年頭コラム日本でも自然エネルギー3倍化への共同を

大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事

2024年1月1日

in English

 昨年12月、COP28では2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を現在の3倍にする目標が採択されました。今年、日本では、エネルギー基本計画の改正が行われます。新しい基本計画の中で、日本でも2030年までではないとしても、2035年よりも前に3倍化を実現する道筋を確立することが求められます。

 世界がこれからの7年間で3倍化という高い目標に合意した背景には、実際に自然エネルギー拡大が急速に進んでいる現実があります。特に目覚ましいのは太陽光発電です。パリ協定が成立した2015年の年間増加量は50GWでしたが、2022年には243GWが導入されました。2023年には400GWを超えたと見られます。国際エネルギー機関(IEA)が昨年9月に公表した報告書では、2030年代前半には毎年866GWが導入されると予測しています。もう一つの牽引役、洋上風力発電は昨年、インフレの影響により欧米で入札が成立しないなどの問題が生じましたが、欧州でも米国でも制度見直しにより、再度、開発が軌道に乗る展望が見えてきています。

 日本では太陽光発電導入量が2014、2015年に年10GWを記録した後、停滞し、現在は6GW程度に留まっています。太陽光発電導入のこれからのフロンティアの一つは、住宅・建築物・都市施設の屋上などへの設置、ルーフトップの活用です。新築住宅への搭載率はまだ10数%。ペロブスカイトの実用化を待つまでもなく、新築・準新築の建物での大きな設置可能性があります。また営農型や耕作放棄地を活用した太陽光発電開発で、農業と共存し維持強化にも貢献するプロジェクトが生まれています。洋上風力発電について昨年、財団が行った調査では、着床式で領海内に176GW、浮体式では領海+EEZ全体で952GWものポテンシャルがあることが明らかになりました。国際的に遜色のないセントラル方式の実現、浮体式プロジェクトの展開を可能にする仕組みと投資環境を整えることで、この巨大なポテンシャルを現実のものにすることができます。

 国の省庁の中には、真剣に自然エネルギー開発の促進に努力する多くの人々が存在していますが、COP28で化石燃料からの離脱が合意されても、石炭火力発電を延命するアンモニア混焼の推進を続けるなど、化石燃料への固執は根強く残っています。自然エネルギー電力の割合が、欧州各国にも、中国にも、オーストラリアにも大きく遅れ、米国にも遅れつつある現状を放置すれば、取引先から自然エネルギー利用を求められる半導体生産工場をはじめ多くの企業が日本での立地を断念する懸念が現実のものとなってしまいます。鉄鋼生産でも脱炭素・低炭素製鉄を行うためには、安価な自然エネルギー電力を大量に必要とします。化石燃料から自然エネルギーへの転換を加速するためには、極端に安い現在の日本の炭素価格を国際水準に近づけることも必要です。高い炭素価格が企業流出を招くというのは、過去の議論です。

 これから始まる第7次エネルギー基本計画の改定の議論の中で、自然エネルギー拡大とエネルギー効率化を大幅に加速する道筋を、送電網整備の加速も含め、確立していくことが必要です。気候変動イニシアティブが、昨年12月、多くの企業の賛同を得て国に求めた実効性のあるカーボンプライシングの実現も必要です。

 自然エネルギー財団では、自然エネルギー3倍化の展望をテーマに、まず1月17日に新春セミナーを開催し、3月14日には海外のスピーカーを招いてREvision2024を開催します。 様々な機会に、企業、自治体、NGO、そして国の省庁の人々とも建設的な議論を行い、日本のエネルギー転換の加速を目指していきます。

 本年もよろしくお願いいたします。  

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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