連載コラム ドイツエネルギー便り

検証 ドイツの電気料金

2014年12月12日 一柳絵美 ベルリン自由大学環境政策研究センター 修士課程

ドイツの電気料金が、年々上昇していると議論になっている。事実、年間3500kWhの電力を消費する一般家庭の支払う電気代は2014年現在、平均84.96ユーロ(約11,900円)で、電力市場の自由化が始まった1998年の49.90ユーロ(約7,000円)と比較するとおよそ70%上昇した ⅰ 。そして、メディアでは、再生可能エネルギー促進のための賦課金の上昇に伴って、電気料金も吊り上がっているという論調が年々増えている。しかし、その実態を理解するためには、まず電気料金のしくみを知る必要がある。そこで今回は、ドイツの電気料金の構造や賦課金の動向を分析してみる。

ドイツ・エネルギー水道事業連盟(BDEW)によれば、ドイツの今年の家庭用電気料金は1kWhあたり平均29.13ユーロセント(約40.8円)。これは、日本の東電の電気料金29.93円と比較すると高い ⅱ 。ただ、ドイツの純粋な電力そのものの価格(発電・送電・小売等の費用)は、13.87ユーロセント(約19.4円)で電気料金の半分にも満たない ⅲ 

特筆すべきなのは、実に家庭用電気料金の半分以上が、税金や公的な負担金(租税公課)で構成されていることだ。主な内訳は、再生可能エネルギー促進のための賦課金が6.24ユーロセント、電力会社が事業を行うために地方自治体へ支払う課徴金が1.79ユーロセント、電力税が2.05ユーロセント、そしてこれらの負担分と前述の電力コストに上乗せされる付加価値税が4.65ユーロセントなどである ⅳ 。なお、電気料金上昇の根源だとされることが多い賦課金が電気料金全体に占める割合は、21.4%となっている ⅴ 

確かに、賦課金額はこれまで増加傾向にあった。再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)導入年の2000年には0.19ユーロセントであったのが、今年は6.24ユーロセントに達した ⅵ 。しかし、送電網運営会社の10月の発表によれば、これまで毎年上昇してきた賦課金額がついに来年初めて減少に転じ6.17ユーロセント(約8.6円)となることが分かった。ドイツのメディア各紙によれば、今年の賦課金額が少し高めに設定してあったため、徴収済みの賦課金が9月末の時点でまだ14億ユーロ(約2000億円)余っている分、来年の賦課金額を下げることができるのだという。この状況に対し、今年の夏のEEG改正を主導したガブリエル連邦経済・エネルギー相は、「初めての賦課金減少が示すのは、EEGによるこれまでのコスト上昇に、我々がうまく歯止めをかけたということだ。これによって、消費者の電気料金の安定化へと繋がる」と述べている ⅶ 。賦課金額が1kWhあたり0.07ユーロセント減少することで、一般家庭では賦課金の負担額が年間およそ2.45ユーロ(約350円)軽減される効果があると見られている。また、ドイツ全国再生可能エネルギー連盟(BEE)は、2017年までは賦課金額が一定に保たれ、今年の水準以上になることはないと予測している ⅷ 

さらに、電気料金など各種サービスの比較ができるウェブサイトを運営するチェック24(check24.de)によれば、11月の現時点で電力会社33社が、来年は電力料金を下げると予告しているそうだ。理由は、賦課金額の緩和に加え、自然エネルギーの発電の大幅な増加によって、電力取引市場での電力卸売価格がここ1年以内で10%ほど下落しているからだ。来年の家庭用電気料金は平均で2.4%下がり、多くの世帯がその恩恵を享受できる。これは、4人家族の電気料金が、年間35ユーロ(約4900円)下がることを意味する ⅸ 

それに加えて、12月初めには、ドイツ電力会社最大手のエーオン(E.ON)が、従来型の原子力・火力発電事業を別会社に切り離し、本社は再生可能エネルギー関連事業に重点をおく抜本的な事業改革を行うことを発表した ⅹ 。このように、ドイツでは自然エネルギーのコストが下がり、電気料金安定化の兆しが見えはじめると同時に、既存の電力市場の構造が変わってきているといえる。


 ⅰ BDEW 2014: „BDEW-Strompreisanalyse Juni 2014“, s.8
https://www.bdew.de/internet.nsf/id/20140702-pi-steuern-und-abgaben-am-strompreis-steigen-weiter-de/$file/140702%20BDEW%20Strompreisanalyse%202014%20Chartsatz.pdf
為替レート:1ユーロ=140円で計算。
 ⅱ 東京電力:第3段階料金(300kWh~/月)の適応時
http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/data/chargelist/chargelist01-j.html
 ⅲ BDEW 2014: s.6
 ⅳ BDEW 2014: s.7
 ⅴ BDEW 2014: s.11
 ⅵ Fraunhofer ISE 2014: „Kurzstudie zur historischen Entwicklung der EEG-Umlage“, s.2
http://www.ise.fraunhofer.de/de/downloads/pdf-files/data-nivc-/kurzstudie-zur-historischen-entwicklung-der-eeg-umlage.pdf
 ⅶ Bundesregierung 2014: „EEG-Umlage sinkt 2015“
http://www.bundesregierung.de/Content/DE/Artikel/2014/10/2014-10-15-eeg-umlage-2015.html
 ⅷ BEE 2014: „BEE-Hintergrundpapier zur EEG-Umlage 2015-2017“ s.2
http://bee-ev.de/Publikationen/20141015_BEE_Hintergrund_EEG-Umlage-2015.pdf
 ⅸ Die Welt 11.11.2014: „Für acht Millionen Haushalte sinkt der Strompreis“
http://www.welt.de/wirtschaft/article134222558/Fuer-acht-Millionen-Haushalte-sinkt-der-Strompreis.html
 ⅹ E.ON 2014: „Neue Konzernstrategie: E.ON konzentriert sich auf Erneuerbare Energien, Energienetze und Kundenlösungen und spaltet die Mehrheit an einer neuen, börsennotierten Gesellschaft für konventionelle Erzeugung, globalen Energiehandel und Exploration & Produktion ab“
http://www.eon.com/de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilungen/2014/11/30/new-corporate-strategy-eon-to-focus-on-renewables-distribution-networks-and-customer-solutions-and-to-spin-off-the-majority-of-a-new-publicly-listed-company-specializing-in-power-generation-global-energy-trading-and-exploration-and-production.html


執筆者プロフィール
一柳絵美
(いちやなぎ・えみ)
ドイツ在住歴計6年。2015年3月までドイツの大学院で環境マネジメントを学んだ。留学中、ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所やドイツ連邦環境省などでインターンシップを経験。現在、自然エネルギー財団研究員。