連載コラム 自然エネルギー・アップデート

自然エネルギー建設には多くの土地が必要?―どれだけ賢いかにかかっている! 英語オリジナル

2015年9月3日 トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

太陽光発電は地面に太陽電池パネルを設置して発電される。日本やドイツの平均発電量は、1平方メートルあたりで年間0.1MWh(100kWh)程度だ。この計算によれば、日本の年間電力消費量約1,000TWh(1兆kWh)を賄うために必要な面積は、日本全土の2〜3%程度ということになる。

そして、原子力が日本で発電していた年間約300TWh(約3000億kWh)を、もし地面設置の太陽電池パネルだけで発電するとして必要な面積は、日本のゴルフ場の総面積とほぼ同じになる。

しかし、太陽電池パネルは、建物の屋根にも設置することができる。駐車場の屋根や、建物の東西南側の外壁にもできる。線路・道路の遮音壁や、線路・高速道路等の日よけ屋根にもできる。他の用途で使われている場所に、その用途を邪魔することなくパネルを設置できるのだ。


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実際の使用例を見ると、建物の建材として二重の役割を果たし、他に用途のない安価な土地に設置され、むしろ農地よりも利益をもたらしていることもある。

どんな国でも、土地不足のせいで太陽光発電の拡大が制限されることはない。

バイオエネルギーも同じだ。知識のない人は、バイオエネルギーはエネルギー生産のために植えた作物からつくると誤解している。平方キロメートルあたりのバイオマス生産量を計算し、バイオエネルギーの1/3を電気に変換できると仮定し、化石燃料や原子力を代替するには、莫大な面積が必要だと結論づけたりする。

しかし、経済競争力のあるバイオエネルギーシステムは、そのような設計にはなっていない。農業、食品産業、林業や森林産業からの廃棄物や残留物などを、最低コストのバイオマスとして利用できるからだ。

スウェーデン人一人あたりのバイオエネルギー使用量は、中国人一人あたりの石炭使用量とほぼ同じである。それでも、バイオエネルギー用の作物だけを生産するプランテーションは実質存在しない。代わりに、例えば製材所なら樹皮や塵を販売し、以前は費用を払って処分していた廃棄物で、今は小金を稼いでいる。森林で木を伐採する際には、木の枝や先端部分を収集して木片にし、発電所に販売する。食品産業では、残飯からつくったバイオガスを自動車用燃料として販売することも多い。

実際に、木を伐採して材木・パルプ・紙を製造する際に、最終製品になるのは、その生物資源の半分程度である。残りの半分は、森林内、または林業の諸工程で必要なエネルギーとして利用できる。最終製品でさえ、使い古されてゴミになった後は、燃やされて熱や電気を生むことがある。

このようなシステムは、食品産業や林業の経済競争力を高め、多くのエネルギーを生み、しかも新たな土地を必要としない。

風力発電の場合、発電効率をあげるためには、風車の間隔を数百メートルあけなくてはならない。だから、何機もの風車が間隔をあけて立っている土地全体を「必要面積」と考えて、1平方キロメートルあたりの発電量を計算するなら、風力発電には膨大な土地が必要だと思うかもしれない。

しかし、現実の世界では、経済効率の高い風力発電プロジェクトは、風力発電で土地の価値が失われるような方法はとっていない。例えば、高速道路沿いの農地で、何十機もの風力発電機を建てているケースがあるが、農作物の生産も、風車の周囲で続けることができている。すでに高速道路の騒音がある土地では、風力発電機の騒音に影響されたりはしない。



農家は、追加収入を得て農地の収益性を高めている。つまり、風力発電所は農家や農業を支えるのであり、競合する訳ではない。

「自然エネルギーによる発電所の設置には、広大な土地が必要で、経済効率も低くならざるを得ない」という論理で、自然エネルギー反対論を唱える人がいるとすれば、それは知識不足にすぎない。収益性もあり、土地をそれほど占拠しない形で自然エネルギー普及を進める方法を知っている人は、世界中にたくさんいる。


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