中国の電力消費量は1-3月に6.5%減少、火力が減って風力と太陽光が増える

王嘉陽 自然エネルギー財団 上級研究員

2020年6月12日


 新型コロナウイルスの影響を受けて、中国の2020年1-3月の電力消費量は前年同期から6.5%減少して1570TWh(テラワット時=10億キロワット時)にとどまった(図1)。中国電力連合会の推定によると、新型コロナウイルスの影響による減少は約170TWhあったと考えられる1。これは前年からの減少量(110TWh)と今年の増加見込量を合わせたものである。3月からロックダウン(都市封鎖)を解除したことで生産・社会活動が再開されて、4月の電力消費量はわずかだがプラス成長(前年比0.7%増)に戻った。2020年1-4月の合計では2127TWh(同4.7%減)である。

図1 中国の2020年と2019年の月別電力消費量(左)、増減率(右)
注:1-2月のデータは平均値のみ公表 TWh:テラワット時(=10億キロワット時)
出典:中国電力連合会1

 産業別に1-3月の電力消費量を見ると、第1次産業(農林水産業)は17TWhで前年から4%増加した。一方で電力消費量が圧倒的に多い第2次産業(製造業、建設業、鉱業、電力・熱・水道業)は997TWh(前年比8.8%減)に、第3次産業(運輸業、金融業、通信業など)は263TWh(同8.3%減)に落ち込んだ。ただし電信電話・データ通信、ソフトウェア、IT(情報技術)など、通信サービス関連産業の電力消費量は30~90%の大幅な伸びを記録した。
 
 3月以降のロックダウンの解除や生産活動の再開とともに、産業用の電力消費は徐々に回復している。4月には第1次産業が6TWh(前年比7.7%増)、第2次産業が390TWh(同1.3%増)、第3次産業が80TWh(同7.8%減)になり、特に第2次産業の需要回復が顕著で前年度の水準に戻った。

 家庭用の電力消費量は在宅勤務の拡大により、1-3月は前年比3.5%増の293TWhだった。都市部と農村部を分けると、都市部は0.6%減少し、農村部は8.9%増加した。都市部は暖冬による暖房用の電力需要の減少が主な要因と考えられる。農村部では出稼ぎ労働者が1月下旬の春節に帰省した後も地元に残った影響が大きいとみられる。ロックダウンの解除後も家庭用の電力消費量の増加傾向は衰えず、4月は前年比6.5%増の81TWhに拡大した。

火力の発電電力量が8.2%減少、風力・太陽光は10%以上も増加

 こうした状況の中、自然エネルギーの導入量は順調に増えている。中国全体の発電設備容量は2020年3月末で2024GW(ギガワット=100万キロワット)になり、2019年末と比べて14GW増加した。火力発電(バイオマス発電を含む)は7.0GW、水力発電は0.7GW、風力発電は2.4GW、太陽光発電は4.0GWの増加である(図2)。原子力発電の増減はない。発電設備容量に占める自然エネルギー(バイオマス発電を除く)の比率は38.4%になった。
 
図2 燃料別の発電設備容量の増減(2020年1-3月)
注:火力発電にバイオマス発電を含む GW:ギガワット(100万キロワット)
出典:中国電力連合会234

 発電設備容量が増加したにもかかわらず、2020年1-3月の発電電力量は前年同期から6.1%減少して1617TWhだった。火力発電が104.9TWh(前年比-8.2%)減少したほか、水力発電も20.6TWh(同-9.5%)減少した(図3)。原子力発電は0.9TWh(同1.2%)の微増だった。これに対して風力発電は10.8TWh(同10.4%)、太陽光発電は8.8TWh(同19.9%)増加した。風力と太陽光の拡大によって、自然エネルギーの発電電力量(バイオマス発電を除く)は全体の22.5%を占めて、前年同期から1.3ポイント上昇した。
 
図3 燃料別の発電電力量の増減(2020年1-3月、前年同期比)
注:火力発電にバイオマス発電を含む TWh:テラワット時(=10億キロワット時)
出典:中国電力連合会234

 中国では自然エネルギーと原子力を対象にした低炭素電源優先原則がある。電力需要の増減に合わせて、自然エネルギーと原子力の電力を優先的に供給するルールになっている。2020年1-3月に自然エネルギーの発電電力量が増加した大きな要因は、低炭素電源優先原則によって、固定価格買取制度で買い取られた風力・太陽光発電の電力が最大限に供給されたことである。

 この原則により、電力需要が減少すると火力発電の比率は低下する。2020年1-3月の発電電力量に占める火力の比率は72.7%で、前年同期から1.6ポイント低下した。中国では発電電力量あたりの石炭消費量(gce:gram of standard coal equivalent、標準石炭グラム)をエネルギー消費強度として公表している。2020年1-3月のエネルギー消費強度は293.4gce/kWh(キロワット時)になり、前年比で1.7%(5.0gce/kWh)減少した2

 とはいえ4月からは電力需要の回復に伴って発電電力量が増加して、4月単月では前年比0.3%増のプラス成長に戻った。さらに5月前半は同5.6%と増加ペースが上がっている5。石炭火力の発電電力量も4月後半と比べて5月前半は3.8%増えている6。火力発電、とりわけ石炭火力の増加は、電源構成の低炭素化の遅れとともに、中国で深刻な問題になっている大気汚染の拡大につながる恐れがある。新型コロナウイルスからの経済回復と環境保全を両立させることは、中国にとって難しい課題である。引き続き自然エネルギーの導入拡大に取り組む必要がある。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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