連載コラム 自然エネルギー・アップデート

エネルギー資源いかし、日本は飛躍せよ 英語オリジナル

2014年1月24日 エイモリー・B・ロビンス ロッキー・マウンテン研究所 共同創設者、主任研究員
自然エネルギー財団 理事

日本は化石燃料の資源が乏しい国だが、自然エネルギーの資源は工業国のなかでも豊富だ。面積あたりでドイツの9倍にもなる。しかし、自然エネルギーによる電力の導入量はドイツの9分の1だ。電力会社による寡占的体制が、競争を阻んできたからだ。

東京電力福島第一原発事故の後すぐに、ドイツ政府は、原発の発電容量の41%にあたる原発を停止した。しかし、その多くは著しく伸びる自然エネルギーでその年のうちに補われた。もう3、4年すれば、すべての原発の発電容量を置き換えることができるだろう。

一方で、日本も事故後に原発が止まったが、高くつく化石燃料の輸入に頼り、一時的に電力不足にも悩まされることになった。ドイツは電力輸出国の立場を保ち、原子力が発電の多くを占めるフランスにも輸出を続けている。経済でも日本は低迷し、ドイツは活気づいて、自然エネルギーによる雇用も生み出した。日本では、電気料金が高くなり温室効果ガスの排出量も増えたが、ドイツでは卸電力価格は6割下がり、温室効果ガスが増えるのも抑制できている。

日本はドイツと比べて国土も広く、人口も多い。GDPも高い。太陽光発電に必要な日照の条件も良い。そんな日本の太陽光発電の導入量がドイツの4分の1にとどまり、風力発電に至ってはほとんど増やせていない。

2012年にドイツは電力の23%を自然エネルギーでまかない、デンマークでは41%。スペインは13年前半で48%、ポルトガルは05年比で17%増の70%という数字が出ている。独占市場を保護してきた日本では12年でも、たったの3%以下にとどまる(昔ながらの水力発電を除く)。

日本はエネルギーの効率化の点でも、あまり進んでいない。11の主要な工業国のうち、産業用コージェネレーション(熱電併給)の導入や商業ビルのエネルギーの効率化では10位、トラック輸送分野は8位、自動車では最後から2番目だ。

08年以降、世界の新規発電容量の半分を自然エネルギーが占めている。昨年でみると、米国で49%、欧州で69%。中国も原発より水力以外の自然エネルギーの発電が多くなっている。日本は逆の方向へ進んでいるのだ。

日本の政治経済の復興には、自然エネルギー導入とエネルギー効率化へ新たな飛躍が必要だ。古い体制を保護するかわりに、新しいエネルギー経済が生み出されるだろう。松尾芭蕉が詠んだ俳句に「古池やかわず飛び込む水の音」があるが、いまだ水の音は聞こえてこない。

朝日新聞 2014年1月18日付「私の視点」掲載記事

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