連載コラム 自然エネルギー・アップデート

日本の自然エネルギーコストが安くなるのはいつなのか? 英語オリジナル

2017年5月12日 トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

 これまで、洋上風力発電はコストの高いものだった。化石燃料火力より高く、欧州で新設される原子力発電より高い場合もあった。しかしながら、昨年、欧州のいくつかの国では、洋上風力発電からの電力調達価格が急激に下落した。

 2016年7月のオランダ沿岸における洋上風力建設事業の入札では、デンマークの電力会社ドンエナジー社が、わずか70ユーロ/MWh(1ユーロ=124円の場合、8.7円/kWh)で落札した。当時の水準では極めて低い価格である。その2カ月後の9月には、同様の入札においてスウェーデンのヴァッテンフォール社がデンマーク西岸の発電事業を約60ユーロ/MWh(7.4円/kWh)で落札、さらにその2カ月後、同社はデンマーク東岸の事業を50ユーロ/MWh(6.2円/kWh)未満で落札した。

 2017年4月、ドイツでは同国北岸沖の地域を対象とする入札が終了した。このうち2カ所で最も安い価格で入札したのは、何としても他の発電所を打ち負かすべく、市場価格で電力を供給するとしたドンエナジー社だった。同社が想定する市場価格を特定するのは困難だが、今の市場の先物価格は30~40ユーロ/MWh程度である。

 日本から見れば、いずれも信じられないほど低い価格だ。現在、日本の洋上風力の固定買取価格はkWh当たり36円、つまり290ユーロ/MWhである。欧州の洋上風力発電が日本の20%未満のコストを実現できるのはなぜだろうか?

 理由は大きく3つある。欧州の電力系統所有者が、顧客への電力供給を行うために、新規発電事業者を支援する役割を担っていること。欧州の行政当局が、洋上風力に適した地域を積極的に見つけるよう指示されていること。さらに、欧州の洋上風力産業が、発電所の建設・運用において建設の効率化やスケールメリット活用の経験を重ね、急速に進歩していることである。

 一方、日本の状況はほぼ逆である。系統を所有するのは、コストの低い新規発電事業者との競争を好まない従来の発電所の所有者である。行政の規制は厳しく、利益が競合する可能性がある新規事業者は、予測できない障壁との戦いにさらされる。さらに、行政は投資を行う事業者による広範な事前調査を求めるが、法制度が不明確なため、結果は予測できない。

 最も重要なのは、風力発電産業の能力面である。日本の系統所有者と行政が生み出した特別なコストのせいで、日本の風力発電産業は、洋上風力の経験を積み能力を高める機会を効果的に阻まれ、洋上風力による電力供給コストを引き下げられないのだ。

 その結果、日本の電力消費者は低コストな電力の恩恵を受けられず、日本の産業界も、世界的に拡大する洋上風力新設市場で活躍する経験を重ねることができない。

 この状況は変わるかもしれない。実際、世界的な産業競争は、遅かれ早かれ、競争力と豊かさを保つために、日本にも低コスト電源の提供を強いることになるだろう。そのときが早く来ることを願いたい。

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