連載コラム 自然エネルギー・アップデート

洋上風力のコストが大幅低下-10ユーロセント/kWh割れが現実に-

2016年10月27日 山家公雄 エネルギ-戦略研究所長、京都大学特任教授

1. 高まる洋上風力への期待
 洋上風力への期待が高まっている。周囲を海に囲まれ、排他的経済水域第6位を誇る日本は、地理的に恵まれている。一般に、陸上よりも風況がよく、沖合では景観・騒音等の問題が生じにくいことも魅力である。洋上風力の課題は、陸上の2~3倍ともいわれるコストであるが、洋上風力導入量の9割を占める欧州で、急激にコストを下げてきている。日本のFIT価格はkWh当たり36円であるが、欧州では10ユーロセントを切る事例が出てきた。日本は、遅れている陸上と同時に洋上の開発も現実性を帯びてきた。欧州の洋上ノウハウは確立されつつあり、これを参考にできるからだ。

2. 350万kW開発に着手し洋上トップに躍り出たオランダ
【ボルセラ沖事業でkWh当たり7.3ユーロセント】

 2016年7月5日にオランダのボルセラ沖プロジェクトの入札結果が発表された。結果は、7.27ユーロセント/kWhにてデンマークのドンエナジーが落札した。最高指定価格9.4ユーロセントを大幅に下回り、38者が入札する中、ドンエナジーが圧勝した。10ユーロセントを切る洋上風力事業は初めてである。系統接続費用は1.4ユーロセントであり、これを含めても9ユーロセントを下回る。同事業は総出力70万kW(35万kW×2)で、沖合22㎞、水深14~38mに位置する。業界挙げてコスト低下を目指している中で、関係者も驚く数値である。風車メーカーは未定だが、8MWクラスと想定される(資料1)。

(資料1)ボルセラ沖プロジェクト位置図

(出所)Dong Energy

 いくつかの要因が指摘されている。大型化等風車の技術革新、鉄等材料費の低下、傭船価格の低下、低金利等である。しかし、最大の要因は、オランダ政府が長年にわたり続けてきた研究にある。事業の予見可能性を徹底的に追求した。毎年70万kWの募集を5年間継続(今回が第1回)、落札価格の15年間保証、環境評価・地理評価の一括事前実施、標準化された系統の整備等である。事業リスクをオランダ政府がテイクしたとも言える。事業者は低価格入札でオランダ政府の努力に応えたのだ。

【デンマークはニアショアながら6ユーロセントを記録】
 先行していたデンマークも黙ってはいない。北海浅部における事業の入札結果が9月1日に発表された。スウェーデンのバッテンフォールが約6ユーロセント/kWhにて、「Vesterhav Syd」および「Vesterhav Nord」を落札した。総出力は35万kWである。沖合5㎞と好条件ではあるが、驚異的な低価格である。

3. 欧州の目標は2025年に8ユーロセント割れ
 今回紹介した、オランダのボルセラ沖やデンマークのニアショア事業は、関係者でも驚愕する低価格である。大きなステップであるが、恵まれた立地条件が寄与している面もある。補助なしに成り立つには、更なるコスト低下が不可欠である。今後増えてくる遠隔地においてもコスト低下が継続していかなければならない。それには事業量の確保が不可欠であり、関係者が連携して取り組む必要がある。欧州風力発電協会は、長期見通しの中間シナリオにて、2030年までに6600万kWの導入目標を掲げている。
 2016年6月6日、欧州洋上風力連合結成とも言える動きがあった。9か国のエネルギ-担当大臣が、洋上風力に協力して取組む了解覚書にサインした。また、11のエネルギ-会社が共同歩調を取り、2025年までにkWh当たり8ユーロセントを切るとの声明にサインした(資料2)。年間400~700万kWの開発量を前提としている。ボルセラ沖事業の入札結果が発表されたのは6月5日である。欧州風力発電協会の会長は、「欧州は現在洋上風力市場の9割を占め世界をリードしているが、中国、アメリカが猛追してくる。事業量確保に全力を挙げなければならない。」と引き締めている。

(資料2)欧州11 エネルギ-事業者の共同宣言

(出所)The joint statement of 11 energy companies (6/6/2016)

 欧州卸市場の長期指標は6ユーロセント程度であるが、今後のコスト低下、風車の耐用年数25年を考慮に入れると、市場価格に追いつく目途は立ちつつある。
 日本も、事業者や自治体が主導する形で、大規模洋上風力発電所建設構想が各地で出てきている。多くの解決するべき課題が存在するが、既に欧州に手本があり、やるべきことは分っている。港湾行政は、海域管理等で具体的な動きを見せている。今後の政府の積極的なアクションを期待したい。