年頭コラム2020年、気候危機を回避する展望をひらく年へ

大野輝之 自然エネルギー財団 常務理事

2020年1月1日

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 昨年末から、かつてない規模の森林火災がオーストラリアを襲っています。東南部のニューサウスウェールズ州だけでも、消失面積は3万平方キロメートルに達しました。これは日本の首都圏1都3県の2倍以上の面積です。

 2019年は、オーストラリアだけではなく世界各地で、熱波、山火事、干ばつ、洪水などの異常気象が多発し、日本でも台風15号と19号が広範な地域に大きな被害をもたらしました。気候変動の影響は、いまや「気候危機」という言葉で表現されるようになっています。

 IPCCの1.5℃報告書は、2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにする必要があるとしましたが、注目すべきなのは、同時に、2030年までに排出量の半減が必要だと指摘していることです。大幅削減は、30年後の将来ではなく、いま直ちに求められるのです。世界の科学者のこうした警鐘にもかかわらず、2015年のパリ協定成立から4年たった昨年も、世界の二酸化炭素排出量は依然として増加を続けました。

 今年からパリ協定は実施段階に入ります。2020年こそは、気候危機回避にむけ確かな前進を開始し、2030年までの大幅削減の道筋を明らかにする年にしなければなりません。

 いま世界で二酸化炭素排出削減の中心的な手段となっているのは、エネルギー効率化とともに、多くの地域で火力発電より安価になった自然エネルギーへの転換です。

 日本でも太陽光発電のコストは、まもなく天然ガス火力を下回り、2020年代なかばには、石炭火力よりも安価になると予測されています。立ち遅れていた風力発電の導入も、大規模な洋上風力発電プロジェクトが次々に発表されるなど、大規模な展開が見込まれるようになってきました。陸上・洋上をあわせ3000万kW以上の開発が環境アセスメント段階にあります。また需要側でも、RE100企業が30社に達するなど、自然エネルギー電力利用を求める声が高まっています。IPCCが求めるレベルでの大幅な排出削減を進めるためには、こうした動きを更に加速することが必要です。

 一方、政府は天然ガス火力の2倍以上の二酸化炭素を排出する石炭火力を、「世界の温暖化対策に貢献する」と称して、国内でも海外でも依然として推進しようとしています。一部の電力会社などもこれに加担していますが、未来のない技術に執着するビジネスモデルが遠からず破綻に追い込まれることは確実です。

 洋上風力発電を始めとする自然エネルギー拡大を加速することは、二酸化炭素排出削減に貢献するだけでなく、アジア各国にも展開できる日本の新たな成長産業を創出する意義もあります。

 自然エネルギー財団は、脱炭素化へエネルギー転換が進む世界の最前線の動きを紹介し、日本での展望を議論するため、本年1月31日に「RE-Usersサミット2020」を、3月4日に「REvision2020」を開催します。また2030年、2050年へのエネルギー転換の展望と政策提言を公表する予定です。更に企業、自治体など非政府アクターのネットワーク「気候変動イニシアティブ」の活動を、CDPジャパン、WWFジャパンとともに事務局として積極的にサポートしていきます。

 本年も自然エネルギー財団の活動にご注目いただき、ご参加・ご協力いただけることをお願い申し上げます。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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