声を一つに束ね国に迫ることもできる。これが国の政策に影響を与えないはずがない。

エネルギー供給のあり方は、今後ますます、大規模集中型から分散型に転換してくる。そうなれば、エネルギー政策決定における地方自治体や地域コミュニテイーの役割は一層重要になる。

東京都知事選挙は、いつの時代も、時代の変化を先取りしてきた。今回の都知事選で、原発の問題が大きな争点となり、日本と世界の人々に、二度とあのような惨禍と恐怖の体験を強いることのない安全で持続可能なエネルギーシステムへの転換を果たす契機となることを切望している。

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