連載コラム 自然エネルギー・アップデート

2015年:ドイツの風力発電にとって重要な一年だった 英語オリジナル

2016年3月3日 クレイグ・モリス Renewables International 編集者 および
EnergyTransition.de 筆頭執筆者

 太陽光は年間最低導入目標に到達しなかった。バイオエネルギーもこれまでほど開発されなかった。これが昨年ドイツで起きたことだ。しかし、風力発電は、陸上風力、洋上風力、総発電量の三つで大きく伸びた。風が吹いた年だったのだ。

 2015年、電力供給に占める自然エネルギーの割合は6%増加し、電力需要の33%、総発電量の30%に達した。この2つの数値の差が電力輸出分で、これも最高記録を更新した。今やドイツの発電量の10分の1は輸出向けなのだ。



 実際には、この成果はすべて風力発電がもたらしたものである。バイオガス設備はほとんど新設されず100 MW(10万kW)という控えめな目標の約半分を達成しただけ、太陽光も最低導入目標の1.5 GWを下回り、1,370 MW(137万kW)から1,476 MW(147.6万kW)を達成しただけだ(データは暫定値。詳細はこちらを参照)。しかし、風力は、新設が過去2番目に多い年となり、2002年の3.2 GW(320万kW)より多い3.5 GW(350万kW)だった。ただし、2014年の4.4 GW(440万kW)という記録には及ばなかった。

 洋上風力については、昨年もドイツは新設量でトップだったが、実際の発電量は1.3%に留まる。新設された洋上風力のほとんどが、2014年に建設されているのに、まだ送電網に接続されていないからだ。しかし洋上風力は、2010年代後半にも大きな成長が続くと予想される。公式の目標値は2020年までに6.5 GW(650万kW)だが、7.7 GW(750万kW)に上方修正される可能性がある。現在ドイツの洋上風力の導入量は2.3 GW(230万kW)にすぎない。

 陸上風力も、今年も大きく伸び続けると予想されているが、こんな状況もすぐに終わるかもしれない。ドイツは、固定価格買取制度から入札制度へと移行しつつあり、入札枠でコントロールすれば、自然エネルギー電力が2025年までに電力供給の45%を占めるという目標値を越えるのを防ぐことができるからだ。昨年一年間で、国内電力需要に占める自然エネルギーの割合は6パーセント近く伸びたが、今後十年間は、年最大1.2%の伸びに留めておかなくてはならなくなる。入札制度は、ドイツ政府が自然エネルギーの急激な進展を遅らせるための政策なのだ。



 政府は、2020年の二酸化炭素の削減目標が達成できそうにないという状況なのに、どうしてこんなことをするのだろうか。理由は、電力業界の財務が大混乱状態にあるからだ。従来型の発電設備が、急速に回収不能コスト化しつつある。それに、ドイツは、例えば最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの割合などの目標値で、また軌道に戻ることができるかもしれないということも理由かもしれない。昨年、自然エネルギー電力の伸びが著しかった一方、温暖であったおかげで、最終エネルギー消費の20%という目標は、運輸部門と熱部門で自然エネルギーが伸びれば、到達できそうな目標である。



 ドイツの「エナギ−ヴェンデ」(Energiewende、エネルギー転換政策)は岐路に立っている。自然エネルギーが目標値を越えて伸びていく(予想以上に速く成長する)時代は終わろうとしている。政府の政策が、終わらせようとしている。問題は技術的なものではなく、経済的なものにある。つまり、従来型の発電所の損失をどう負担するのか、炭鉱からのダイベストメント(投資の撤退)の費用や、特に影響を受ける労働者や地域社会に関する費用をどう賄うかということにある。ドイツの送電網の信頼性は上がっていて、2014年(データが入手可能な最新年)の停止時間は平均わずか12分だった。そして、ポーランドへの計画外の電力潮流(ループフロー)に関する論争さえ、異なる様相を呈してきた。ポーランド国民は、ドイツから流れ込んでくる電力への依存度を高めているようなのだ。

 つまり、蓄電や送電網の安定性、不安定な風力および太陽光などの、技術的な議論に重きを置くべきではないということが、最も重要な教訓だろう。特に、従来型発電所の早期閉鎖は、蓄電池技術の一般化よりも前に起こる。技術者が究極の蓄電手段を見つける前に、政策決定者は、まず、石炭火力発電を持つ大手電力企業とつながりのある炭鉱労働者や公営電力会社への打撃を和らげる方策を示す必要があるのだ。

 しかし当面は、脱原発の一環として1基目の原子力発電所が停止した年に、2003年比で石炭が減少し、原子力が減少し、自然エネルギーが増加したことを示す下表の統計を祝ってもよいだろう。


クレイグ・モリス(@PPchef)は、ドイツのエネルギー転換の筆頭著者。彼はPETIT PLANETEの代表を務める傍ら、Renewables Internationalを毎平日執筆している。

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