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駐車場500台分の上部空間にメガソーラー
-茨城県・阿見町の商業施設で全量自家消費-

2018年2月23日

シリーズ「自然エネルギー活用レポート」No.11
駐車場500台分の上部空間にメガソーラー
-茨城県・阿見町の商業施設で全量自家消費-

北風 亮 自然エネルギー財団 上級研究員

 平置き駐車場の上部空間を活用したカーポート型太陽光発電設備(SCP)は、クリーンな電力を作り出すだけでなく、真夏時の遮熱や悪天候時の雨避けにもなり、車やその利用者にとってもメリットがある取り組みだ。全国各地にSCPの設置事例はあるが、その規模は数台から数十台の規模であった。2016年2月、茨城県阿見町に国内最大規模のSCPが稼働を開始した。

小さな基礎で地上設置型よりも強固な構造に

 阿見町にある観光型商業施設「あみプレミアム・アウトレット」は、約3200台を収容する平置き駐車場を併設している。その広大な駐車場スペースの一角に大規模なSCPが設置されている。乗用車500台分の駐車スペースの上部には、約4000枚の太陽光パネルが並び、出力は1000キロワットに達する(写真1)。駐車場を利用したメガソーラーとして初めての事例である。

写真1 「あみプレミアム・アウトレット」のカーポート型太陽光発電設備

 SCPは一般的な地上設置型のメガソーラーと構造が大きく異なることがひと目でわかる。最大の特徴は架台部分とそれを支える基礎部分だ(写真2)。架台にはブレスと呼ぶ筋交いが入っており、小さな基礎で屋根全体を支えている。加えて外見ではわからないが、高さ60センチのコンクリート基礎の下には4メートルの杭を2本打ち込んであり、一般的なメガソーラーと比べても強固な構造となっている。

写真2 カーポート型太陽光発電設備を支える架台と基礎の部分

 なぜこのような構造を採用したのか。屋根の部分を構成する太陽光パネルの下を駐車スペースとして利用するため、屋根を支える架台や基礎の数をなるべく小さく、少なく抑える必要がある。さらに設備の真下を車や施設利用者が頻繁に行き来するため、安全性や信頼性には格段の配慮が不可欠だ。あみプレミアム・アウトレットのSCPには、こうした要件を満たすために、架台や基礎に工夫が施されている。

自家消費モデルを選択、直接的なCO2削減を重視

 施設を運営する三菱地所・サイモンは、国内商業施設で最大規模のグリーン電力証書を購入するなど、環境経営を積極的に推進している。あみプレミアム・アウトレットのSCPでは、電力の地産地消を推進するとともに、自社によるCO2削減を推進すべく、全量を自家消費する方法を選択した。

 自家消費ではなく固定価格買取制度を適用すれば収入は増やせるものの、太陽光発電によるCO2削減価値は賦課金を負担する電力消費者に帰属する。全量を自家消費とすることで、発電量に応じて自社によるCO2削減分としてカウントできる。SCPによる環境への貢献を施設利用者にアピールすることが可能だ。

 2016年度の発電量は126万キロワット時に達した。設備利用率に換算すると14%になる。一般的なメガソーラーと比べても遜色ない数値だ。SCPによって施設共用部の電力の85%を賄った。蓄電池を併設していないため、夜間など太陽光が発電しない時間帯は外部から電力を購入しているが、それでも購入する電力量を大幅に削減できた効果は大きい。

 架台や基礎を強固な構造にしたことで一般のメガソーラーに比べてコストが2割程度高くなっている。しかしながら、総工費の一部を国の補助金(平成26年度独立型再生可能エネルギー発電システム等対策費補助金)で賄い、外部からの電力購入を大幅に削減することで、事業採算性を確保することは十分に可能だ。

 自然エネルギー財団の試算では、自家消費モデルであっても、固定価格買取制度を活用した場合とさほど変わらない投資回収年数を実現できると考えられる。しかも投資回収後はSCPが稼働する限り、クリーンで安価な電力を供給し続ける。

 駐車スペースの上部にSCPを導入したことで遮熱や雨避けなどの効果もあり、利用者の満足度を向上させる効果も大きい。自家消費モデルを採用することでCO2削減を推進し、電力購入コストを削減することで自社の経営にもプラスとなる。あみプレミアム・アウトレットのSCPは、自然エネルギーによる一石三鳥の効果をもたらしている。

 国内でも過去に例がなかった大規模SCPの導入に至った経緯や事業化の過程、発電設備の詳細、今後の事業計画などを含めて、現地の状況をレポートにまとめた。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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