自然エネルギー2030年度目標に10年早く近接

ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団 上級研究員

2021年7月2日

in English

  経済産業省が発表した速報値によると、自家発電を除いた発電構成に占める自然エネルギーの割合は、2020年度には23%に達しています。このデータは、日本がもっと野心的な自然エネルギー目標をめざすべきことを示唆しています。

 2020年度の日本の発電量に占める自然エネルギー割合は、データのない自家発電を除くと、23%に達しています。これは、2030年度の目標値である22〜24%のちょうど真ん中に位置します。自家発電の多くが化石燃料を使用しているため、今後、自家発電データを含めることができるようになれば、自然エネルギーの割合は若干減少すると見込まれます。

 それでも、この23%という数字は、日本が世界の国々と同じように新しい機会を利用することができることを示しています。日本がカーボンニュートラルへの道を切り開くためには、より野心的な自然エネルギーの目標と、より先見性のあるアプローチが必要です。
 
 
2020年度の発電量割合 (%)
注:揚水発電は、自然エネルギーではないが、政府の2030年度目標には、自然エネルギーとして含まれている(水力発電とは別に表示)。廃棄物の自然エネルギーの割合は区分できないため、廃棄物のみに含まれる(バイオマスには含まない)。自家発電は含まれていない。
出典:経済産業省電力調査統計(2021年6月30日ダウンロード)。

 2050年CO2実質排出ゼロをめざす政策の中心は、低コストの脱炭素電力であるべきです。福島第一原子力発電所の事故から過去10年間の経験により、自然エネルギー、特に太陽光発電は短期間で急速に拡大できることが実証されました。実際のところ、自然エネルギーの導入実績は、政府の目標速度をはるかに上回っています。

 日本には、いまだ、電力系統接続への障害、補償ぬきの出力抑制、農地の不合理な利用規制、長期にわたる環境影響評価制度など、自然エネルギーの拡大を困難にする幾多の問題がありますが、その中でも、政府目標を上回る導入が実現されました。

 これに比べて、同じ時期に、原子力発電は安全性への懸念、電力会社の不祥事など、様々な問題のために、再稼働が進みませんでした。国の総発電量に占める割合は2020年度には4%未満まで減少しました。原子力発電が2030年度の目標である20-22%が達成できないことは明らかです。

 脱炭素電力の担い手として、原子力発電はもはや自然エネルギーの競争相手にはなりません。

 この成果を踏まえ、いま政府に求められるのは、野心的な自然エネルギー導入をめざし、エネルギーシステムへの統合に向けて必要な対応を進めることです。政府は、2050年に自然エネルギー電力を50~60%にとどめる案を「参考値」として提示していますが、このような低い目標にしなければならない客観的な理由はありません。

 太陽光発電、風力発電という変動型自然エネルギーを電力系統に安定的に統合するためのソリューションには、需要と供給の両方の柔軟性、エネルギー貯蔵、ネットワークの強化と拡張など、様々なオプションがあります。

 日本の状況に合わせてこれらのオプションを組み合わせ、最適なソリューションを見出すことは、簡単な作業ではありませんが、海外における、また日本における先駆的な経験を踏まえれば、かならず解決できるものです。いま、大切なのは、自然エネルギーの最大限の活用をめざし、高い目標を設定するとともに、革新的な考え方で問題解決に取り組むことです。

 日本の状況に合わせてこれらのオプションを組み合わせ、最適なソリューションを見出すことは、簡単な作業ではありませんが、海外における、また日本における先駆的な経験を踏まえれば、かならず解決できるものです。いま、大切なのは、自然エネルギーの最大限の活用をめざし、高い目標を設定するとともに、革新的な考え方で問題解決に取り組むことです。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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