連載コラム 自然エネルギー・アップデート

2016年5月 自然エネルギーの割合が月間ベースで20%以上を達成 英語版

2016年9月8日 木村啓二 自然エネルギー財団 上級研究員

 日本では、電力に占める自然エネルギーの割合は長らく10%程度で、そのほとんどは水力が占めていた。しかし、固定価格買取制度のもと、自然エネルギーは着実に増加している。2015年度の年間発受電量に占める廃棄物・揚水発電をのぞいた自然エネルギーの割合は14%にまでなった。

 さらに、月間ベースでみると、2016年5月には自然エネルギー電力の割合がついに20%を超えて、約21%に達した(図1を参照)。つまり、単月ではあるものの、政府の長期エネルギー需給見通し(2015)で定められた、2030年の自然エネルギー目標22~24%に着実に近づいている。

 5月は年間の中で電力需要が低く、水力発電や太陽光発電の発電量が多い月である。一方で、とりわけ冬季は、暖房需要が増えるのに対して、水力発電の発電量が大幅に低下し、日射量も低下するため太陽光発電からの発電量も減るため、自然エネルギーの割合が低下する傾向にある。今後、冬季の自然エネルギーの割合を高めるために、冬に発電量が多くなる風力発電を増やしていくことが重要だ。


図1 発受電量に占める自然エネルギーの割合
注:自然エネルギーには、一般水力、太陽光、バイオエネルギー、風力、地熱を含み、廃棄物発電、揚水発電は含まない。
出所:経済産業省資源エネルギー庁「電力調査統計」より作成


 2016年5月の20%を超える自然エネルギーの供給内訳をみると、水力が11.5%を占め、次に太陽光発電が6.6%となっている(図2)。太陽光と風力を合わせるとその割合は7.4%に達している。太陽光と風力は、気象条件によって発電出力が変わる変動型の自然エネルギーだが、これだけ増えても系統運用上の問題は起きていない。


図2 2016年5月の発受電量内訳
出所:経済産業省資源エネルギー庁「電力調査統計」より作成

 さらに、1ヶ月単位ではなく、より細かい時間単位(例えば、1日、1時間単位)で考えると、変動型自然エネルギーの割合が非常に高くなる時間帯がでてくる。その際に、どのような系統運用で対応したのかを分析することが、今後、自然エネルギーの割合を高めるための重要な素材になる。

 例えば、九州電力は、2016年5月4日13時に、管内の太陽光および風力の発電出力が合計490万kWとなり、需要の66%を占めたと発表している ⅰ 。他の電源の発電状況の詳しいデータが公表されていないため、詳しい分析ができないものの、川内原発の稼働出力分や火力発電の最低出力分があるために、需要を超えた余剰の電力が発生し、その分を揚水発電により電力を消費することでバランスを取ったことが示されている。


図3 九州電力管内における2016年5月4日の需給状況の概念図
出所:九州電力(2016) 「再エネの導入状況と至近の需給状況について」

 揚水発電は、水をくみ上げるのに使った電力の7割程度分しか電力として取り出すことができず、実質的に3割の電力が失われる。つまり効率的な電力運用を考えるなら、揚水発電を用いる前に他の方法を探るべきである。例えば、原子力等のベースロード部分で動いている電源(火力の最低出力を除く)の出力抑制や、関門連系線を通じて、中国電力側に送電し、本州で使うのも有効である。しかし、電力広域的運営推進機関によると、太陽光発電が発電する4月および5月の作業時には、関門連系線の運用容量(中国電力向き)が他の月に比べて大幅に低く設定されている ⅱ 。このため、太陽光発電が多く発電する春先に、関門連系線の活用が抑制されている可能性がある。

 自然エネルギーをさらに系統に組み込んでいくためには、地域間連系線をより有効に活用できる、運用面の改善や増強などが必須である。


 ⅰ 九州電力 (2016) 「再エネの導入状況と至近の需給状況について」
 ⅱ 電力広域的運営推進機関 (2016) 「別冊 各連系線の運用容量算出方法・結果」第4回運用容量検討会 資料1−2。

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