連載コラム 自然エネルギー・アップデート

ドイツのエネルギー転換 過去5年間の電力部門での主な動向10点

2016年4月15日 一柳絵美 自然エネルギー財団 研究員

3月9日、ドイツのシンクタンク「アゴラ・エナギーヴェンデ」は、福島第一原発事故から5年を迎えるにあたり、ドイツのエネルギー転換のこれまでの成果を発表した ⅰ 。今回は、この発表の中から、エネルギー転換の電力部門における過去5年間の主な動向10点を紹介する(以下、アゴラ・エナギーヴェンデのプレスリリースより一部翻訳)。

1. 自然エネルギー
自然エネルギーによる発電量は、105TWhから196TWhへとほぼ倍増した。電力構成に占める割合では、16.6%から30.1%に上昇した。これにより、自然エネルギーはドイツ最大の発電源となった。その中でも、最も目覚ましい拡大を遂げたのは風力発電で、その発電量は2010年の37.8TWhから、2015年には倍以上の88TWhまで増加した。それに続くのは太陽光発電で、その発電量は11.7TWhからおよそ3倍の38.4TWhに達した。

図1 2015年ドイツの電源別発電量内訳(カッコ内は前年の値)
-自然エネルギーが最大の発電源

出典)エネルギーバランスのためのワーキンググループ(AGEB)2016.01.28更新版:
Bruttostromerzeugung in Deutschland ab 1990 nach Energieträgern”より筆者作成。

2. 原子力エネルギー
原発による発電量は141TWhから92TWhに減少した。電源構成に占める割合では、22.2%から14.1%まで下がった。2010年以降には、9基の原発が運転停止を迎えた。この中では、2015年6月に、グラーフェンラインフェルト原発が運転停止したばかりである。原発停止分を上回る電力量が、自然エネルギーの拡大によって補われている。

3. 化石エネルギー源
褐炭火力による発電量は6%増加し、石炭火力による発電量はおおよそ一定にとどまった。それに対して、天然ガス火力による発電量は同時期に大きく減少し、2015年には2010年比で、3分の1程度下がった。その原因は、EUにおけるCO2排出量取引価格が低いためである。排出量取引価格は、2010年から2015年の間に半減している。その結果、CO2排出量がより多い石炭火力発電所は、CO2排出量がより少ない天然ガス火力発電所と比べて、有利な状況となってしまっている。

4. エネルギー効率
2010年から2015年の間に、電力消費は2.5%ほど減少した。そして、エネルギー効率は上昇傾向にある。それでも現状のままでは、2020年までに2008年比で10%の電力消費を減らすというエネルギー転換の目標を達成するには十分ではない。

5. 電力輸出
諸外国との電力輸出入収支は3倍になり、今ではドイツ国内の発電量のうち、8%が輸出に充てられている。その原因は、ドイツの石炭火力発電が、とりわけオランダとオーストリアといった近隣諸国の天然ガス火力発電を押しのけているためだ。

図2 ドイツと近隣諸国の電力輸出入の状況(2015年)
-主な電力輸出先はオーストリア・オランダ・フランス

輸出:97.8TWh (2014年:76.5TWh)
輸入:36.9TWh (2014年:41.1TWh)
輸出超過分:60.9TWh (2014年:35.1TWh)

商業取引ベースの電力輸出入収支
(ENTSO-Eの2015年の数値に基づいて計算したもので、商業取引ベースの電力輸出入収支。物理的な電力の流れとは異なる。)

出典)アゴラ・エナギーヴェンデ2016.01:“The energy transition in the power sector: State of affairs 2015”, p.27

6. 自然エネルギーへの買い取り補償
自然エネルギーの発電コストの中には、過去5年間で劇的に下がったものがある。家屋の屋根設置用小型太陽光発電は、2010年には39.1ユーロセント/kWhでの買い取りが補償されていたが、2015年にはわずか約12.5ユーロセント/kWhとなり、68%減少した。また、風力発電については、9.6ユーロセント/kWhから8.7ユーロセント/kWhへと、ほぼ10%下がった。

7. エネルギーコスト
2015年の一般家庭のエネルギー料金は、2010年の水準を7.4%上回った。これは、エネルギー限定のインフレ率でいえば、1年当たり1.4%に相当する。また、エネルギー料金ごとに、異なる傾向がみられた。例えば、一般家庭の電力料金は過去5年間で約25%上昇した。一方で、一般家庭のエネルギーコストを考えるうえでより重要な燃料費は2%減少し、暖房用灯油代は10%減少した。電力料金は近年安定してきており、現在の燃料費は目に見えて前年の水準を下回っている。そのため、エネルギーコスト全体では、2016年におそらく再び2010年の水準まで落ちるだろうとみられている。

8. 供給安定
ドイツの電力供給の質は、世界的にみても大変高い。そのうえ2010年以降は更に向上している。電力消費者一軒あたりの年間平均停電時間は2010年には14.9分だったが、(現在入手可能なデータの中で最も新しい)2014年にはわずか12.3分となった。

9. 気候保護
ドイツの年間温室効果ガス排出量は2010年から2015年の間に3.5%減少し、今ではCO2換算で9億800万トンとなった。ただ、このような緩やかなペースのままでは、ドイツ政府が繰り返し強調している2020年に1990年比40%減少という気候保護の目標達成は難しい。2015年の段階では、27.2%減少に留まっている。この主な要因は、多くの石炭発電利用によって、2010年以降電力部門での排出量がほとんど減少していないことと、過去5年間に交通・農業部門からの排出量が増加したためである。

10. 市民の賛同
大部分の市民はこれまでと同様、エネルギー転換を支持している。2012年に初めて実施されたドイツ・エネルギー水道事業連盟(BDEW) ⅱ の年間エネルギー世論調査によれば、89%の調査対象者がエネルギー転換を“重要”もしくは“とても重要”と捉えていた。そして、その割合は2015年には90%だった。

図3 市民の賛同(2015年)
-太陽光・風力は市民からの高い支持を得ている一方、石炭に対する支持は最も低い
将来の主要なエネルギー源に対する世論(単位:%)
Q. 20年もしくは30年後、エネルギー供給はどのエネルギー源で賄われるべきか?

(zeit.deおよびphasenpruefer.deから引用したドイツ連邦報道局2015年のデータ)
出典)アゴラ・エナギーヴェンデ2016.01:“The energy transition in the power sector: State of affairs 2015”, p.44


 ⅰ アゴラ・エナギーヴェンデ2016.03.09:“Positive Energiewende-Bilanz fünf Jahre nach der Katastrophe von Fukushima(福島の大惨事から5年 エネルギー転換の前向きな成果)”、プレスリリース(ドイツ語のみ)
 ⅱ ドイツ・エネルギー水道事業連盟(BDEW)は、ドイツで電力、地域熱、天然ガス、飲料水の供給、下水処理等に関わる1800社以上の企業を会員にもつ利益団体。設立は2007年。
https://www.bdew.de/

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