自然エネルギーの新たな拡大の10年が始まる

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

2020年1月10日

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自然エネルギー発電の導入において先進国であるドイツでは、自然エネルギー発電量が2019年に初めて石炭を上回った。風力発電だけで褐炭による発電量を超えた。この10年間で自然エネルギー電力は137 TWh増加し、消費電力量に占める割合が17%から42%に増えた。また2019年の化石燃料による発電量は100 TWh近く、原子力は65 TWh減少したのに対し、電力純輸出量は22 TWhから37 TWhに増加した。

最終的な国際統計はまだ公表されていないが、世界全体で化石燃料による発電量は増加しなかったようだ。2019年9月末時点で、ドイツにおける化石燃料による発電量の減少は、中国とインドを合わせた化石燃料による発電量の増加を補って余りあるほどとなった。加えて、米国における化石燃料による発電量は50 TWh減少した。

世界の原子力業界においては、2019年には発電量は増加したものの、2006年のピーク発電量には及ばなかった。米国、ロシア、台湾、日本、スウェーデン、スイスそしてドイツで老朽化した原子炉が次々に永久閉鎖された一方で、新設された原子炉が系統に接続されたのはロシア、中国、韓国だけとなった。

原子炉の新設プロジェクトはさらに数が少なく、中国、ロシアとイランでそれぞれ建設が始まったにすぎない。最も注目すべきは中国で、新たな原発プロジェクトが同国で開始されるのは、2016年以来初めてのことだ。世界の他の地域と同様に、中国でも原子力発電はコストの低い自然エネルギー電力との価格競争に直面している。

風力や太陽光の発電コストが15~20 米ドル/MWhとなっている国も見受けられる。欧州では、新規の太陽光や風力発電所は助成金なしで建設することができることから、30~45 米ドル/MWhで供給される既存の化石燃料および原子力発電と比べても、明らかに競争優位性をもっている。

このような太陽光や風力発電の発電コストは、化石燃料由来の電力より安価なだけでなく、エネルギー原単位という側面から見ても、石油やしばしば天然ガスよりも安く、他分野でも石油やガスの代わりに電力が用いられるようになってきた。

輸送分野では、電気自動車や電気バスが市場シェアを伸ばしている。ノルウェーでは、1か月に販売される自動車の半分以上が電気のみで走る電気自動車となる月もある。フォルクスワーゲンは2025年までに電気自動車を150万台販売する目標を掲げている。

大気汚染が問題となっている地域では、電化は一層決定的である。中国の深圳市内のバスはすべてEVに置き換えられ、電気バスは世界中で市場シェアを広げつつある。

今後10年間、自然エネルギー電力のみならず、バッテリーや電解槽もますますコストが下がるであろう。

電気自動車や日常的な蓄電に利用する低コストのバッテリーの役割はよく知られている。電解槽は、電気と水から水素を製造するのに使用する。水素は化石燃料の代わりに直接使用するか、後に使用するために貯蔵するか、化石燃料の代わりに他の気体・液体燃料に転換する。

自然エネルギー電力のコストが平均で1セント/kWh近くまで下落しつつある中で、燃料製造に必要な設備へのアクセスが重要になってくる。
2020年代の終わりまでには、自然エネルギー電力は発電量の大半を占めるようになるだけでなく、バッテリー式電気自動車が輸送分野では主流となり、電力から製造する燃料が産業燃料として供給され、季節単位のエネルギー貯蔵が提供できるようになるだろう。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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