連載コラム ドイツエネルギー便り

これから必要なのはバッテリーの導入やインテリでフレキシブルな消費?

2016年7月5日 ツェルディック・野尻 紘子 ジャーナリスト 哲学博士

ドイツではこのごろよく「自然電力普及のための援助が必要だった時代は終わった。エネルギー転換は第二の段階に入った」と耳にする。

自然電力が総発電量の約3分の1を占めるようになったこの国では、普及の援助は確かにもう要らない。自然電力は増え続けており、電力は市場に溢れている。ただ、自然電力の発電量は天候に左右され、多い時と少ない時がある。今の所、少ない時は従来型の発電所で生産される電力で補充される。多過ぎる時は停電などの危険を防ぐために、火力発電の出力を縮小したり、電力を輸出に回したり、或いは風力発電設備を止めたり、太陽光パネルとの接続を切ったりしている。自然電力がこれ以上増えた場合にも電力の安定供給を保ち、また無駄を無くすためには、 余剰電力を一時的に蓄えるバッテリーの導入やインテリでフレキシブルな消費が不可欠になる。

ドイツ政府は以前からバッテリーの開発、普及に力を入れており、太陽光発電のパネルを屋根の上に設置した家庭などに数年前から、日中使い切れない余剰電力を家に設置した容量2~4kWh程度のバッテリーに蓄え、日没後に消費するよう奨励している。

将来、太陽が燦々と照る日に、広大なソーラーパークで発電された電力全量を送電網に送り込むと、周波数が保てなくなり、電力の安定供給に支障が発生するかもしれない。強い風の吹く日に、大きな風力発電ファームで発電された電力全量を送電網に送り込めば、やはり電力の安定供給に支障が生じるかもしれない。ドイツでは、そんな日のために発電設備にバッテリーを接続し、余剰電力を一時的にそこに蓄える業者が現れている。

そうして、日が陰った後や風が弱くなった時に、蓄えてあった電力を送電網に送り込むのだ。一定地域内の個々のバッテリーを接続して「バーチャル発電所」とする試みもある。容量が1MWhもある大規模バッテリーを建設し、自然電力のみを扱う「自然電力発電所」も登場している。

大企業などでは既に相当前から、需要を市場の状況に対応させて、電力を最大限能率的に消費しているところがある。例えば、電力が市場に溢れていて価格が下がっている時間帯には大量に生産を行う。これとは反対に電力が市場でやや不足気味で価格が上がっている時間帯には生産を縮小したり、むしろ代金を受け取って生産を中断したりすることもある。このようなフレキシブルでインテリな消費は経済的だし、電力の安定供給にも貢献する。

このようなフレキシブルな電力消費は一般家庭でも実現可能なはずだ。電力会社が家庭用の電力料金も細かく変動させるようになれば、消費者はそれに合わせて料金が安い時に洗濯や長時間かかる煮物をし、料金が高い時にはあまり電力を使わないようにして消費量を減らすといった具合だ。デジタル機能を持つスマート・メーターを導入すれば、電気料金に合わせて機器のスイッチが自動的に入るように設定もできるという。現在、ドイツ政府は世界の潮流にのるべく、スマート・メーターの導入を考えている。

他にも、個々の自然電力の発電情報や消費者の需要情報がデジタル化され交換可能になると、現時点では風が吹かず日の照らない日時のためのバックアップとして従来型の発電所で発電されている電力が、ずっと少なくて済むようになり、エネルギー転換が一歩進むという。


執筆者プロフィール
ツェルディック・
  野尻 紘子

(Zerdick Nojiri Hiroko)
ドイツ滞在合計で50年を超える。国際キリスト教大学卒。ベルリン自由大学哲学部博士号取得。元日本経済新聞記者。2011年夏、ドイ ツの脱原発や自然エネルギーの進展などを主に伝えるウェブサイト「みどりの1kWh - ドイツから風にのって」(midori1kWh.de)をジャーナリスト仲間らと立ち上げ、現在に至る。