連載コラム 自然エネルギー・アップデート

原発維持の英国も2020年までに30%の自然エネルギーをめざす
初出:『環境ビジネスオンライン』 2014年10月13日掲載

2014年11月13日 大野輝之 自然エネルギー財団 常務理事
ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団 研究員

日本の中で、最近、話題にあがる英国のエネルギー政策といえば、原子力発電に固定価格買取制度のような価格保証をしようとするCfD制度(CfD: Contract for Difference)だ。何しろ、35年間も15.7円/kWhという高値の価格を保証するというのだから、「原発は安い」という神話を最終的に崩すことに貢献した政策だといえる。反面教師的に評価されているわけだが、その一方で自然エネルギー政策については、ドイツやデンマークなどの先進的な国々より立ち遅れているという見方が一般的だ。しかし、4年間で2.4倍になった風力発電の急成長や、石炭火力からバイオマス発電への転換など、英国にも注目に値する自然エネルギープロジェクトがある。

原発推進でも自然エネルギー30%をめざす

ドイツやイタリアなどと異なり、原発維持の旗を降ろしていない英国でも、2020年までに電力の30%を自然エネルギーで供給する目標を掲げていることをご存知だろうか。目標を持っているだけではない。図1で、2013年のデータでみると既に14.9%を自然エネルギーで供給している。更にここで注目すべきは、その内訳である。伝統的自然エネルギーである水力発電の割合は、1.3%とわずかで、風力発電とバイオマス発電が大半を占めているのだ。ちなみに日本の2013年度の自然エネルギー割合は10.7%で英国の3分の2というところだが、その内容にも大きな違いがある。日本の場合は水力が8.5%であり、太陽光や風力発電などは、2.2%にすぎない。

そんな状態なのに、最近、日本では、九州電力に端を発して5つの発電会社が、自然エネルギーの接続申込みに対して「回答保留」するという事態になっている。原発のあり方については、いろいろ意見の違いがあるだろうが、2020年をめざして20%、30%の自然エネルギー導入を目指す必要があるというのは、英国の例を見ても、世界的には(少なくとも先進国では)、もはや常識なのではないだろうか。

風力発電が最大の推進力:4年間で2.4倍

話を英国に戻そう。最新の動きを見るために、図2によって、2010年前半と2014年前半を比べると、自然エネルギー発電量の占める割合は、6%弱から18%強へと3倍以上に増加している。その内訳をみると、最大の推進力になっているのは風力発電である。図3は、2010年前半末と2014年前半末の自然エネルギー設備の導入容量を見たものだが、風力発電は、2014年前半末で陸上と洋上をあわせて約1200万kWである。4年前が500万kW弱だったから、この間に700万kW増えている。2.4倍になったわけだ。

日本の風力発電導入量は、2013年度末で約271万kW。英国の電力使用量は、だいたい日本の3分の1だから、その差を勘案すると、ざっくり言って日本の12倍程度の割合で入っている勘定になる。このように導入のレベルに大きな差があるが、更に問題は導入のテンポだ。日本は4年前の2009年度末が218万kWだったので、4年間の増加量は53万kWにすぎない。この4年間で、日本と英国には大きな差がついてしまったわけである。

英国政府のエネルギー気候変動省(DECC)は、どんなエネルギーを支持するかという世論調査を定期的に行っている。その結果によれば、自然エネルギーで電気や熱などを供給することへの支持は、一貫して8割程度を保っている。こうした高い国民の支持が、自然エネルギー拡大の背景にあることは間違いない(これに対して、原子力を支持する割合は減少してきていて、最新の調査では36%になっている。ここで興味深いのは、核廃棄物をどのように処理しているかを知っていると答えた国民は15%だけで、85%は、殆どあるいは全く知らないと答えていることである)。

石炭火力からバイオマス発電への転換

英国の自然エネルギー発電の中で、風力発電の次に大きな割合を占めるのは、バイオマス発電である。2014年前半では、全発電量の5.9%を供給しており、2010年前半からほぼ倍化している。バイオマス発電の中で、注目されているのは、大規模な石炭火力からの転換が進められているプロジェクトである。

日本では、石炭火力発電の燃料に部分的にバイオマスを加えて、自然エネルギーの推進をうたっている事例もあるが、ここでご紹介するのは、大規模石炭火力から100%バイオマス発電への転換を進めるドラックス発電所(Drax Power Station)である。

この発電所は、英国北東部のヨークシャーに立地しており、もともとは英国政府系の電力機関(Central Electricity Generating Board, CEGB)が建設と運営を行ってきた発電所だ。6基の66万kWの発電ユニットからなる約400万kWという英国最大の石炭火力発電所である。1990年代の英国の電力制度改革の中で民営化された後、所有者がいくつか変わったあと、最終的に現在の企業が経営する形になった。

今でも、英国全体の電力需要の7-8%を供給しているという、この大規模石炭火力がバイオマス発電への転換を決めた理由は、英国政府の気候変動対策である。英国は、2050年までに1990年比で二酸化炭素排出量を80%削減することを目標としている。ドラックス発電所は、英国最大の二酸化炭素排出源であり、排出削減に向け、まず2016年までに、3基の発電ユニットを100%バイオマス発電に転換することを決定したのである。2013年4月には最初のユニットの転換が終わっている。発電実績は予想以上で、4基目の転換も検討を開始しているという。

但し、このプロジェクトには強い批判もある。バイオマス発電といっても、これだけの規模になると燃料を英国国内では調達できない。ドラックス発電所では、燃料の九割を北米から輸入する計画になっており、環境団体からは、森林破壊になるという批判や、輸送などに起因する二酸化炭素排出量を入れれば排出削減にならない、という意見も出されている。

確かに、燃料の長距離輸送にたよる大規模バイオマス発電所が、今後ますます分散型になっていく電力システムの中で、本当に持続可能な発電形態なのかは議論のあるところだと思う。しかし、英国で最後に建設された石炭火力発電所であるドラックス発電所が、気候変動対策による排出制約の中でバイオマスに転換していく姿は、これから石炭火力を建設しようとしている日本のエネルギー業界には、大いに学ぶところがあるのではないだろうか。

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