2019年中国電力部門の低炭素化の動向自然エネルギー発電設備容量は全体の4割まで拡大

王嘉陽 自然エネルギー財団 上級研究員

2020年4月15日


 2019年、中国の電力部門の低炭素化はさらに進んでいる。2019年の総発電設備容量は、前年比で5.8%増の2,011GWとなり、初めて2,000GWを超えた。そのうち、自然エネルギーの設備容量は794GWと全体の39.5%を占めた。また、総発電電力量は前年比で4.7%増の7,325TWhとなり1、自然エネルギーの発電量は約2,040TWhで全体の27.9%を占めた2。出力抑制問題も改善されてきている。
 
 中国では電力の低炭素化がさらに進んでいる。2019年に、自然エネルギー発電設備の容量は64.7GW増え、前年比約9%増の794GWとなり、全体の39.5%、約4割を占めている。そのうち、水力発電は356.4GW(17.7%)、風力発電は210.1GW(10.5%)、太陽光発電は204.7GW(10.2%)、バイオマス発電は22.5GW(1.1%)である2。固定価格買取制度の導入は、風力が太陽光に先駆けたが、今は太陽光も同等の規模まで増加してきている。2019年に新しく増加した発電設備容量の内訳(図2)を見ると、自然エネルギーの新設容量(64.7GW)は火力の新設容量(41.2GW)を上回り、全体の半分以上を占めている。
 
 
出所:中国電力連合会(2020a,2020b)にもとづき自然エネルギー財団作成


 中国では、自然エネルギー発電が大量導入されるにしたがい、出力抑制問題が深刻になっていたが、広域的な電力供給の調整や、域内(省内)発電設備の改造や活用によって、抑制率が劇的に改善してきている。

 全体でみると、2019年の出力抑制率は、風力発電は4%(抑制電力量で約16.9TWh)で、前年比で3%減少、太陽光発電が2%(抑制電力量で約4.6 TWh)で、前年比で1%減少している2。ただし、甘粛省、内モンゴル自治区、新疆ウィグル自治区などの西北地域では、依然として出力抑制率が高く、5%以上の地域が多く存在している。特に、チベット自治区の太陽光発電の年間出力抑制率は今回初めて公表されたが、24.1%という高い値であった。これらの地域では出力抑制の減少のための取組として、各地域の地方政府による出力抑制コントロール目標の設定や、自然エネルギー電力の優先送電などが実施されている3
 
図3 中国再生可能エネルギー発電の出力抑制率の変化
出所:国家エネルギー局(国家能源局)公表データにもとづき自然エネルギー財団作成


 2019年の自然エネルギーの総発電電力量は2,040TWhで、前年比176.1TWh増加、全体の27.9%となった。火力発電による発電電力量は67%を占めているが、新規に増加した発電電力量でみると(図5)、火力発電によるものは約3割で、増加した発電量の半分以上は、水力、風力、太陽光、バイオエネルギーなどの自然エネルギー発電によるものである2

 また、図6に示したように、水力発電と太陽光発電設備の年間平均発電時間がそれぞれ119時間と54時間と増加し、3,726時間と1,169時間になった。一方で、火力発電の年間平均発電時間は85時間減らして4,293時間だった1。今後、中国では、多くの火力発電が、自然エネルギーのための調整電源と位置付けられていくことが予測されている。

 
出所:中国電力連合会(2020a,2020b)にもとづき自然エネルギー財団作成
 
 
図6 2019年と2018年の電源別の年間平均発電時間
出所:中国電力連合会(2020a)にもとづき自然エネルギー財団作成


 広東省は、2020年2月に、2021年までに10GWの洋上風力発電を導入するという計画を発表した4。また、江蘇省では、3月に、中国で初めて外国企業と合同で洋上風力発電を開発するプロジェクト(502MW)が発表された5。これからは、中国の沿海地域の洋上風力発電が続々と開発される予定である。そして、電力市場の自由化やスマートグリッドの強化により、都市部の分散型自然エネルギーの普及がより容易になると予測されている。

 中国の電力部門低炭素化の本格始動はいよいよこれからだ。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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