連載コラム 自然エネルギー・アップデート

エネルギー政策の選択:「ポスト原子力」の電力をいかに担うか

2014年12月4日 大野輝之 自然エネルギー財団常務理事

選挙戦で最も争点になりそうなエネルギー政策は、原発再稼働の是非だ。原子力規制委員会もリスクが残ることを認めているのに、避難計画の実効性が疑われている状態では、再稼働に懸念を持つ人が多いのは当然だ。その是非は真剣に議論される必要がある。

しかし、もっと重要なのはその先の議論である。40年超の老朽原発は動かさないという原則を守れば、仮に申請中の20基全てが再稼働するようなことがあったとしても、2030年に原発が供給できるのは最大でも日本の電力の8%でしかない。しかも、この割合はその後、急減していく。

一方、原発の新増設はコスト的に成り立たない。英国は原発の新設を可能にするために、火力や風力発電などよりも高い1kWhあたり15.7円という価格保証を35年も行うことを決めた。どのように安全対策をほどこしてもリスクが残り、核廃棄物の処分先も決まらない原発を、価格保証までして作る政策を日本で支持する人はどれだけいるだろうか。

再稼働の有無にかかわらず、原発はもはや日本の基幹電源にはなりようがない。エネルギー政策の議論で重要なのは、「ポスト原発」の電力をいかに担うかである。

今日のように供給の9割近くを化石燃料に依存し続けるのは、エネルギー安全保障の観点から懸念が大きく、今後の燃料価格上昇が「国富流出」を更に悪化させることになる。

安価な電力を求めて国内では25基、合計1300万kWもの石炭火力新設計画が動いているが、全て稼働すれば東京都の排出総量を大きく上回る二酸化炭素が排出される。国際社会は、来年12月、パリで開催される地球温暖化対策の国際会議(COP21)で、新たな排出削減の枠組みづくりをめざしている。欧州連合が2030年までの40%削減を宣言し、米国と中国も排出削減に合意する中で、先進国の日本に大幅な排出削減が求められるのは確実だ。日本に、このような大量の石炭火力新設を許容する余地はない。
ではどうすべきか。

第一は、需給両面での効率化の推進だ。国内には原発50基分もの老朽火力がある。これらを高効率の天然ガス火力に更新すれば、燃料費を3分の2に減らし、二酸化炭素も削減できる。安定的な供給力の確保にもなる。

また需要面では、震災後すっかり定着した節電が、我慢も無理もなく、既に原発10基分の電力使用量の削減に成功している。ITの活用などで更なる節電も可能だ。

もう一つは、自然エネルギーを早く基幹電源にすることである。ドイツ、スペイン、イタリアは既に電力の30~50%以上を自然エネルギーで供給している。欧州全体では、2030年に、熱利用や自動車燃料も含め、自然エネルギーの割合を27%にするという目標を決めた。電力だけについて見れば45%にもなる高い目標だ。その背景の一つは、自然エネルギーのコストが急激に低下していることだ。主役の一つ、風力発電のコストは多くの国や地域で火力発電よりも安くなっている。

日本には化石燃料はないが、豊かな自然エネルギー資源がある。2年前に固定価格買取制度が始まって、ようやく日本でも太陽光発電を中心に本格的な導入が始まった。高かった価格の低下も進んでおり、来年には太陽光発電の発電単価は家庭の電気料金に等しくなる見込みだ。電力制度改革で送電網接続への障害を取り除けば、燃料費の殆どかからない純国産のエネルギーを電力供給の中核にすることができる。

いま必要なのは、退場していく過去の技術ではなく、日本の未来を豊かにするエネルギーの拡大を可能にする政策の選択だ。