連載コラム 自然エネルギー・アップデート

日本のエネルギー対策が試される2020年東京オリンピック・パラリンピック 英語オリジナル

2015年5月15日 ショーン・マッカーシー OBE アクション・サステイナビリティ ディレクター
持続可能なロンドン2012委員会 元議長

*ショーン・マッカーシー氏には、2015年4月7日に東京で開催されたシンポジウム「東京はロンドンを超えられるか―より持続可能なオリンピックをめざして―」にメインゲストとしてご登壇いただきました。

先日の私の訪日にあたり、自然エネルギー財団の皆様には、周到な準備と滞在中のおもてなしに大変感謝している。日本では、政府の大臣や高官、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の幹部など、2020年東京大会の主要関係者と、いくつかの会合を行った。また、自然エネルギー財団とWWFが共催したシンポジウムには、ゲストスピーカーおよびパネリストとして出席した。

1960年代に幼少期、1970年代に青年期を過ごした私は、当時の日本の目覚ましい発展をよく覚えている。あの頃の私が夢中になって集めたのは、イギリス製オートバイだった。トライアンフ、ノートン、BSA。なかでもヴェロセットは大のお気に入りだった。いつか、ヴィンセントのブラックシャドウを手にしたい、そんな大きな夢を抱いていた(この夢は実現していないが、生きているうちに叶えられる可能性はまだある)。そこへ現れたのが、あのホンダ・ドリームCB750 FOURと、大型のカワサキZ1だ。オイル漏れや故障を起こさず、ものすごいスピードが出る、まるで別世界から来たようなオートバイである。こうした日本製オートバイの登場に、イギリスのオートバイ産業は撃沈した。さらにこの時期、トランジスタラジオ、ソニーのウォークマン、ビデオレコーダーといった画期的な日本製品が次々と誕生した。

1964年に開催された東京オリンピックを発端に、日本は素晴らしい技術と生産能力を備えた大国として世界に台頭した。2020年のオリンピック・パラリンピック開催は、停滞した日本経済を復活させる起爆剤として期待されている。私は、この大会は日本のクリーン・テクノロジーを盛大に披露する絶好の機会であると考えている。ただ、そのためには早急な行動が必要だ。オリンピック・パラリンピックの開幕は、もう5年先に迫っているからだ。

オリンピックは、莫大なエネルギーを消費するイベントである。2012年のロンドン大会は持続可能性において大きな成果を残したが、エネルギーに関して何か斬新なことを打ち出す機会とはならなかた。エネルギーをオリンピックに関連付けて考えると4つの課題がある。すなわち、エネルギー効率、送電網への電力供給、臨時電力、輸送である。

私がまとめたレポートで強調されているとおり、2012年のロンドン大会では、エネルギー効率の高い会場設計が採用されたが、大会中のエネルギー管理は不十分だった。東京では、遅くとも開幕の18カ月前までにエネルギーの運用計画を策定し、会場管理者に成すべきことを把握してもらうため十分な教育を施す必要がある。2020年までには、タブレット端末のアプリで各会場のエネルギー消費状況をリアルアイムで表示できるようになるだろう。そうなればきっと、すべての会場管理者が毎日タブレット画面を確認しながら、エネルギー消費の最小化に向けた対策をとることが可能になると信じている。

下のグラフに示されるとおり、日本の送電網における電源比率は、福島の大惨事をきっかけに劇的に変化した。



自然エネルギーの開発が遅れているのは明白である。そして、その遅れを取り戻し日本の技術力を示す好機となるのが、オリンピックであることは間違いない。風力・太陽光発電から、燃料電池、波力・潮汐発電まで、選択肢は無限に考えられるが、大切なのは今すぐ始めることだ。

3つ目の課題は臨時発電に関するものである。放送会社は100%信頼できるエネルギー供給を求めるため、よその送配電システムには頼らない。つまり、膨大な数の臨時発電機(通常はディーゼル)を絶えず稼働させ、バックアップとして送電網からの電力も確保する必要がある。ディーゼル発電機は起動するまでに数秒かかるため、送電網に問題が起こってから起動したのでは遅すぎるからだ。こうした臨時発電を管理するオリンピック放送機構は、電力の安定供給しか考えておらず、環境への配慮が欠けている。2012年のロンドン大会で用意された600台のディーゼル発電機(総導入量:270メガワット)は、会期中に何と400万リットルもの燃料を消費し、気候変動と大気質に影響を与えた。この規模の臨時発電が必要になると仮定すると、日本はこれから5年間で、ディーゼルに代わるよりクリーンな方法を見つけなければならない。水素燃料電池、蓄電技術、代替燃料などの利用が考えられる。

最後の課題は輸送である。物流面で成功を収めた2012年のロンドン大会では、河川輸送の展開に加えて、EVやBMW提供の低燃費車が活用された。当時、電気自動車の市場はまだ成長過程にあったからだ。しかし2020年までには、電気自動車100%が当たり前になるだろう。つまり、今から4,000台分の電気自動車の充電環境を整備する必要があるということだ。

今回、友人である経済人コー円卓会議の石田寛氏に空港まで送ってもらったのだが、皮肉なことに彼の車は、アメリカが生んだ革命的な電気自動車テスラだった。そろそろ日本からも、あのカワサキZ1に相当する電気自動車が登場していいはずである。