競争力を失う原子力発電世界各国で自然エネルギーが優位に

2019年1月23日

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公益財団法人 自然エネルギー財団は本日、報告書「競争力を失う原子力発電:世界各国で自然エネルギーが優位に」を公表いたしました。
 
気候変動の抑制に向けて、世界各国が脱炭素に向けた取り組みを加速させる状況にあって、原子力発電の競争力は急速に失われています。原子力発電を脱炭素の手段として位置づける動きが日本を含む一部の国で見られるものの、全世界の発電電力量に占める原子力の比率は下がり続け、2017年には10%まで低下しました。一方で自然エネルギーの比率は2倍以上の24%に達しています。
 
本報告書では国際機関などのデータをもとに、原子力発電の現状と今後の可能性について検証しました。世界の主要な国の動向を個別に確認した結果、どの国においても原子力発電が脱炭素の有力な手段として拡大する状況にないことが明らかになりました。原子力発電の段階的撤廃を進めるドイツ、大幅な削減目標を打ち出したフランス、さらに米国や日本ではコストの増加を理由に運転を終了する動きが相次いでいます。原子力発電を拡大している中国やインドでも、自然エネルギーの増加が上回り、原子力発電の占める比率は2~4%程度にとどまっています。新たな原子力発電所の建設プロジェクトも頭打ちの状態です。
 
原子力発電が競争力を失った要因は主に3つあります。第1に安全対策の実施や建設期間の延長によってコストが増加していること、第2に燃料の利用効率や安全性を高めるための技術革新が進展していないこと、第3に最大の課題である放射性廃棄物の処分が各国で停滞していることです。急増する自然エネルギーと組み合わせて使う電源として柔軟性に欠けるため、電力市場における経済価値も著しく低下しつつあります。加えて地震や異常気象、機器の故障による運転停止が頻繁に発生するようになり、電力の安定供給に大きな影響を及ぼし始めています。全世界で運転中の原子力発電所の運転期間は平均で30年に達しており、老朽化に伴って今後さらに廃止の動きが広がることは確実です。 <目次>
エグゼクティブ・サマリー
はじめに
第1章:岐路に立つ原子力発電
 1-1.世界全体で規模縮小:脱炭素の主力にならず
 1-2.主要各国の現実:原子力に厳しい未来
 (a)原子力発電の撤廃・削減に動く
    ~ドイツ、ベルギー、スイス、韓国、フランス~
 (b)必然的に原子力発電が減少
   ~米国、日本、カナダ、英国、スウェーデン~
 (c)原子力よりも自然エネルギーが拡大
   ~中国、インド、UAE、サウジアラビア~
第2章:原子力発電が直面する課題
 2-1.コスト競争力が世界各国で低下
 (a)既設の原子力発電所
 (b)新設の原子力発電所
 (c)原子力発電の賠償責任
 2-2.技術面で克服すべき難問が山積
 (a)普及しない新世代の原子炉
 (b)原子力発電に問われる柔軟性
 (c)崩れ始めた原子力発電の安定性
 2-3.進まない廃炉と放射性廃棄物の処分
 (a)廃炉に必要な多額の費用と複雑な作業
 (b)使用済み核燃料と放射性廃棄物の処分
おわりに

お問合せ

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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