自然エネルギー財団プレスリリース
「少なくとも30%以上の自然エネルギー目標を」 2015年4月28日

 経済産業省は、4月28日に開催された「長期エネルギー需給見通し小委員会」において、2030年の「エネルギーミックス」(電源構成)について、自然エネルギーを22~24%に抑えながら、二酸化炭素排出量の多い石炭・石油火力を29%とし、原子力を20~22%とする案を提示した。
 この経産省案は、福島原発事故を踏まえて、安全で安心なエネルギーシステムへの転換を願う圧倒的多数の国民の願いに背くものであり、気候変動の危機回避に向けた世界各国の努力を損なうものである。

少なくとも30%以上の自然エネルギー導入が必要

 欧米の先進諸国や地域では、原子力政策の如何にかかわらず、2030年には自然エネルギーによって40%以上の電力を供給する目標が掲げられている。今回の経産省案は、こうした「先進国標準」からまったくかけ離れた後ろ向きの目標である。
 日本でも、固定価格買取制度導入以降、自然エネルギーは大きな伸びをみせている。2014年度は、水力含め、前年度より1.5%増加し12%を超える見込みであり、2030年に30%以上の導入は充分可能である。また省エネルギーを徹底すれば、自然エネルギーで電力需要の45%程度をカバーすることもできる。少なくとも30%以上の導入を目標とすべきである。

石炭発電への依存を大幅に減らし、気候変動対策への国際的責務を果たすべき

 火力発電の中でも二酸化炭素排出量が多い石炭発電などを大きな割合で維持することは、気候変動対策に向けた世界各国の努力に反するものである。米国やイギリスなどの先進各国では、石炭火力の新設を事実上不可能にする規制を導入するだけでなく、既存の石炭火力も削減する政策を強力に進めている。
 二酸化炭素削減を理由に原発の必要性を唱えながら、一方で石炭火力の維持・新増設政策を進めるのは、気候変動対策に対する真剣度を疑わせる。石炭や石油への依存を大幅に減らし、化石燃料のなかでは、最も二酸化炭素排出の少ない高効率の天然ガス発電とコージェネレーションを中心とするべきである。

国民の声を踏まえたエネルギーミックスを

 「長期エネルギー需給見通し小委員会」に経済産業省が提出する資料は、先進国で原子力発電が減少している事実にふれず、石炭火力の優位性を強調する一方で、世界での自然エネルギーのここ数年の大幅なコストダウンや、導入の加速(太陽光・風力共に 2014年に約5000万kWの導入)に関するデータは紹介しないという、一面的なものである。また経産省が行った電源別コストの試算は、2030年時点での自然エネルギーコストの中で政策経費を過大に見積もるなど、「自然エネルギーが割高」という結論ありきの恣意的なものと言わざるを得ない。
 多くの世論調査によって、国民の6割程度が原子力の再稼働にも反対していることが明らかな中で、2030年の時点においても、なお原発によって20~22%もの電力供給をめざし、自然エネルギー目標を低く抑えるのは、経産省案が、国民の声にまったく耳を傾けていないことの端的な現れである。
 政府は、世界で起きているエネルギー転換の流れを直視し、国民の声を踏まえ、省エネルギーの徹底とともに、少なくとも30%以上の自然エネルギーの導入をめざすエネルギーミックスを定めるべきである。

全文 「少なくとも30%以上の自然エネルギー目標を」 (0.4MB)

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