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連載コラム 自然エネルギー・アップデート

2017年12月19日

連載コラム 自然エネルギー・アップデート

「日本でクラブシェーナウ、つくりませんか」
シェーナウ電力が創立20年

田口理穂 在独ジャーナリスト

チェルノブイリ原発事故をきっかけとした市民運動から生まれたシェーナウ電力が今年、創立20年を迎えた。当初から反原発と自然エネルギー推進を強く打ち出し、母体は協同組合(組合員5100人)となっている。現在はドイツ全土18万人の顧客を誇り、電力だけでなくガスも販売している。創設者の中心的人物ウルズラとミヒャエル・スラーデク夫妻と、エネルギー担当のエバ・シュテーゲン博士に話をきいた。

同社はエコロジカルなエネルギー供給を実施したいと、2回の市民投票を経てシェーナウ市との供給契約にこぎつけた。供給するには市内の送電線を買い取らなければならないため、全国寄付を募って資金を調達し、やっと実現した。そのため同社やスラーデク夫妻は、ドイツで反原発運動のシンボルとなっている。同社には日本からたくさんの視察団が訪れており、同社は福島で自然エネルギーを推進したり、日本人に賞を送ったりと、日本の脱原発と自然エネルギー推進を支援している。

この20年間を振り返り、シュテーゲンさんが「最初から全国に小売りをしていたわけではない。私たちはナイーブだったし、勇気があった。のちのち18万人も顧客がいる会社になるってわかっていたら、始めなかったかも」と話すと、ウルズラさんが「というより、こんなに大変だとわかっていたら始めなかったかもしれない」と笑う。

シェーナウはコジェネレーションや地域暖房を進めているほか、今夏初めて、自前で風車を5基設置するなど多角的に取り組んでいる。第三者機関である「エコテスト」で2017年、「優良」の認定を受けた。電力の質はもちろんコストや企業構造、原発への姿勢などが評価された。各地の自然エネルギー団体の支援もしており、例えばハイデルベルク郊外のシュリースハイムエコ電力ではシェーナウの支援を得て独自ブランドで電力を販売している。

日本からの再生可能エネルギー事業者が「日本ではなかなか原発反対と前面に打ち出しにくい」と話すと、ミヒャエルさんは「反原発を明確にすること自体が、ブランドになる」と力説した。「お客から信頼を得ること。技術やソーラーや風力とか関係ない。ストーリーがあること、これがうちの核となっている。広告を出さなくても、伝染病のように、雪だるま式に増える」という。電力はどこが提供しても実質同じである。だからこそどこから買うのかは、自分の理念を反映したものになる。日本でも既存の大手電力会社が自然エネルギーを扱っているが「自分が支払う電力料金がどこに行くのか考えないといけない。原発を抱えている電力会社にお金が入らないようにすることが重要」と話す。そのためにも自然エネルギーだけを供給する会社から電力を買うのが欠かせない。

シェーナウ電力会社は、最大利益の追求を目指す企業とは一線を画し、長期的にエネルギーについて考え、自分の理念に基づいて活動している。スラーデク夫妻は現在、電力料金において自然エネルギーへの賦課金をやめ、炭素税(CO2税)に一本化することを提言している。褐炭など火力発電から出るCO2にこそ課税すべきという考えで、電力料金の透明化にも寄与するという。

話の最後にスラーデク夫妻より「日本でクラブシェーナウをつくってはどうか」と提案された。「ここに来る日本人は同じ志を持っているだろうから、連帯すれば大きな力になる。ネットワークをつくり、情報交換してはどうか」というものだ。私はシェーナウについて本を書いたこともあり、お世話係をまかされた。興味のあるかた、どうぞご一報ください。シェーナウの活動が日本で大きく広がることを、黒い森で願っている人たちがいる。

スラーデク夫妻とシュテーゲンさん(左から)

外部リンク

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  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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